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「反攻作戦:南東門解放」

勇者アリーチェの支援は戦局を大きく転換させた。

数で壁を作っていた魔王軍の側は、各所で防衛力の穴をあけられて、白虎支隊の勢いを止められなくなっていた。


「そろそろ後詰の部隊を前進させましょう」

白虎支隊の指揮官が勇者ヴィンツに進言する。

ヴィンツは頷いて答える。


白虎支隊は伝令を北東門のほうに走らせる。

陣地占領のために編成された馬車で機動力を備えた部隊の来援を指示する。


白虎支隊はそのままさらに前進を行う。

南東門の指揮官を討伐するためだ。

恐らく魔王軍の南東門側の戦力は、開戦当初の50%ほどに落ち込んでいる筈だった。

敵にはもう陣地全体を守る戦力は無いだろう。

そして司令部を撃破すれば、南東門は解放された事になる。


白虎支隊は再び勇者ヴィンツを先頭に、部隊を前進させる。

今までは厚い敵の層に阻まれてキリのような一点突破もなかなか進まなかったが、今は防衛網がスカスカで、前進を阻むものは無い。


散発的な交戦を排除して、勇者ヴィンツは魔王軍に占領されていた、リシュター側の防衛陣地まで到達する。


しかし、そこはもぬけの殻だった。

勇者ヴィンツの到着前に、司令部部隊は退避してしまったらしい。


「守備する兵は居ますが、抵抗も弱く、時間稼ぎのための守備兵力と思われます」

リシュターの防衛陣地を概ね解放した白虎支隊指揮官は言う。

白虎支隊の各員も、勝利に沸き立つ。

「魔王軍、何するものぞ!」

「勇者ヴィンツ様の前では敵では無いな!」


各員が勝利に安堵する中、ヴィンツは一人警戒を緩めない。


想定外の残存兵力、そして、あっけない解放。

魔王軍の執着の無さに違和感を覚えているのだった。

特に、黒いもやの兵士:魔纏兵と戦った際に、大損害を受けた経験が、有ったからだった。


ふと、ヴィンツが天頂に違和感を感じる。

そこには宙に浮かぶ火種が見える。

「まずい!!」

アイルズ領での惨劇が頭をよぎる。

火炎の地獄、そして、多くの兵を失った戦い。


「どこでも良い!馬で散らばるか、遮蔽物に身を隠せ!!」

「アイルズ領で襲われた火炎の地獄が来るぞ!!」

馬上からヴィンツが剣を掲げて叫ぶ。


その言葉に付き従って来ていた騎士や兵士たちが慌てだす。

あの地獄の生き残りは身に染みている恐怖だった。

恐ろしい高温の火炎が周囲を飛び交い、鉄の防具でも焼き尽くす姿が再現されようとしていた。


宙の火種が地上に落下する。


炎が広がる!とう思った瞬間。

炎は10mほど上空で小さな炎となって分散して飛び散った。

傘に降り注ぐ雨水が、周囲に落ちるように。


そして、火種は破滅的な炎を発現させることなく、消えて行った。


勇者アリーチェの防御魔法:プロテクションだった。


アリーチェは魔法力を振り絞り、敵の魔法強度を上回る力で、敵の魔法発動を阻止した。


「また、助けられたな」

勇者ヴィンツは呟いた。


想定外の攻撃もあったが、無事切り抜け、南東門側の敵は一掃する事が出来た。


今度は返す刀で、東門の敵に向かう。

南東門の司令部や、強戦力が東門の敵に合流している状況では有ったが、ここで止まる事など出来なかった。

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