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「冒険者ギルド」

迅代のスカウト部隊は訓練を開始してから3日間が過ぎた。

二人ともクロスボウの操作にも慣れて来たようだ。

今日は午後からは訓練を休止し、迅代は城下町の冒険者ギルドへの訪問と、試作クロスボウの確認に行くことになっていた。


午後の早いうちに、セレーニアが馬車で迎えに来た。

御者が馬車から降りて、扉を開ける。

「ジンダイ様、こちらへ」

馬車からセレーニアが降りてきて手を差し出して、馬車に乗る事を勧める。

「ありがとうございます」

迅代は少し面映ゆい感覚を感じながら馬車の奥に乗り込む

続けてセレーニアが再び乗り込み、対面に座る。

実は迅代は町に出るのが今日が初めてだった。

なんでも、迅代のような黒髪で黒目はあまり居ないらしく、好奇の目で見られるだろうとの事で控えていたのだった。

そこでセレーニアに深めのフードを用意してもらっていた。


馬車が城門を出て、町の中に進む。

町はそこそこ人の往来が多く、ぽつぽつと荷馬車も行き来していた。

「それなりに賑やかですね」

迅代はセレーニアに問いかける。

「ええ、2年ほど前は飢饉で危うい時期も有りましたが、今は豊作続きで活気も取り戻しています」

「しかし・・・魔王軍の出現で、また、不況になると国民が不安がっています」

そういえばあまり魔王軍の動向を聞かないが、と思い立ち、迅代は尋ねた。

「魔王軍の実害は今まで出ているのでしょうか?」

セレーニアは答える。

「以前にお話ししましたが、ズベーレン領からの連絡は途絶えたままです」

「隣接領に皇国軍の守備大隊を一個づつ配置し、斥候を送っているらしいのですが、領主の城や城下町に到達した隊は無く、状況は未だ不明ですね」

「ただ、斥候隊の多くは魔物の類に阻まれており、やはり奥地は魔王軍が支配しているものと思います」

「逆にそれ以外の魔王軍の兆候は掴めていないというのが実情ですね」

セレーニアの言葉を聞いて考え込む。

『魔王軍も人間と同じような組織で同じような戦術を取ってくるのだろうか?』

『補給線や命令系統、名誉や仲間意識なんかも有るんだろうか?』

「ジンダイ様?」

考え込んでいる迅代にセレーニアが声をかける。

「ああ、すみません。魔王軍ってどんな組織なのかと考えてしまって」

セレーニアは迅代の言葉を受けて話す。

「いえ、過去の戦史では、魔獣やアンデットの部隊が大多数ですが、決選用にA級以上の魔獣や、悪魔の精鋭部隊が居たようです」

「悪魔は魔獣やアンデットの上位に位置して指揮を行い、自身も強力で知恵も回るとの事でした」

「皇女殿下に聞いた話ですが、悪魔の小部隊に後方を奇襲され、危うく敗北しかけた事も有るとか」

「それほどには、魔王軍も侮れないものと思います」


『なるほど、それならば今のバラバラな3勇者の隙を突かれる局面も出てくるかもしれない』

『やはり、情報を極力集め、正確な敵の行動を把握しないと危険かもしれない・・・』

迅代が風景を見ながらそんな事を考えていると、セレーニアが声をかけて来た。

「着きました。ここが冒険者ギルドです」


2人は目立たないように裏口からギルドに入り、上階の応接室に通された。

そこにはギルドマスターと事務の女性が2名ほど待っていた。

ギルドマスターはルフトと言い、見た感じは、少し小太りの小金持ちと言った感じだった。

ルフトは迅代の素性や今日来た目的を知っていた。

事前にセレーニアが必要な情報を伝えてくれていたらしい。


ルフトが言う。

「勇者ジンダイ様、我々とて魔王軍を倒すために助力は惜しみません」

「極力の協力はさせていただきますぞ」

迅代はその言葉に希望を持ち、早速、条件などを聞いてみる。

「そうですね、傭兵のような契約ですと、Cランク以上の冒険者で1人1日5000ピネぐらい相場ですね」

ルフトの言い値を聞いて、迅代はセレーニアに小声で聞く。

「これは高いのですか?安いのですか?」

セレーニアも少し困った顔で答える。

「どうでしょうか・・・傭兵の相場はわからないのですが、使用人を雇うとした場合は1日500ピネ出せば高いほうですね」


迅代は考える。

『平時も含めて拘束日数×5000ピネで1人は、さすがに厳しいか』

『これでは無駄も多いし、人数も多く雇えない。おそらく死んでも良いという価格なんだろう』

これは難しいと考えて迅代が提案する。


「こほん、えー」

「例えば一つの任務を1チームでこなしてもらう形だとどうだろう?」

迅代が聞く。

「例えばどのようなものでしょう?具体的でないと判断できないかも知れませんが・・・」

ルフトは値踏みするような目で迅代に聞く。

「そうですね・・・とある森を一定の広さの地域で1週間ほどで調べてもらい、簡単な地図を作ってもらう、という感じの任務だとどうだろう?」

迅代の言葉に疑念の入った声でルフトが質問する。

「え?勇者様は魔王軍と戦うのでは無いのですか?」

その言葉に迅代が応える。

「わたしの部隊はスカウト部隊なので、敵と戦うよりは、偵察や情報収集なんです」

「ですので、戦闘は遭遇戦の可能性は有りますが、攻めたり、守ったり、と言った事はメインではありません」

「だから先に敵軍を見つけたら迂回や撤退して構いません」


迅代の言葉にルフトは少し考え、口を開いた。

「では、スカウトを得意とするパーティーが何組かいます」

「遭遇戦闘を考慮してBランク以上のパーティー限定にしますが、1回の任務は1週間ほどで1万ピネ程からでしたらご案内出来ますかな」

「無論、応募が無ければ、諦めていただくか、金額を上げてもらうか、ですけどね」

ルフトはそう言うと、迅代を上目遣いで見る。

なんと迅代はセレーニアのほうを見ていた。

セレーニアは少し困った顔をしていたが「大丈夫ですよ」と告げた。

「大丈夫だそうです!」

と迅代は勢いよく返事をした。


なんだ?この勇者は?とルフトは思った。

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