「襲撃事件の反省」
黒いヘビの襲撃の騒動がとりあえず落ち着いた段階で、迅代は主要メンバーを集めて、今後の動き方について話をする事にした。
皇国遺跡調査室リシュター分室の室長であるナナギリ、リシュターにおける皇女派の情報組織のパーン。
そして、リォンリーネ、セレーニア、リガルドという面々だった。
迅代は集まった面々を前に、状況を整理する。
「今回、魔物が直接、我々の拠点を襲って来た」
「恐らくはリォンリーネさんを襲った敵と同じ目的、もしかしたら、同じ敵という事だと思う」
迅代は一拍おいてメンバーをぐるっと見回す。
「我々も敵に認知されていないと思い込み、都市内部という事も有って、監視や防御が手薄だった、これは反省点と思う」
「そこで、とりあえずの対策として、転移魔術を妨害する結界の設置」
「それから、定期的なサーチ魔法の実施で、今日明日ぐらいの直近の対策とする」
結界魔法はリォンリーネが設置するため、リォンリーネは頷いて答える。
「定期的なサーチの実施は魔法を使える要因には負担と思うが、奇襲され、犠牲が出るよりは良いと判断する」
「夕食後、就寝前、深夜に2~3回、早朝に1回というぐらいで実施しようと思う」
「何か意見がある者は居るか?」
迅代は一通り語ると、ぐるっとメンバーを見渡す。
リガルドが発言する。
「隊長さんよ、サーチの分担はどうするんだ?」
特に深夜のサーチ実施担当は、翌日の行動に影響が出るかも知れない。
サーチを実施できるのは、一番にイリナ、そして、セレーニア、それからリォンリーネも出来るという。
部下に負担を与える指示だ、ここは、隊長の迅代が決める必要がある。
迅代は話し出す。
「夕食後にセレーニアさん」
「就寝前はイリナ、ここは広範囲にサーチを行ってもらいたい」
「深夜はリォンリーネさんにお願いしたい」
「早朝はまたイリナで実施してもらいたい」
「深夜の担当は翌日に負荷がかかると思うんだが」
「戦闘要員である、イリナやセレーニアさんに担当させる訳にはいかない」
「すみませんが、お願いします」
そういってリォンリーネに頭を下げる迅代に、リォンリーネは答える。
「わかりましたよう」
「皆さん、わたしの危機に全力で探してくれましたよう」
「突然敵に襲撃されないように、しっかり見張りますよう」
その言葉を受けて、迅代が話す。
「すみません、無理を言います」
そして迅代はリガルドのほうを見て言う。
「それと」
迅代の視線が来たことに、リガルドはうん?という感じで迅代の言葉を聞く。
「深夜は俺が、早朝はリガルドが、異常事態に対応する要員として、サポートをしてくれ」
それはそうだった。
サーチで敵を感知しても、そこから戦闘要員を起こしていては後手に回る。
サーチ感応時に調査と討伐を行うために実働する要員が必要だった。
リガルドはやれやれという顔をして言う。
「そりゃそう来るか、仕方ねえな」
リガルドはその任務担当を受け入れる。
そこで迅代はさらに口を開く。
「俺と、リガルドは、睡眠圧縮ポーションを使って睡眠は取る」
「あと、リォンリーネさんも、朝に各員が起床後に睡眠圧縮ポーションで寝てください」
リォンリーネは頷くが、リガルドは変な顔をしていた。
ポーションを飲むことに及び腰のようだ。
「ナナギリさん」
迅代はナナギリに向かう。
「今からで申し訳無いのですが、城に使いを出して、白銀騎士リセルゼさんに睡眠圧縮ポーションを分けてもらえるようお願いしてもらえますか?」
ナナギリは分かった旨、回答する。
「話は以上だが、何かほかに言っておきたい事はあるか?」
迅代が面々を見回す。
するとリォンリーネが発言する。
「では、夜間の番の間に、少しでも弾薬の製造をしておきますかねえ」
「資材も少ないので10発ほどしか作れないかもですが」
その言葉に迅代は喜ぶ。
「それは助かります」
「魔物の襲撃でまた弾薬が減っていたので」
するとパーンが口出しして来る。
「それなら、リセルゼのダンナに使いを出すとき、銀製品も貰って来てもらうのはどうです?」
その言葉にリォンリーネは言う。
「なるほど、銀の弾丸を作って霊体の魔物対策ですか」
パーンはその言葉を受けて言う。
「先日の魔物の攻撃ではアンデット系の魔物リッチが強力な魔法で弩弓の要員を全滅させたらしい」
「アンデット対策は備えておいた方が良いだろう」
迅代はその言葉に賛成する。
「確かに、銀の弾丸が効果的なのなら何発かは持っていたほうが良いな」
こうして、大攻勢作戦の前日の動き方は決まり、各員が、それぞれの役目を果たすべく、動き出した。




