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「リシュターの内通者」

「では、この男は魔物に取り憑かれて、魔物の力で、リォンリーネさんを襲ってさらったと」

連絡を受けて白銀騎士リセルゼは、都市警備の部隊を引き連れて、リォンリーネの監禁場所に駆けつけて来た。

そして現場の検証と、迅代達にも事情聴取が行われていた。


そこで、迅代は、色々な状況証拠から、襲って来た男、マルクについて思う所をリセルゼに話していた。

「あくまで想像の域ですが、リシュター内に魔物の配下の者が潜入しているように思います」

「この取り憑かれていた男、マルクはリォンリーネさんに個人的な恨みは持っていました」

「しかし、だからと言って魔物を自分の身に宿してまで復讐しようとは思わないでしょう」

「マルクは利用されて、勇者ジンダイの関係者を襲わせたと思えてならないのです」


その言葉を聞いてリセルゼも感想を言う。

「このマルクと言う男は、リシュター一の商店、アトラーゼ商会の跡取りだった男か・・・」

そう言って顔を見た時に引っ掛かるものを感じたようだった。

「そう言えば、何度か城内にて見かけた事も有る」

「懇意にしている者が城内に居たのかも知れないな」

「そんな男が跡目争いから脱落したとは言え、己の身を魔物に供出してまで復讐を遂げようと思うには、捨てるものが多すぎる」


その言葉を聞いて迅代は考える。

『城内に懇意にしていた者が居たとすれば、もしや城内の情報が・・・』

そんな思いが強くなってきて迅代は念のため問いかけを行ってみる。

「リセルゼ殿、まさかとは思うのですが、城内の情報が洩れているようなことは無いでしょうか?」


その言葉にリセルゼは考える。

「確かに、このマルクが魔物と通じていたのなら、その懇意にしていた人物から情報を引き出していた可能性も有る・・・」

「まだ、確定では無いが、今、魔物に包囲されている状況だけに、致命的な情報漏洩が起きないとも限らないか・・・」

「分かり申した、では、配下の者に探らせましょう」

そう言いながらも、一拍おいて、一言付け加える。

「しかし、明日の作戦終了後にはなってしまいますが」


リセルゼの言葉に、迅代も頷く。


別の人物に事情を聴かれていたリォンリーネも、話が終ったようだった。


「帰りましょう」

迅代はリセルゼに挨拶をした後、リォンリーネの元に行き、声をかける。

そこに、セレーニアとアレジア、トールズも近づいて来た。

念のためにセレーニア達も現場に駆けつけてきてくれていたのだ。


そして、まだショックが残っているリォンリーネを庇うように、一行は、皇国遺跡調査室分室に戻る事にした。


スラムの一角で起こったこの事件現場を、離れた建物の陰から見つめている者が居た。

紫のローブを被った、女性のような容姿の人物だった。

「役立たずめ」

そう呟くと、一見ヒキカエルのような生物、しかし、良く見るとカエルとは細部が異なる異形の生物を召喚して迅代達の後を付けさせて、自身はスラムの奥のほうに去って行った。


迅代たちは真っ直ぐ戻ろうと、スラムを抜け中央通りの商店が並ぶ通りを歩いて城のほうに向かっている。

その後ろを、商店の影を伝ってカエルのような生物、小型の魔物が後を付ける。


そして一行が皇国遺跡調査室分室の建物に入ると、カエルのような魔物も入る場所が無いか建物の周囲を巡る。

そして、床面に有る通気口のひとつに穴が有るのを見つけ、建物内に侵入する。


カエルのような魔物は、人目を避けながらいろいろな場所を巡る。

この魔物は視覚を紫のローブの人物と共有して、目的の人物を探していたのだった。


そして、見つける。

迅代だった。

迅代が銃の開発室になっている会議室を出て、自分の部屋に戻るところだった。


その後を、カエルのような魔物がぴょこぴょこ跳ねながら付ける。


そして迅代が部屋に入ると、そのカエルのような魔物はしばらく物陰で待機する。

少し経っても迅代は部屋から出てこない状況に、その魔物は体を光らせる。

その魔物が居た位置に、魔法陣が現れ、代わりにカエルのような魔物は消える。


少しして、その魔法陣も消え、黒い丸い円が現れる。

その黒い円は、迅代の部屋のドアの隙間から、すっと部屋に入って行った。

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