「リォンリーネの思い」
小さな魔物を始末した迅代は抱きかかえているリォンリーネに声をかける。
「大丈夫、ですか?」
リォンリーネは体を小刻みに震わせながらまだ怯えて声も出せないようだった。
迅代は、入ってきたドア付近で立っているイリナに声をかける。
「みんなにリォンリーネさんが無事な事を知らせに行ってくれ」
イリナはうんと頷くと、この場を後にした。
迅代はリォンリーネを抱いたまま、倒した男を見る。
『この男は、マルクだよな?』
『では、リォンリーネさんに言い寄っていたことを理由に襲ったのか?』
『しかし、この魔物はなんだ??』
そう思いながら迅代は切って捨てた小さな魔物に目をやる。
『マルクがこの魔物を宿して復讐のために、リォンリーネさんを襲った??』
『いや、普通ではそう考えないように思うが・・・普通じゃない精神状況だったのか??』
『それとも、魔物の先兵がリシュター内に入り込んでいるのか??』
『・・・』
『そう考えたほうがしっくり来る』
そうこう考えているうちに、リォンリーネの震えが止まっていることに気づく。
ふとリォンリーネを見ると、リォンリーネの瞳は迅代の顔を見ていた。
「落ち着きましたか?」
迅代は優しくリォンリーネに語り掛ける。
リォンリーネは少し顔を赤らめて、口を開いた。
「また、助けられて、しまいましたよう」
そういって瞳を潤ませる。
「ほんと、おに、怖かったんですよう」
リォンリーネはそう言うと、迅代の胸にぎゅっと顔をうずめて涙を流す。
まだ怯えている様子のリォンリーネの肩にそっと迅代は手を回す。
「もう、大丈夫です」
「マルクは死にました」
その言葉を聞いて、リォンリーネは迅代の胸でうんうんと頷いて返事をする。
「なぜ、マルクが襲ってきたのか、理由は言っていましたか?」
迅代は状況を確認するために質問する。
リォンリーネは首を振って意思表示をする。
そして話し出す。
「わたしの事は、恨んでいる感じでしたよう・・・」
「でも、どちらかと言うと、狂っていて、その、何かに支配されているみたいでした、よう・・・」
迅代は胸から顔を上げたリォンリーネに、斬って捨てた小さな魔物を指さす。
「アレが右手に取りついていました」
「それで、右半身が異常に強化されていたようでした」
迅代の説明にリォンリーネも話し出す。
「確かに、左手は普通の力でしたねえ」
「あと、右手から、だんだん頭のほう緑色の筋が伸びていて・・・」
「頭を支配しようとしていたみたい、でしたねえ・・・」
リォンリーネはマルクを見ていた思った事を説明する。
「とにかく無事で良かったです」
「でも」
迅代は何かを言いかけて、一旦言葉を区切る。
リォンリーネは少し空いた言葉の続きを待つ。
迅代は意を決したように続ける。
「でも、今回の襲撃は、俺の手助けをしていた、から、かも知れません」
「同じような危険がまた」
迅代の言葉を遮って、リォンリーネが言う。
「大丈夫ですよう」
迅代は言いかけた言葉をのみこんで、リォンリーネを見る。
「もし、わたしが敵に狙われて命を落としても。恨み言は言いませんよう」
「わたしは、ジンダイさんを助けると決めたんです」
「・・・ちょっと」
リォンリーネは言葉の途中で一瞬マルクに襲われていた時の恐怖を思い出す。
「ちょっと・・・勇気が出ないときも有りますけど・・・」
しかし、また、迅代が助けてくれた事に思いを強くする。
「それでも、死んだり、怪我したりしても、恨まないんですよう!」
「そう、決めたんですよう!」
リォンリーネは真剣な表情で迅代に向かって告げた。




