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「リォンリーネ捜索」

「すまない、みすみす嬢ちゃんをさらわれてしまった・・・」

パーンは急いで西門に取って戻り、帰還途中の迅代に事の顛末を伝えて謝る。


『いったい、どういうことだ?リォンリーネさんを狙った行動のように聞こえる』

『しかし、狙われる意味がまだわからない』

パーンはさらったのがマルクである事を知らない。

また、マルクとリォンリーネ、そして、迅代との因縁も知らなかった。


「とにかく、急いで捜索しょう」

迅代はそう言うと、急いで作戦を組み立てる。

今居るメンバーの全員を投入して、リシュターを効率よく捜索するには、そう考えて頭を巡らせる。


「まずは、セレーニアさんは、アレジア、トールズ、そして、パーンと馬車で通りを巡って捜索してほしい」

セレーニアは捜索範囲は狭いが、サーチの魔法が使える。

都市の表面をくまなく捜索してもらい、怪しいときにはサーチで探ってもらう形だ。

セレーニアは頷いて、その言葉に応える。


「リガルドはグリーナとペアで、リシュターの北側の居住区を捜索」

リガルドとグリーナも頷く。


「イリナは俺とリシュターの南側居住区だ」

イリナも頷く。

グリーナとイリナは元々スカウト職であり、イリナは広範囲なサーチ魔法が使える。


「幸か不幸か、現状、各門に兵隊が詰めているため、都市外には出られないだろう」

「だが、相手の目的が、リォンリーネさんを害する事だった場合は非常に危険だ」

「全力で捜索してほしい、頼む」

そういって迅代は頭をさげた。


迅代の指示で、急いで各員はリシュター内でのリォンリーネの捜索を開始した。


リォンリーネの捜索が開始された頃、リシュターのスラム街の一角の空き家に、マルクはリォンリーネを連れ込んでいた。


リシュターは表向き、スラム街など無い事になっているが、裏社会の組織の複数が巣くっている区画がある。

そこでは、隠れてではあるが、非合法な取引や、風俗業のような事が行われていた。


リォンリーネはマルクの腕力を見せつけられて抵抗出来ないで居た。

目を血走らせ、右半身は異様に膨れ上がり、たまに頭を振っている。

恐らく、理性を失えば、手加減なく腕力を振るわれて、ひとたまりも無いだろう。


リォンリーネはマルクを刺激しないように黙っていた。

迅代達が助けに来ることに、一縷の望みを託して。


マルクはかなりの体力を使ったらしく、はあはあ言いながら、追手を気にしつつ、リォンリーネの監視も緩めなかった。

そして息が落ち着いて来たころに、リォンリーネのほうを向いて話しかけて来た。


「り、リォン、久ぶ、ぶり、だねえ」

落ち着いてカッコを付けようするが、上手く体が動かないようだった。

リォンリーネはじっとマルクを見つめる。


「あ、あ、挨拶、してくれても、ぐらい、良いじゃ無いか」

マルクの言葉を無視してただ見つめる。

マルクの口の右端からよだれが流れる。

「ひ、ひ、」

言葉を出そうとすると、右半身が言う事を聞かないようで上手く言葉にならない。

マルクはよだれを右手で拭って言う。

「お、おれは、殺してこいって、るんだ」

「で、で、謝って、おれに成れば、ば、許し、ていいんだ」

「す、好きな、だよ・・・りおん」

マルクは悲しそうな目をしてリォンリーネを見つめながら、不自由な口で言葉を続ける。

そしてマルクはリォンリーネに左手を伸ばしてくる。


リォンリーネは、ぎゅっと目をつぶって怯える。

マルクの左手は優しくリォンリーネの髪を掬う。

「あ、あ・・・りおん・・・こうして触れて、い、いだい・・・」

マルクの瞳は潤んでいた。

しかし、マルクの言葉にリォンリーネはただ怯えるのみだった。


腕力で強制的にさらわれて、閉じ込め、殺すとまで言っている人物に哀れみなど全く感じなかった。

マルクの手が髪から頬に伸びようとした時、リォンリーネは行動を起こした。

ライフル弾用の爆裂の呪符をマルクの左腕に押し付けると同時に魔力を流す。

「ボン!!」

呪符が小爆発を起こし、マルクの左腕の表面の皮膚に大きな穴が開く。

「ギヤアアアアアアアアア!!!!」

マルクは大きな悲鳴を上げて、よろめく。

そして、躊躇なく大きく肥大した右腕をリォンリーネ目がけて振り回した。


しかし、右腕は宙を舞う。


リォンリーネはタイミングを計って隠蔽の魔法で姿を隠したのだ。


「き、ぎ、ぎえだ・・・うぐ・・・」

マルクは周囲を見回すがリォンリーネを見つけられない。

左腕からは血が心臓の鼓動と共に流れ出る。


隠蔽で隠れた状態で、すかさずリォンリーネは催眠の魔法をマルクにかける。


マルクは一瞬ぐらっと体をよろめかせる。

しかし、倒れたりはしなかった。

小さな魔物に支配されつつあるため、魔法耐性が付いているようだった。


「そごが!」

魔力を感じた方向にマルクは右腕を繰り出した。

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