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「感謝」

近衛隊の兵練場では朝、昼、晩の食事が基本無料で出される。

食堂で兵役証を見せれば、メニューは一種類だが食事ができる。

ルーフは無論、ここで食事を摂っていた。


「ようルーフ、朝から緑の勇者様にシゴかれてんなあ」

元同じ部隊の10年下の永年兵に冷やかされる。

「うっせいよ、勇者様は色々と変わった事をお考えなんだ」

「今までとは違うんでい」

一応、反論しておいた。

その言葉に周囲からは失笑が起きた。

あの勇者だからなあ、といった感じだ。


しかし、今までと違う事が多すぎて、ちょっと疲れ気味なのも事実で有った。

『なんだよクロスボウって、俺に戦いをさせる気なのか?』

『今更、命を落としたくねえぞ』

食事を摂りながら考えていると、隣にグリンが座ってきた。

「ルーフ永年兵殿、隣、失礼します!」

「ああ、グリンか、お疲れさん」


ルーフからはそれ以上は話しかけなかった。

だが、グリンは人懐っこく話しかけてくる。

それをルーフは生返事で受け返していた。

ルーフ軍役の中で一定のルールを守ってきた。

長年、近衛隊で兵役を務める上での、防衛機能みたいなものだった。

その一つに「5年兵未満の奴とは仲良くならない」というものが有った。

何故なら、未熟な兵士はいずれ死ぬからだ。

親しい奴が死ぬと傷つく、それは人間当たり前の事だ。


グリンからは休息日に家に招待したいと言われたが、適当な言い訳を付けて断った。

そして昼食が食べ終わると「じゃあな」とだけ告げて去って行った。


午後の訓練もクロスボウの使用方法に終始し、十六刻ぐらいに、訓練は終了とした。

明日以降は朝食後の八刻の集合に変更し、毎日訓練を行うとした。


迅代は部隊の訓練が終わると、次はセレーニアとの魔法練習に時間を当てていた。

迅代はセレーニアの顔を見るなり言った。

「セレーニアさん!乗馬は出来ますか?」

勢いに押されながらセレーニアが答える。

「は、はい、貴族のたしなみですし、仕事上も馬で他国に随行する事も有りますから・・・」

迅代は懇願するように言った。

「お願いです!乗馬も教えてください!」

「そして部隊用に馬を調達したいです!」


迅代の勢いに押されながら答えた。

「は、はい、わかりました」

「部隊用の馬を用意するとなると厩舎を確保しないと・・・」

戸惑っているセレーニアに迅代は済まなそうに言う。

「いつもすみません。思い付きで無理な事を言って・・・」

しかし、セレーニアは笑顔で答える。

「いえ、わたしはジンダイ様の従者。主が望むことを達成するのが仕事です」

「それに、嬉しいんです。ジンダイ様に頼っていただけるほうが」


「ほんと、すみま、いえ・・・」

「ありがとうございます」

一心に自分の言った事を叶えようと努めてくれるセレーニアの事に、迅代は心から感謝の言葉を述べた。

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