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「勇者と呼ばれた兵士」

迅代は少女から視線を外し、ゆっくり周囲をうかがう。

石づくりで天井が高く広い部屋。

赤い絨毯の上、絨毯に描かれた光る魔法陣。

甲冑を着て武装した兵士のような男たち。

高級そうな法衣を着ている教会の神父のような男たち。

そして、偉そうに座る煌びやかな男性と、その横にいる女性。


偉そうな男性が座る椅子は映画のセットのように大きく、その後ろには精巧そうな柄の布が掲げられ、両脇には旗が立てられていた。

おそらく見た通りに偉い王様か何かなのだろう。

その中心にいる全裸の自分・・・これは悪夢なのか?と考えた。


「召喚、という事は、別の世界か何かなのか?」

あきらかに現代日本と異なる風俗を持つ人たち、そして、風景にそう呟いてしまう。

それに日本では魔法なんて無い。

迅代の呟きに少女が応える。

「勇者さまは異世界から召喚されると聞いています。ですので、おっしゃった事は正しいと思います」


「俺は・・・」すこしだけ頭がはっきりしてきた。

「俺は、向こうの世界から移動してきたと言う事なのか?」

迅代の問いに少女が応える。

「「勇者召喚の儀は、異世界で亡くなった勇者にふさわしい者を呼び寄せる」と記録されています。」

「おそらく、勇者さまは元の世界で亡くなられ、召喚の儀に相応しい者として、この世界に召喚されたものと思います」


「俺は、死んだのか・・・」

確かにあの爆発らしき状況で生き残るのは難しかっただろう。


同時に、なぜあんな爆発が起こったのか、疑問が掠める。


しかし、その事を調べることも出来はしない。

今は少女の言葉を信じるなら異世界なのだから。


死んだという言葉に、両親や兄弟、職場の仲間、そして、恋心を抱いていた女性の事が浮かぶ。

「元の世界の俺はどうなったかわかる方法は有るのか?」

そういう迅代に少女は首を振った。

「勇者さまはこの世界に来た時点で、元の世界との関係は途絶しているのです。」

「わたくしの言葉も本当かどうかを知る術は無いでしょう。ですので、信じていただく以外に無いのです。」

「わたくしが知る事は、元の世界で亡くならないと召喚の儀の資格が得られないという言い伝えなのです。」

「言い伝えでしか語ることは出来ませんが、そのような言い伝えであることは神命に賭して誓いましょう」


「・・・」

「わかった」自分が死に、勇者として召喚された。

これが現実なのか、夢なのか、まだ確信は持てない。

しかし、今、自分が居る世界が夢でなく現実であるのなら、召喚されたという事は信ぴょう性が有るのだろう。


「では、結界のほうを解きます。」そういうと、絨毯の上の魔法陣に触れて少女は呟く。

「隔絶の光輪よ、クロスフィニアの名において解呪せよ」その言葉と同時に光の壁が消える。

電気なのか魔法なのかはわからないが、その光が彼女の力で消えたようには見えた。手を伸ばしても壁のようなものはもう無い。

魔法が本当に実在するのか・・・しかし、幻影や電気的な装置では無いという証拠もない。


そこで、ふと疑問が生じる。

「異世界人である俺があなたと話せているのはどうしてなんだ?」

自然に話せていたので何の疑問も生じなかったが、良く考えればおかしい。

少女の見た目は西欧人のようだし、周囲の人間も、とても日本人のようには見えない容姿だ。

「言い伝えでは、召喚者には言葉の魔法がかけられ、大陸共通語を話す能力が与えられるとの事です」

「なんだか都合が良いな」疑い出すと、どんどんと疑心が深まっていく。

しかし、その疑問を解くための答えを得る方法は未だ知らない。今、この少女の言葉を信じ、従うか、否定してここを去るか・・・


少女が奥に座る偉そうな男性のほうを向きうなずく。

偉そうな男性は椅子から立ち上がり、言った。

「召喚されし勇者よ。突然の召喚に大変驚かれたと思う」

「私はブリムブリガ皇国の皇帝、シュバルツ・ブリガルデゼーンである」

話していた少女も控える姿勢を取り、皇帝にあたまをさげる。

「我が国は現在、魔王を名乗る一派から侵攻を受けている」

「そこで勇者殿にお力添えをいただきたく、勝手ながら召喚という方法で呼び出させてもらった

「そうは言いながらも、勇者殿も大変驚かれたであろう」

「まずは召喚の驚きを鎮めていただき、後日の対話と致したいが、いかがかな?」


迅代は今全裸で少し気後れしたが状況が解らない。

とりあえず、皇帝と名乗った男のほうに向かい、跪き、頭を下げて言った。

「私は、ニッポン国、国防軍 第5旅団第27普通科連隊所属 ジンダイ・ショウキ三等陸曹と申します」

「ニッポンと言う国の国軍兵士、と言う意味なのかな?」皇帝が聞く。

「そう理解して頂いて間違いではありません」跪く姿勢のまま迅代が答える。


皇帝が同席しているとなると国家レベルの儀式なのだろう。

即断で協力しないと言えば、危険が有るかも知れないと迅代は考えた。

「召喚された経緯や、この世界の状況など、まだまだ判断できない状況なのですが、皇帝陛下のご提案に小職も同意するものであります」

「皇帝陛下がお立合いいただいている中、恐縮ではあるのですが、少し考える時間を頂ければ幸甚でございます」

丁寧な物言いに皇帝も礼をもって答える。


「うむ、召喚されし勇者は皆、最初は混乱される。命を失う状況から異世界に現れるのだからな」

「そこに控えるは、我が娘、クロスフィニア・ブリガルデーゼンと申す」

皇帝の言葉に頷く先ほど話していた少女。


「クロスフィニアよ、勇者さまがくつろぎ、状況が判断出来るよう、計らうように申しつける」

少女は「かしこまりました、皇帝陛下」と言い、こちらを向いて話しかける。


「勇者ジンダイ様、皇帝陛下の申し出に鑑み、まずはお休みいただけるよう、手配をいたします」

迅代は少女に向かい「ありがとうございます。皇女殿下」

相手は少女だが皇族と知り、丁寧な言葉で応じる。

「では、これにて勇者召喚の儀を終了とする」

皇帝の言葉に、周囲の人々は頭を下げ、承知した旨の姿勢を示した。

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