「チーム編成」
「ひゃくう・・・」
少し休憩を取ったフィルスは、その後、1時間半ほどかけて100個目の呪符を完成させた。
休憩のおかげで、少し元気を取り戻し、なんとか作業を続けることが出来た。
「うむむ、フィルスさんやりますねえ」
「わたしよりずっと早く100個の呪符を完成させてしまいました」
「尊敬します」
リォンリーネは薬莢部の製作を止めて、フィルスを称賛する。
「ははは・・・はい、がんばっちゃいました」
気の抜けた体勢で有ったが、自分のプライドが守れてほっとした感じでフィルスは呟く。
「フィルスさん、本当にありがとうございます」
「これで、我々の戦闘力は復活しました」
迅代も100発分の弾薬が補充されるとあって、喜ぶ。
「そんな、わたし達も勇者ジンダイ様には助けてもらいました」
「それに、これもギルド経由のお仕事なので気にしないで下さい」
フィルスはここに来た時の気品を取り戻し、しとやかに対応する。
そんな会話をしている時、サンパノとセレーニア、アレジア、トールズが部屋に入ってきた。
「フィルスの作業が終わったと聞いたので」
サンパノは迅代に向かって言う。
フィルスの作業を待つ間、セレーニア達は、サンパノに今のリシュターの現状について説明を聞いていた。
Sクラス冒険者としての魔王軍の戦力や動向、そして、リシュター領地軍の評価などを含めて。
「フィルスさんの助力、大変助かりました」
「弾薬の目途が立って、いつでも戦闘に参加できる状態です」
「・・・しかし」
「まあ、公には参加しづらい状況では有りますが、ね・・・」
迅代はそう言って苦笑いする。
それに合わせてサンパノも少し皮肉めいた口調で言う。
「何故、力を合わせて脅威を排除しないんですかね」
「皇族の都合も有るのでしょうが、領民の命より大切という事なんですかねえ」
その言葉に、迅代は同調もせず、微妙な笑顔で返した。
同じ気持ちは持っているが、皇族の批判をクローズな場とは言え、おおぴらに言うのは良くないと判断したためだ。
フィルスとサンパノは少し休憩した後に、帰って行った。
セレーニアと、アレジア、トールズと言う新しい兵力が加わった勇者ジンダイの部隊は明日、簡易生産銃の試験も兼ねて野戦訓練に出る事にした。
簡易生産銃はまだ1丁のみしか完成しておらず、もう1丁は明日には組み立て完了するとの事だった。
そこで、実戦想定の装備で訓練を行う事にした。
簡易生産銃はセレーニアとイリナに持たせる形とし、それを考慮したチーム編成を考える。
第一チームは、セレーニアをライフル手として、アレジアをスポッター兼護衛とする。
スポッターとは観測手で、敵に狙いを付けている最中のライフル手は目標に注力して周囲に気を配れない。
そこをスポッターが周囲の警戒や、敵の動向を把握しライフル手に伝える。
そして、敵が忍び寄って来るような事態には、その相手をする事を想定している。
第二チームは、イリナをライフル手、グリーナをスポッター兼護衛に。
第三チームは、遊撃チームで、リガルド、トールズ、そして迅代として、敵の接近時の対応や、指揮命令を担う。
場合によっては、トールズを第一チーム、リガルドを第二チームに振り分けて戦力を増強する事も考えていた。
このチームを敵情に応じて配置する考えだった。
そして補給・保守担当にリォンリーネとパーンが当たる。
事務関係はリシュターでの戦闘においては分室室長であるナナギリに任せる。
そういう形でチーム分けを行った。
明日は朝から、全チームで集まって、野戦訓練に出るとし、迅代は、各員に準備をするように告げた。




