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「弾薬の生産」

「はあ、はあ、はあ・・・」

フィルスは大量の呪符の作成で疲れ果てていた。


机の上には10枚単位で分けられた羊皮紙を細切りにしたものが有り、その8つ目に手を付けている所だった。


フィルスが呪文を唱え、魔力を注ぐと、手にした羊皮紙はうっすらと刻まれる文字に合わせて緑がかった光りを放つ。

そして、光が収まった羊皮紙には魔法言語の文字が焼き刻まれていた。

「はちじゅう、よん、ばい・・・」

フィルスは言葉を絞り出す。

こうして弾薬用の爆裂呪符を作り続けて、もう5時間ほどが経過した。

昼休みと昼食は取ったが、その後はぶっ続けで呪符作成をしていた。

キレイなお姉さん然として、長い金髪をまとめた髪に、薄い紫色の魔術師ローブを纏い、高貴そうな雰囲気を醸し出していたのだが、それも今は乱れて見る影もなかった。


「あ、あの、少しお休みになってもらっても・・・」

迅代は疲れ果てたフィルスの様子を見て、声をかける。


「い、いえ、もう少し・・・」

フィルスは続けると言うが、既に目は虚ろだった。


このフィルスの異常な頑張りは、リォンリーネのせいで有るようだった。

リォンリーネは、100枚ある呪符を1日ぐらいで出来ると言っていた。

それは経験上でと言う話だった。

しかし、リシュターの都市一番の魔法士を標榜する自分が、100枚に至らずギブアップしたと思われるのに抵抗があった。

それではまるでリォンリーネこそがリシュター一の魔法士ではないか。


迅代は、同じテーブルでちまちまと薬莢に雷管を入れて、呪符と雷管を白金のテープとでつなぐ作業をしているリォンリーネを見る。

リォンリーネは迅代の視線に気づき、きょとんとする。

リォンリーネがうまく取りなせば、フィルスも休憩するだろうと考えて、視線を送ったのだが、イマイチ伝わっていないようだった。


「なんですかねえ?」

視線を送る迅代に、リォンリーネは素直に何か用事か聞く。


「い、いや、その、そう、お茶の時間にしませんか?」

迅代はみんなで休憩すると言う形にしようと思いつく。


「うーん、ようやく薬莢の製作が追い付いて来たところなんですよう」

リォンリーネはまだまだ作業をやる気が満々のようだった。


そこで、迅代は、器具を使って、弾丸をリォンリーネが組み立てた薬莢に押し込んでいるパーンのほうを見る。

パーンも黙々と作業を行っていたが、周囲の雰囲気から迅代の意図するところを感じ取る。

「そうだな、ちょっと疲れたし、お茶にするか」


「お二人で休憩していれば良いですよう」

リォンリーネは空気を読まずに続けて作業をおこないたいようだった。


「フィルスさん、お茶にしましょう」

迅代は再びフィルスに声をかける。

フィルスはちょっと躊躇したが、口を開く。

「え、ええ、でも、あと少し・・・」

結構、フィリスは頑なな性格のようだった。


「従者のセレーニアさんがお土産に持ってきてくれたクッキーが有るんですよ」

「今日はこれでお茶にしましょう」

迅代は秘密兵器のクッキーを投入する決意をする。


「おおお!、クッキーですか!、それはいただきたいですねえ」

作業を続ける気が満々だったリォンリーネが、忘れたかのように、すごい勢いで首を突っ込んで来る。

交通は確保されているとは言え、未だにリシュターでは物資不足の状態で、お菓子などは超貴重品だった。


「フィルスさんも一緒にいただきましょうよう!」

リォンリーネはフィルスを一人、作業をさせる訳にはいかず、誘う。


「リォンリーネさんがそうおっしゃるなら・・・」

ようやくフィルスは手を止めて、休憩に同意する。


なんとか、フィルスを休憩させる事が出来そうだった。


迅代は中間管理職は面倒だな、そう思いながら、お茶の準備を始めた。

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