「セレーニア達の来援」
ウェアウルフを倒したセレーニアは、危機に陥っていた女性兵士を確認する。
やはり見知った兵士であると思い出す。
「あ、あの、セレーニア様ですよね??、勇者ジンダイ様の従者の」
助けられたオーリアは、セレーニアの顔を見て言う。
「そう、ジンダイ様のスカウト部隊に配属されていた、二年兵ですね」
セレーニアは思い出したように告げる。
それに応じてオーリアは言う。
「はい!オーリアって言います、隊長に訓練を受けている時に、何度かお会いしました!」
オーリアは元気よく、セレーニアに告げる。
「それと・・・居た!あそこに居るのはヴォルカ2年兵!一緒に隊長にしごかれていました!」
ヴォルカはウェアウルフが倒されたのを見てこちらに寄って来る。
そこでセレーニアを認め、ちょっともじもじする。
貴族の美しい女性に気後れしているようだった。
セレーニアは、オーリアとヴォルカが持つ迅代が考案し、セレーニアが調達した特殊クロスボウを見て当時の事を思い起こし、すこしこみ上げてくるものを感じる。
「あなたたちが居るという事は、魔王軍討伐部隊がすでに到着しているという事なのですね」
セレーニアの言葉にオーリアは答える。
「はい!後、隊長、勇者ジンダイ様もこの都市に来ています!」
セレーニアは頷いて答える。
「ええ、わたしも少し前にリシュターに来てジンダイ様には会いました」
「でも、こんなに強い魔物の戦士が居るのに、他の勇者様はどうしているのですか?」
オーリアは今の状況を説明する。
「実はリシュターの南東門側で大規模な攻撃が有って、勇者様はそちらに」
「でも、こっちにも突然敵が襲って来て・・・」
そうこう話をしている内に、西門のほうから、アークスと弓兵、そして、白銀騎士リセルゼが駆けつけて来た。
セレーニアとアレジアはアークスを見て身構える。
ボーズギア皇子派の騎士では無いかと。
アーロス領での、迅代が失踪した件の調査時に会って面識はあるのだが、その時にはどういった人物かまでは承知していなかった。
「あ、あの、大丈夫です」
「あのアークスさんは、隊長の味方ですよ」
身構えた二人を察して、ヴォルカが遠慮がちな小さい声で、アークスが「味方」で有る事を告げる。
照れて話すヴォルカを見て、オーリアはニヤリとする。
それを見てヴォルカはフンと赤らんだ顔で横を向いた。
アークスはすでにウェアウルフが討伐され、美しい女性騎士がオーリアたちと話しているのに驚く。
「せ、セレーニア様、ではないですか」
アークスはセレーニアを認めて言う。
「ご無沙汰しています、騎士アークス殿、勇者ジンダイ様の助力の為に参りました」
セレーニアは、アークスの態度を確認する意味でも、迅代のためにここに来たことを告げる。
「そうでありましたか!ジンダイ様も喜ばれる事でしょう!」
アークスの言葉や反応を見て、ボーズギア皇子側の態度は取らないであろう事を、セレーニアは感じることが出来た。
アークスからはオーリアとヴォルカを助けてくれたことを大変感謝された。
貴族であるにも関わらず、平民出の部下を大切にする態度に、セレーニアは好感を持った。
その後、白銀騎士リセルゼと挨拶をする。
そこで、リセルゼからは迅代の活躍について話を聞き、状況も教えてもらった。
「勇者ジンダイ様は、現在、リシュター領内での行動の自由は保障されています」
「我々も勇者ジンダイ様から多大な助力を頂きました故、礼を以て待遇いたしたいのですが・・・」
少しリセルゼが言いよどんで言葉を続ける。
「魔王軍討伐部隊の、その、皇子殿下が個人的に複雑、な、感情をお持ちのようなので・・・、一旦は我々との協力関係は中止とさせていただき」
「公式な作戦行動には参加いただか無い形とさせていただいております」
「我々には魔王軍討伐部隊の力がどうしても必要故・・・」
セレーニアはそれを聞き、複雑な感情を抱く、が、恐らく迅代なら、そんな事をも受け入れるのだろうと考える。
「リセルゼ殿、リシュター領の難しいお立場は理解いたします」
「恐らくジンダイ様もその申し出を受け入れられたのでしょう」
「わたくしはジンダイ様に従うのみ、そんなに申し訳なさそうな態度を取る必要は有りません」
すこし気まずい雰囲気が流れたこの場に、突然声がかけられた。
「おーい、アレジア、戦闘は終わったのかー!」
セレーニアとアレジアが乗ってきた馬と自分の馬の3頭を引き連れて、アレジアの同僚、トールズが追い付いて来たのだった。
 




