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「残った者たち」

西門に対する奇襲攻撃は、白銀騎士リセルゼ達、アークス率いる陽動攻撃部隊、そして、密かに介入を行った勇者ジンダイのおかげでほぼ鎮圧された。

迅代がサーペントを討伐した後、門に残ったマーマンの魔族兵たちは、増援された門の守備隊にすべて討伐された。


迅代は先の兵士から、白銀騎士リセルゼの部隊が襲って来たウェアウルフをすべて討伐したと聞いて安心し、帰路に就いた。

残って戦っている者が居る事を知らずに。


「なんと、ウェアウルフがもう1体残っていると?」

白銀騎士リセルゼは陽動攻撃部隊のアークスから、1体を残したまま増援に駆けつけた事を知る。


「我々は、一部兵士を残してきたので、防衛線に戻ります」

「そこで、お願いなのですが、リセルゼ殿も支援を頂けませんか?」

アークスは残してきたオーリアとヴォルカの救援に向かうため、リセルゼにも助力を頼む。


「無論、助力いたしますぞ!」

「まずは助けていただいたのは我々、ここの守りを空ける訳にはいきませんが、小官一人なら問題無いでしょう」

リセルゼは快諾して、陽動攻撃部隊と共に元居た防衛線陣地に向かう事にした。


しかし、オーリアとヴォルカは、今この時点で既に危機に瀕していた。

直接攻撃役の防衛陣地の兵士は次々と死傷し、戦線を離脱していた。

周囲から兵士は駆けつけるが、次々とやられており、損害が増える一方だった。


オーリアとヴォルカは、クロスボウという武器を生かして、ある程度接近しては矢を放ち、再び離れて矢を装填していた。

クロスボウの鉄矢はウェアウルフに多少なりともダメージを与える武器なのだが、それが仇となり、逆にウェアウルフに重点的に狙われることになった。


「ひえっ!ヤバいんですけど!」

ウェアウルフの追撃を受けて、オーリアは必至で逃げる。

間に割って入ろうと、剣の兵士と槍の兵士が襲うが、軽くいなされて吹き飛ばされる。


敵がオーリアを追っている隙にヴォルカが装填を終え、20mほど先のウェアウルフを狙う。

「ひゅん!」

「ズザッ!」

肩口に鉄矢が命中する、が、ウェアウルフはそれを平気で手で抜き、射ったヴォルカに投げつける。

ウェアウルフのダメージは軽微なようだった。

「わあぁ!」

鉄矢がヴォルカのほうに飛んで来て情けない声を上げて後退する。


今度はオーリアがその場で矢の装填を行う。

これを繰り返して時間を稼いできたのだが、直接攻撃する兵士が減って、ウェアウルフの拘束が十分ではない。

このチャンスに、ウェアウルフは矢の装填まで待ってはくれない。


ウェアウルフの特徴であるスピードを生かしたダッシュでオーリアに襲い掛かる。

「ひぃぃい!!」

「ドサッ」

目の前に迫るウェアウルフに恐れをなし、悲鳴を上げながら尻餅をつく。


そこで、先ほどいなされた剣と槍の兵士が割って入ろうとする。

しかし、ウェアウルフの動きは、兵士たちを凌駕する。


ウェアウルフが持つ片手剣で、まず、剣の兵士を袈裟懸けに斬り付け、行動不能にする。

槍の兵士がその隙に突いて来たが、鋭い見切りで穂先を避け、槍を左腕で跳ね上げ。片手剣で兵士の腕を斬り付ける。

兵士は深手を負い、槍を落として倒れた。


ウェアウルフの速攻にオーリアは何もできずにその光景を見つめていた。

そして眼前に迫るウェアウルフの片手剣がスローモーションのように瞳に映る。


頭から斬り付けられる、と思った瞬間に、ウェアウルフの体に無数の裂傷が起こり、血が飛び散る。

オーリアはウェアウルフの周囲にだけ、鋭い刃物のような風が吹いたのを感じ取った。


風の刃を受けたウェアウルフは振りかざした片手剣ををのままに、のけぞって後退する。

そのウェアウルフに、涼しい瞳の女性騎士らしい人物が細身の長剣を手に襲い掛かる。


女性騎士はちらりとオーリアを見た後、長剣を振るい、ウェアウルフを攻め立てる。

「キン!」「キン!」「ギン!!」

「ズサッ!」

女性騎士のロングソードは一撃、ウェアウルフにダメージを与えるが、一般の兵士たちが斬り付ける傷とは違い、明らかに大ダメージを負わせる。


オーリアはそんな女性騎士の動きに見とれていた。

「ギン!」「ギン!」「ザバッ!!」

「ギン!!ズバッ!!」


そこでオーリアは思い出す。

この美しい瞳は見た事があるような、と。


多数の刀傷を負ったウェアウルフは、剣は構えているがもう防御が隙だらけだった。

女性騎士はすっと剣を引き構えると、トドメとばかりに大きく斬り付けた。

「ザザザッ!!!」

脇腹から、胸にかけて大きく斬られたウェアウルフは絶命した。


寸でのところを助けられた形のオーリアは、女性騎士に礼を言おうとする。

そこに後ろから走って来る足音が聞こえる。


「もー、セレーニア様!護衛も無しに勝手に行かないで下さいよー!」

後ろから来たのは、セレーニアの護衛役である、アレジアだった。

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