「密かな介入」
迅代は西門の付近に到着した。
兵士たちが行きかって、住民らしき人たちが都市の中央に向かって避難していた。
『やはり、西門で何かが起こったのか』
迅代はそう当たりを付けると、西門へ続く道を進んで行った。
西門の前まで来ると、多数の兵士たちが西門で何かと戦っているようだった。
ちらりと見えた感じでは、全身が鱗に覆われた半魚人のような魔物兵が短剣を振るっている。
魔物の図鑑で見たマーマン、半魚人の兵士だった。
『堀から水中を渡って、奇襲されたか』
『しかし、これだけの兵士が居ればマーマンぐらいだと討伐は・・・』
そう思った瞬間に、2~3mの首をもたげる大蛇の頭が見える。
『サーペントか!ノーマルのサーペントでもAクラスの魔獣、一般兵では厳しいと言う訳だな』
門の前後は敵のマーマン兵に占拠されており、10体ほどが居そうだった。
それとサーペントが1体のみが居るだけのようだった。
『西門も無防備と言う訳では無いはず・・・騎士クラスの兵力が居るはずだが・・・やられたのか?』
そんな風に思っていると、兵士の中に見知った者が居た。
即席兵器の対トロール用の矢を訓練した者だった。
迅代は、あまり目立たないように陰から戦闘を見守っていたが、顔見知りの兵士に接触する。
「あ、ジンダ・・・」
兵士が声を上げかけたが、迅代はしっと指を口元に当てるポーズを取る。
兵士は頷いて、迅代に付いて物陰に移動する。
「勇者ジンダイ様、助けてください、魔王軍討伐部隊の援軍も来ず、西門がまずい状況になっているんです」
その兵士から、ウェアウルフの集団がそこまで来ていて、門の魔物達と合流されることを阻止しているとの説明を聞いた。
「なるほど、それで、門を守る騎士兵力が出払っていると言う訳か」
迅代の言葉に、兵士はうんと頷く。
「しかし、俺は今、表立って戦闘に参加しずらい状況なんだ」
「あのサーペントを討伐さえすれば何とかなりそうか?」
迅代は兵士に聞く。
「そうですね、あのサーペントが居るために、普通の弓では攻撃が効かず、一般兵レベルの剣士や槍兵では歯が立たず・・・」
兵士の言葉に迅代は頷いて、言う。
「わかった、では、覆面をして俺が斬り込もう」
「指揮官に話を付けてきてくれ」
迅代はそう言うと兵士を部隊に戻した。
しばらくすると、先ほどの兵士が手で合図をする。
それを見て緑髪は布で隠し、変装に使ったマスクを着けて迅代は動き出した。
迅代の到着に、ざっと周囲の兵士は道を開ける。
迅代はそのまま走って一直線にサーペントに向かう。
今回は銃は使わず、バトルナイフで片付けるつもりだ。
バトルナイフを抜いて構えながら突進する。
それを認めたサーペントは戦闘態勢を取る。
周囲からマーマンの兵士が阻止しようと接近するが、それは、周囲の兵士が割って入り妨害する。
迅代はサーペントの首筋に向かってバトルナイフを振るう。
「ズザッ!」
サーペントは堅い鱗を貫いてダメージを受けて怯む。
一般兵の刀剣とは作りが違う。
迅代のバトルナイフの堅牢さと切れ味は、銃を主兵装にした後も健在だった。
お返しにと、サーペントは尻尾を繰り出し、迅代を薙ぎ払おうとする。
しかし、迅代の反射神経では奇襲でもない限り避けられる。
何度か尻尾が繰り出されるが、迅代は問題無く避ける。
そしてひとしきり尻尾の攻撃が行われた後、少しの隙が生まれた。
そこを迅代は見逃さない。
瞬間ダッシュを使い、サーペント懐に入り込む。
そして、バトルナイフをサーペントの鎌首の下から斬り上げる。
「ズリュゥゥゥ!!!」
大きな傷をつけられたサーペントは苦しそうに後ろにのけ反る。
しかし、その反動で尻尾を繰り出す事を忘れない。
迅代は慌てて尻尾をバトルナイフで受ける。
「ズバッッッ!!」
叩きつけるように襲ってきた尻尾を、バトルナイフで切りつけ、尻尾が跳ね返される。
さすがに迅代も衝撃で後ずさったが、もう尻尾は斬られてぶらぶらしており、打撃を行えなくなった。
体勢を立て直したサーペントが再び頭を迅代のほうに向けるが、数々のダメージを受けて、ふらふらだった。
迅代は、更にバトルナイフを振るい、サーペントを弱らせる。
「ザッザッ!」「ザバッ!ズバッ!」
そしてトドメとばかりに、迅代はジャンプをしてサーペントの頭にバトルナイフを突き立てた。
「ズブリ!」
サーペントは重力に逆らえず、勢いよく倒れて、動かなくなった。




