「救援部隊」
白銀騎士リセルゼが率いる防衛部隊は、西門を狙うウェアウルフ部隊の阻止に必死だった。
西門を占拠している部隊と合流されると厄介だが、自分たちの部隊が殲滅されるのも避けなければならなかった。
この場でウェアウルフの部隊に対抗できるのはリセルゼの部隊だけで有り、無防備になれば門や橋を敵の思うようにされてしまう。
勇者か有力な増援が来るまでは、なんとしても耐えなければならなかった。
西門が占拠された時点で動揺が広がったが、リセルゼが手負いのウェアウルフ1体を倒したことで勢いを取り返した。
そこからは、前衛だったウェアウルフ4体と戦うソルティアゴルドの兵士が、負傷により2名、3名と戦線を離脱している状況だった。
ジリ貧な流れであることは間違いなかった。
もうどこまで持つか、という所だった。
「ガン!ガン!」「ガギン!」
ウェアウルフ4体から繰り出される片手剣での攻撃を、ソルティアゴルドの兵士たちはなんとか受け流す。
3名が脱落したソルティアゴルドの兵士たちは、ウェアウルフの剛腕にかなり押されていた。
ウェアウルフと兵士の攻撃の威力では大きな差が有る。
ソルティアゴルドのメンバーがウェアウルフに傷を与えても、モノともせずに向かってくる。
しかし、その逆に兵士たちは傷を受けると、大きなダメージを受けている。
防御力と攻撃力が共に、ウェアウルフが2枚も3枚も上だった。
チーム戦でなんとか互角を維持しているだけだった。
攻撃力が勝る、白銀騎士リセルゼと、従者の、オーパ、サージョンはそれぞれ個別にウェアウルフと相対しているため、救援も行えない。
だが、不利ながらも、それぞれの献身的粘りにより、状況の悪化を防いでいる。
「ズサッ!」「ぐうっ!!」
「グザッッ!!」「おわっ!!」
続けて2名がウェアウルフの一太刀を食らう。
致命的な傷ではないが、ウェアウルフ相手の戦闘の継続は難しい状況だった。
ソルティアゴルドのチームリーダーが負傷した2名の後退を指示する。
7名にまで減ったソルティアゴルドの兵士たち。
それでも、撤退は出来ない。
この場で負ければ、門の占拠が確実のものとなる。
そして、阻止している4体のウェアウルフが自由になれば、戦っているリセルゼ、オーパ、サージョンに向かい、更に不利な状況に陥る。
「密集隊形!敵の攻撃をできる限り受け流せ!」
ソルティアゴルドのリーダーは各員に集まるように告げる。
敵の攻撃が集中するが、各員が手薄な防御状態で戦っても各個撃破されるものと判断した。
集まった壁の兵士たちに、ウェアウルフも対抗手段に出た。
1体のウェアウルフが離脱し、従者オーパのほうに向かう。
壁を作っている兵士たちが手薄になったため、1体が抜けても大丈夫と判断したのだろう。
「くっ!、すみません!」
ソルティアゴルドのリーダーは、オーパに謝りながらウェアウルフの攻撃を受ける。
彼らには、もう、オーパのほうに向かった1体を追撃できる戦力は無かった。
「ひゅん」「ひゅん」「ひゅん」
突然、多数の矢がオーパのほうに向かうウェアウルフを襲う。
「ザッ!」「ザザッ!」
4本の矢がウェアウルフの背中に刺さる。
攻撃を受けたウェアウルフは膝を付く。
少なからずダメージを受けたようだった。
その瞬間を狙って、また、矢が襲う。
「ひゅん」「ひゅん」「ひゅん」
「ザッ、ザザッ!」
更に4本の矢がウェアウルフに刺さる。
「ドサッ!」
ウェアウルフは倒れて動かなくなった。
ソルティアゴルドのリーダは何事かと、矢の飛んできた方向を見る。
そこには、魔王軍討伐部隊に所属する弓兵が数名と、騎士らしき男が居た。
陽動攻撃部隊の、騎士アークスと、弓兵6名だった。




