「ディオレスパド」
午後にセレーニアが迅代に会いに来た。
注文していたメインの短剣が届いたのだと言う。
「こちらです」
セレーニアが木箱に入った短剣を見せる。
無地の黒皮の鞘に収まった、25cm程ある長めの片刃のナイフ状の剣だった。
材質は皇国一のドワーフの鍛冶屋の秘伝とされている特殊鋼材で作られ、以前模擬戦で使った鉄武装強化の魔法の品よりも上回る強度だと言う。
また、刃厚は最厚部で8mmほど、刃幅も最厚の所で5cmほどあり、もうショートソードに近い物だった。
刀身の色は深いグレーで、刃の部分は白銀に光っていた。
そして刃の根元には「ディオレスパド」と銘が彫ってあった。
「気に入りました。ありがとうございます」
迅代は色々な角度から短剣を見ながら言った。
「お気に召していただいて良かったです!」
セレーニアはぱあっと笑顔になり嬉しそうに言った。
内心、迅代の思いとは別の部隊編成や立場になっていることに、心苦しさを感じていたにだが、せめて武装だけでもと思っていた。
そのため、金に糸目は付けず最高の鍛冶屋に最高の品をと尽力していたのだった。
「あと、クロスボウのほうですが、一応、試作品が3日ほどで上がって来るそうです」
「ホントですか?それは楽しみだ」
迅代のアイデアで、矢を4発装填できるクロスボウを提案し、試作を依頼していた。
銃の発想で、クロスボウ上部に弾倉を設け、4発の金属矢を装填でき、発射後の矢の自動装てんも出来る仕組みだ。
ただ、弓引きは人力だ。そこはどうしようもなかった。
「あと、ご相談なのですが・・・」
迅代が切り出す。
「部隊の人員を何とか増やしたいのですが、何か方法は無いでしょうか?」
セレーニアはやはりと思った。40名の要求に2名の配属は酷すぎると思っていた。
「ジンダイ様、部隊の編成には司令官のボーズギア殿下を無視して行うことは出来ません、申し訳ないのですが・・・」
セレーニアの言葉に諦め感を出して迅代が応える。
「ですよねえ。普通の軍隊ならそうです」
だが、セレーニアは鋭い瞳をして言った。
「しかし、相手が極めて不当な扱いをするなら、そこはある程度抜け道を使う手が有ります」
「とい言いますと?」
「冒険者のパーティーを雇うのです」
セレーニアの言葉に迅代は考える。
『冒険者・・・ゲームとかに出て来る、主人公が成るヤツか・・・』
『確かにゲームとかの冒険者は、魔王を倒したり、戦争したりしていたな・・・』
『言わば傭兵的に使えるという事か』
「冒険者には、どこまで頼むことが出来るんでしょう?」
「死の危険が有る戦争行為にも参加してもらえるんでしょうか?」
この世界の冒険者の事は良く知らないので聞いてみる。
「冒険者ギルドは必ず通さないといけませんが、依頼する内容によってギルドがランクを付け、そのランクの冒険者が仕事を受けるかどうか判断します」
「依頼内容はまちまちですが、ギルドが受け付ける仕事は、受けて貰える仕事と思っていいでしょう」
「冒険者はリスクと金額をはかりにかけて仕事を受けるか判断します」
「今回の場合も、何を頼むかで金額が変わって来るでしょう」
『人員不足は深刻だ。冒険者への依頼は行ってみるか』
セレーニアの言葉を聞き、迅代はそう考えていた。




