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「領地軍部隊の来援」

迅代は、射撃訓練から帰還した後、リィンリーネの様子を見に行くことにした。

同時に、リシュター領地軍から言われた今後の行動方針についても共有が必要と感じたからだ。

遺跡調査室リシュター分室に着くと、リガルド達とは一旦別れ、会議室に顔を出す。


そこには、リォンリーネが会議机に突っ伏して眠っており、周囲には図面と銃のパーツらしきものが散らばっていた。

その部屋には、分室長であるナナギリも、議長席に座りながらもウトウトとしているようだった。


迅代の入室の物音で、ナナギリが目を覚ます。

ガタっと姿勢を正す音がして、ナナギリが取り繕う。

「あ、ジンダイ様」

ナナギリが慌てて何かを言おうとしたが、迅代はしーっというポーズをして遮る。


そして迅代は小声でナナギリに聞く。

「どうですか?何か問題など出てますか?」


迅代のトーンに合わせてナナギリは話す。

「はい、製造パーツの発注分については、運良く、鍛冶屋さんや道具屋さんにお願いが出来ました」

「リォンリーネさんは、銃のアウトラインの図面を起こしておられました」

「ご本人が言うには、内部機構や動きはそのままで、銃身が短くて、銃弾加速装置は簡易型にしたものだそうです」

「今の所問題は無いです」


迅代はその話に、リォンリーネが引いた全体図を覗き込む。

ぱっと見た感じは元の世界で狩猟用に使われる.22LR※の小口径ライフルのような雰囲気を持ったスタイルだった。

※6mmほどの口径の軽威力ライフル弾

『さすがに技術者、性能に応じた良いデザインをする』

そんな事を思いながら、ふとナナギリの事に配慮し忘れていた事に気づく。


「あ、すみません、ナナギリさん、代わりますので、お部屋で休んでください」

迅代は変わらず小声でナナギリに勧める。


「いえ、座ってですが少し眠りましたし、大丈夫です」

ナナギリはそう言ってくれるが、迅代は言う。

「わたしは昨晩しっかり寝させてもらいました」

「責任者が倒れると、これもまた困っちゃいますから、わたしと交代でやりませんか?」


迅代の言葉に少し考えて、ナナギリは答える。

「そうですね、責任者は仕事が円滑に進められるようにして、責任を負った判断をするのが仕事ですものね」

「それが出来るのは、わたしとジンダイ様だけですからね」


その言葉を聞いて、迅代は感心する。

『責任者という仕事を正しく理解しているな』

『俺は、この世界の人たちを、意識せずに見くびっていたのかも知れない』

正直、皇国のしきたりや文明などは中世レベルと見て、遅れた考えがはびこっているものと思っていた。

しかし、現代的なセンスで仕事をして、正く物事を進められる人も居るのだなと。


そして、ナナギリとは引継ぎを行って、自分の部屋に戻ってもらった。

ナナギリの話によれば、パーンはちゃっかり、明け方に自分の店に戻って、昼過ぎにはまた来るとの事だった。


ナナギリを会議室から見送った後、迅代はナナギリが座って居た席に就き仕事を代わりに行う事にした。

そうは言いながらも、すぐに何か作業が有る訳でも無い。

仕方なく、リォンリーネが散らかしている図面や部品を席から眺めていた。


そこで、ふと、リォンリーネの寝顔に目が行く。

図面の上に自分の腕を置いて、そこに顔を乗せてすーすー寝息を立てながら眠っていた。

そんなリォンリーネを見て迅代は彼女について考えが浮かんでくる。

『考えてみれば、かわいい感じだが、とてもバイタリティがある・・・キュート?違うか』

『頼もしい、でも無いか・・・気が合う・・・うーん、違うかな』

『信頼できる魅力的な仲間、そういう感じかな・・・』


「うぃっす!」

突然、会議室のドアをバンと開けて男が入って来る。

リォンリーネの事を思考していた迅代は慌てて取り繕うようにガタガタと座る姿勢を改める。

パーンだった。

「おや、隊長さん来ていたんですか・・・い」

「もしかしてお邪魔しちゃいましたかい?」

入ってきたパーンは、リォンリーネと二人きりだった部屋の雰囲気を勘繰る。


「バカな事を言うな、あと、うるさいぞ、リォンリーネさんが起きる」

迅代は少し赤い顔をしてパーンに注意する。


パーンは迅代の表情を見ながら、へいへい、と言って、持ってきた書類の整理を始めた。


この日の午後遅くになって、リシュター領地軍の増援兵士が、西門に到着した。

2000名の増援と言う触れ込みだったが、到着した兵士は1500名ほどに減っていた。

城塞都市リシュターの危機に対し、無理な強行軍で、兵士の脱落に構わず移動してきた結果だった。

結果的には急ぐより兵員数を減らさないほうが良かったのだが、彼らも出発時点の情報を基に最善を尽くした結果だった。


なんとかこの日は、魔王軍の大きな動きは無かった。

無論、魔王軍が撤退する雰囲気も無い。


再び起こる、嵐の前の静けさだった。

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