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「もう一つの勇者部隊」

迅代はリォンリーネを連れて、リシュター城を取り囲むように造成された役所が集まる区画に来ていた。

「ここか」

迅代は掲げられた案内板を見てつぶやく。

「おお、立派な建物ですよう」

リォンリーネも1件丸ごと新築されたような3階建ての建物を見て驚く。

建物のドアをノックすると、事務員のような男性が現れ、室長のナナギリの所まで案内してくれた、

会議室のような広い部屋に通される。


「ああ、ミ、いえ、勇者ジンダイ様、お待ちしていました」

会議用の広い机の奥に座るナナギリが言った。


『どうやら、正体はばらされているみたいだな』

そう思いながら迅代は、リォンリーネの事も紹介する。


「まあ!、それでは、あの古代勇者武装をほぼ一人で作られたのですか?」

そう言いながら目を丸くしてリォンリーネのほうを見る。

「こだいゆうしゃ・・・何ですか??」

リォンリーネは聞きなれない言葉に戸惑う。

「リォンリーネさん、銃の事ですよ」

迅代は、リォンリーネには銃が遺跡から発掘された技術で作られた古代武装としていることを説明していない事を思い出し、隣から補足する。

「おお、銃の事ですか!それはもう苦労したんですよう!」

リォンリーネは銃を作ったことを褒められていると分かり、自慢げな顔になって苦労を解説しだす。

「まずは何と言っても精緻な金属部品を組み合わせられるように作り上げる事がとってもたいへんでしたよう」

「こういう所は魔法技術と金属加工技術に造詣が必要なんですよう」

「こればっかりはそこらの魔法士や道具屋や武器屋には作れない物なんですよう」

「それから何と言っても弾丸に使用した魔法呪符を簡単に設計できる技術力が無いとこれほど大量の弾丸も作れなかったはずなんですね」

「それからそれから弾丸の加速装置と衝撃吸収装置を魔法技術で構築する事もとても大変だったんですよう!」


リォンリーネの解説が延々と続きそうなのを見て、ナナギリは愛想笑いが引きつっていた。

「それから何と言っても銃身が、、、ジンダイさんがぐるぐる銃身を掘れって無茶な事を言うので、3時間も4時間も魔法をかけっぱなしで・・・」

周囲の者も想像できないような話を延々と聞かされて、ハテナがいっぱいの状態になっていた。

そんな状況を察して迅代がリォンリーネの話を遮る。

「リォンリーネさん、その話はまた後で、それより他の方を紹介しますよ」

皆、迅代がリォンリーネの苦労話を遮ってくれて助かったと感じていた。


そして、リォンリーネに初顔合わせのメンバーを紹介して行く。


「まずは、この皇国遺跡調査室リシュター分室の分室長ナナギリさん」

迅代は落ち着いた感じの中年女性を紹介する。

迅代の紹介を受けて、ナナギリは自己紹介をする。

「この分室を預かってるナナギリ・ロールストです」

「平民出身の皇室研究職なので、困ったことが有ったら気楽に話しかけてくださいね」


「これはこれは、どうもどうも」

リォンリーネはぺこりと礼をする。


迅代は今度はリガルド達を紹介しようと思ったが、よくよく考えると、今のリガルドの立場をよく知らなかった。

「そう言えば俺も良く知らないんだが、リガルドさんは、結局今はどういう立場なんだ?」

迅代はリガルドに聞いた。


「あー、そのなんだ、俺もあまり柄じゃあ無いんだが、皇女殿下直属の戦士として、俺と、グリーナとイリナは誓約している」

リガルドは少し照れたような口ぶりで言い、服の胸に着けてあるバッチを見せた。

ユニコーンに剣と盾があしらわれた金属製のバッチで、皇女殿下直属戦士の証なのだと言う。

イリナも自慢げに自分のバッチを迅代に見せていた。

グリーナは迅代のほうを見ているだけだったが。


「そして、俺たちは勇者ジンダイ様に協力し守護をするように言い渡されている」

「魔王軍に対する特殊部隊としてな」

リガルドの言葉に迅代は、セレーニアが言っていた構想が現実のものになった事を知る。

『俺が勇者として、魔王軍を討つ、部隊・・・』

迅代にとっては、召喚されてから、ずっと勇者で有って勇者でない、陰で支える存在として行動してきた。

それが、自分が主力となる部隊が出来たのだ。


「当然、隊長は勇者ジンダイ、あんただな」

「だから、変わらず隊長って呼ばせててもらうぜ」

リガルドの言葉に、グリーナも、イリナも頷く。


そこでパーンが口をはさんでくる。

「セレーニア様からのメッセージなんだが、今の人員に加えて、必要な陣容を考えて知らせてほしいとさ」

「皇女殿下が皇帝陛下に許可をもらったらしい。ちゃんと皇国の予算で正式な組織として編成してくれるとさ」


この状況は、迅代にとっては、正に、自分の能力、技術が生かせるものとなったと言ってよかった。

『真に勇者としての貢献ができる』

そう考え、迅代は心が震える感覚を覚えた。

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