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「戦友たち」

迅代がアリーチェと話をしていても、ボーズギア皇子は構わず勇者ジンダイを貶める言葉を次々と発していた。

もはや誰に聞かせたいのでもなく、自分のプライドを守るための防衛行動だった、

話を聞いていない迅代に向かって次々と怒りを向けていた。


しかし、これに付き合わされている状態の軍師デカルテは辟易していた。

正直な所、なんとかこの我がまま坊主のような皇子を誰かに引き渡して、さっさと睡眠を取りたいと思っていた。

デカルテは昨晩一睡もしていない状況だった。

そのため、いつもは礼を重視し、上位者には敬意を忘れないデカルテであったが、今は少しイラついていた。

「皇子殿下、そのような些細な事は置きまして、早速、我が主、リシュター公にお会いいただきたい!」

少しきつい表現になった言葉だが、ボーズギア皇子は怒りの顔を和らげる。

「おお、そうであった、リシュター公にもこの事を伝えねばならん」

「そして魔王軍など鎧袖一触にて打ち負かし、魔王軍討伐部隊の威光を示そうぞ!」

そう言うと再び迅代のほうを向き、ボーズギア皇子は言った。

「貴様の事はリシュター公にも伝えて、断罪してやるから、そのつもりで居るがいい!」

ボーズギア皇子はリシュター公爵も自分の意見に賛同してくれるものと疑っていないようだった。

一通り気が済んだのか、うっすら笑みを浮かべながら、ボーズギア皇子は司令部馬車に戻る。

ボーズギア皇子の横に付いていた勇者ザーリージャは迅代に鋭い視線を送りながら、馬に乗って護衛の位置に着く。


軍師デカルテは、迅代のほうを見て頷き、司令部馬車に付いて行き、西門のほうへ去って行った。


「ふう・・・どうなるか事かと思った」

迅代は去って行く司令部馬車を目で追いながら呟いた。

「勇者ジンダイ様!」

隊列の後方の馬上から、声をかける者が居た。


輸送伝令部隊の隊長クーリッツだった。

クーリッツには皇子に内密に、色々と助けてもらった事が有った。

「おお、クーリッツ殿、お久しぶりです」

迅代は右手を上げて挨拶をする。

「いやはや、相変わらず司令官閣下からはあらぬ疑いを掛けられているようで、ご苦労様ですな」

クーリッツは軽く表現したが、目は笑っていなかった。

周囲の手前、そう言うしか無かったのだろう。

クーリッツは続ける。

「また、夕食でもご一緒したいですな、色々とお話ししたい事も有りますし」

クーリッツの言葉に、迅代も肯定の意思を示した。


馬上のクーリッツを見送ると、傍らのアリーチェが話しかけて来た。

「あの皇子様、怖がりなんだよね」

「いっつも後ろの方で怒鳴ってばかりなんだよね」

アリーチェが周囲の目を気にせず、ボーズギア皇子に批判めいたことを言う。

「アリーチェ様、そのような事を言っては・・・」

アリーチェのお付きの兵士、ジェーナは周囲を気にしながら嗜める。


「本当の事だからね、最近うるさいことばっかり言うもん」

アリーチェの言葉にジェーナはあわててアリーチェの発言を制止する。


そしてジェーナは迅代に向かって言った。

「勇者ジンダイ様、先般の戦闘ではアリーチェ様とわたしをお助けいただき、ありがとうございました」

「きちんとお礼も出来ていなくて、申し訳ござませんでした」


その言葉に迅代は答える。

「いえ、あの後、わたしは部隊を飛び出してしまいましたからね」

「わたしの行動の結果です、気にしなくて良いですよ」

ジェーナは深く礼をして、アリーチェを連れて魔法支援部隊のほうに戻って行った。


迅代は隊列が続く魔王軍討伐部隊を見ながら思う。

『そう言えば、オーリアとヴォルカはまだ無事にやっているんだろうか・・・』


「えっくしゅん!」「はくしょん!」

魔王軍討伐部隊の隊列の先頭で馬に乗っている、オーリアとヴォルカは二人そろってくしゃみをする。

「ぐしゅん」

オーリアは女性らしからぬ態度で、鼻水をすする。

それを見てヴォルカは嫌な顔をするが、オーリアに悟られないように俯いた。


「なんだ?お前ら、2人そろってくしゃみとは、仲が良いな!」

前で馬に乗っている騎士アークスが声をかけてきた。

ヴォルカは仲良くないし、と思いまた嫌な顔をする。


オーリアは調子のいい感じで返す。

「もちろんですよ。2人セットで同期で同じ部隊で同じく戦って来た仲間っすもんね」

騎士アークスは笑って返す。

「はははっ!そうだな、俺もしっかり2人セットで面倒を見てやっているしな!」


ヴォルカはそんな会話を聞いて、勝手にセットにすんな、と心の中でツッコんでいた。

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