「戦闘状況:再会」
迅代は、ミノタウロスとの銃での交戦経験を踏まえ、弾倉をホローポイント弾のものに変えた。
通常弾では命中した時の衝撃が不足気味で、直ぐに反撃してくる。
ホローポイント弾であれば、撃ち抜く力より、衝撃を与える力が大きい。
迅代は、まずは、イリナとグリーナが相手にしている2体の通常ミノタウロスを狙う事にする。
イリナとグリーナは見事な連携で、2体ものミノタウロスを翻弄している。
しかし、討ち取れるほどの力も持っていなかった。
そこを銃撃で介入しようと言う訳だ。
20mほどしか離れていないのでかえってスコープ照準がやりにくい。
スコープは見ずに、大体の感覚でミノタウロスの胴体部を狙う。
攻撃の合間に、イリナとグリーナが離れた瞬間、射撃を行う。
「ボン!キュィィィ!」
至近だと、威力の関係で、弾丸が貫通して抜けてしまう危険性がある。
ホローポイント弾なら着弾と同時に弾丸が潰れてマッシュルームの傘状に変形し、相手の体組織に大きなダメージを残す。
しかも、運動エネルギーはその場で消費され、相手に大きな衝撃波として吸収される。
「バシュ!!」
背中から迅代の射撃を受けたミノタウロスは、右肩甲骨の下あたりで小爆発が起きたように着弾する。
背中を力強く押されたように、前につんのめるミノタウロス。
その隙を逃さず、グリーナがショートソードをミノタウロスの胃の辺りめがけて突き刺す。
「グウェェエエエエ!」
目標となったミノタウロスはもう戦闘が出来る状態ではなく、その場で崩れ去った。
もう1体のミノタウロスが、仲間のミノタウロスにトドメを刺したグリーナに襲い掛かる。
しかし、そこはイリナが割って入り、ミノタウロスの動きを妨害する。
そして、グリーナも戦闘に加わる。
残るミノタウロスは、2人が入れ替わりながら攻撃を加えているので銃では狙いにくい。
迅代は、バトルナイフを抜いてミノタウロスに近付く。
ミノタウロスは迅代の動きに気づいているらしく、不意に牽制の斬り込みを仕掛けて来た。
「ギン!!」
迅代は反射的にミノタウロスの剣による攻撃をバトルナイフで受け流す。
その返す刀で今度は迅代がミノタウロスに斬り込みを仕掛ける。
「ギン!!」
ミノタウロスも受け流してくる。
「キン!」「キン!」「ギンッ!!」
お互い何手か斬り合いをしたのち、迅代が動く。
「ファイヤーボール!」
迅代はミノタウロスの正面からファイヤーボールを浴びせる。
しかし、迅代の魔法力ではミノタウロスを焼き尽くすほどの強力なものは出せない。
ミノタウロスも直撃は受けたが、威力的に耐えられると見て、襲い掛かって来る迅代を逆襲しようと剣を大きく振りかぶって仕掛けて来る。
しかし、迅代は想定外に、接近して来なかった。
「ズブ!!」「ズブリ!!」
ミノタウロスは背中に衝撃を感じる。それも2つ。
2人の奇襲にミノタウロスはとっさに数歩前へ移動する。
グリーナとイリナがミノタウロスを背中からショートソードで刺したのだ。
そして、ここで迅代が瞬間ダッシュでミノタウロスに迫る。
背中のダメージと混乱から反撃する余地もなく、迅代に懐に入り込まれる。
そうして、迅代は驚いた顔のミノタウロスを見つつ、首筋にバトルナイフを滑らせ、斬る。
「ガシュー!」
驚いた顔のままのけ反るような態勢でミノタウロスは首から血を噴き出す。
「ギュェェ・・・エェェ」
ゆっくりと炎が消えるようにミノタウロスは力を失って、そのまま後ろに倒れて行った。
リガルドは未だ戦っているようだが、イリナとグリーナは一息ついた。
迅代はイリナとグリーナのほうを見る。
イリナもグリーナも迅代のほうを見ていた。
『まだ正体は明かせない、とりあえずは知らないフリをしておくか』
迅代はそう考えて、礼のみ言ってこの場を去る事を決める。
「ありがとう、助かった」
迅代はそう言って、リガルドのほうに向かおうとするが、突然、イリナが言った。
「変な格好してどうしたのさ、隊長さん」
グリーナも特に驚いている風では無いので、気づいているのだろう。
「バレていたか」
迅代は苦笑しながら言った。




