「戦闘状況:ラックランの死闘」
ラックランとオーガの戦いの場に姿を現したミノタウロスは青い肌、そして黄色く光る瞳を持っていた。
装備も小さめの腕に装着する盾とミドルソードを持っていて、機動力と攻撃力を兼ね備えていそうだった。
先ほどオーガを討ち果たした、サンパノとキュロイのチームの側に進んでくる。
青いミノタウロスの威圧感は物凄く、普段物怖じしないキュロイでも筋肉が強張り、視線をミノタウロスから外せないでいた。
サンパノは敵のほうが実力が上と見てフィルスのほうを見る。
支援が頼めるか確認するためだ。
しかし、度重なる魔法攻撃で魔力を消耗しているようだ。
同じく魔法士のサントニロの肩を借りて立っている。
サントニロのほうはまだ余力が有りそうだった。
青いミノタウロスはサンパノの前に進み出る。
サンパノは大楯で速攻を警戒しつつ、キュロイを自分の後ろに下がらせる。
盾に隠した左手で、サントニロに支援するようにゼスチャをする。
サントニロが魔法を発動しようとした瞬間、青いミノタウロスはミドルソードを突き出して、サンパノの大楯に突進してくる。
「ガズッ!!」
大楯に大きな衝撃が走る、が、サンパノは受け切る。
「キュロイ!」
サンパノの呼ぶ声に、瞬時で反応して矢を射かける。
「ひゅんひゅんひゅん!」
3連続で矢を射かける。
それを左腕に装備した盾で弾き、右手にはミドルソードを大きく振りかぶる。
「ガシン!!」「ガシン!!」「ガシン!!」
息をつく間もない連続打撃でサンパノの隙を伺う。
「サントニロ!」
そうサンパノは叫ぶと、打撃の合間にさっと後退する。
サントニロは詠唱する。
「サンダーボルト!」
電撃が青いミノタウロスを直撃する、かに思えた。
しかし、青いミノタウロスは左手に装備した盾で前方をガードする姿勢を取ると、電撃がミノタウロスを避けて落ちる。
そして電撃を避けた後すぐに、瞬間にダッシュしてサントニロの眼前に現れ剣で斬りかかる。
「ザツッ!!」
「うぉあ!!」
サントニロは左肩から右下にざっくりと斬られる。
すぐ横に居たフィルスが消耗した魔力を振り絞り、詠唱する。
「フラッシュ!!」
まばゆい光がフィルスの前に現れる。
フィルスはこの場の危機を回避するため、少ない魔力量で効果を発揮するフラッシュを発動した。
視界を失った青いミノタウロスは無理をせずにジャンプして後退する。
この予期しない光に、サンパノもキュロイも光を直視し、視界を失ってしまう。
「支援を!」
サンパノは周囲の兵士に叫ぶ。
近くに居た弓兵が青いミノタウロスに矢を射かける。
しかし、左腕の盾でガードして弓は払い落される。
槍の兵士と剣の兵士が青いミノタウロスに斬りかかるが、これも盾で防がれてしまう。
そしてうっすらと視界を回復したミノタウロスは、恐ろしいスピードでミドルソードを振るい、2名の兵士を返り討ちにしてしまった。
この隙にフィルスはサントニロの傷を回復ポーションで癒す。
サンパノとキュロイも視界が戻って来た。
しかし、一歩速く視界が回復した青いミノタウロスはサンパノに襲い掛かる。
まだ完全に見えていない状態でミノタウロスの猛攻を大楯でかわす。
「ガシン!!」「ガシン!!」
そして盾の左腕を前に突き出す。
「ガガガッ!」
盾の裏側から鉄の串が飛び出し、サンパノを襲う。
不意の攻撃に避け切れず、胸部に鉄の串を3本浴びてしまう。
「ぐふっ!!」
サンパノは声を上げたが盾を支え続ける。
キュロイがサンパノ救援のために短剣を抜き、青いミノタウロスに斬りかかる。
それを察知した青いミノタウロスは剣を持つ腕をあらぬ方向に曲げて、サンパノへの攻撃を突如キュロイの攻撃に切り替える。
「ザッ!」
「ぎゃっ!」
ミノタウロスのミドルソードは、キュロイの腹部を掻っ捌く。
「キュロイ!」
サンパノは自分に刺さった鉄串の痛みを抑え、盾を前に押し出す。
ミノタウロスはその盾に邪魔されて、キュロイに2撃目を入れることは出来なかった。
一歩下がった青いミノタウロスに好機と見て、フィルスが叫ぶ。
「ライトニングスピア!!」
ミノタウロスの頭上から光の槍が突き刺さる。
ただし直撃は出来ず、足の甲に突き刺さった。
魔力切れ寸前で放ったフィルスの魔法は、狙いも威力も甘かった。
「ギュウオオオ!!」
ミノタウロスの絶叫を聞きながら魔力切れでフィルスは気を失った。
サンパノは鉄の串のダメージに朦朧としてきた。
「まずい、このままでは・・・ぜんめ・・・」
そこに割って入る影が有る。
ようやくオーガを倒したグスタージだった。
「オイシイとこもらって行くで!」
そう言いながら、ダメージを負った青いミノタウロスにショートソードでの速攻をかける。
「ガン!ガン!ガン!ギンッ!」「ガン!!」「ギンッ!!」
オーガとの戦いで負傷したバンノーは、仲間に回復ポーションを与えて回る。
「おら、おら、おらぁ!」
グスタージは速攻で青いミノタウロスを追い詰める、が、決定打が与えられない。
守りに入っていたミノタウロスが不意に盾でガードしてその下からミドルソードを突き出す。
「おぅわ!」
グスタージは何とか避けて深手は負わなかったが、利き腕にかすり傷を負った。
そしてメイン武器であるショートソードが地面に落ちる。
「やべっ!」
後退するグスタージ。
しかし、青いミノタウロスは容赦なくダッシュで迫る。
「ボン!キュィィィィ!」
「ドシュ!!」
ミノタウロスは脇腹に銃撃を受けて横転する。
すぐそこに、立ち姿勢でライフル銃を構える迅代がいた。
迅代は急いで槓桿を操作し次発を装填する。
が、恐ろしい勢いでダッシュして突進してくるミノタウロスが居た。
『狙っている暇はない』
そう判断すると、ライフル銃を下から上に振り上げ、銃床でミノタウロスの剣を持つ手に打撃を入れる。
ミノタウロスの腕が跳ね上げられる。
そこを逃さず迅代は右手でバトルナイフを引き抜き、青いミノタウロスの胸部に斬り付ける。
腹部を切られ怯むミノタウロスに蹴りを入れて倒し、ライフル銃で相手の体を押さえつけて一瞬動きを抑えて、バトルナイフをミノタウロスの首に突き立てた。
「ガザッ!!」
口を開けて何か言おうとしたミノタウロスの首から大量の血がドクドクと流れ出す。
「カヒューーー」
空気が首の斬り目から漏れる。
目を剥いていた青いミノタウロスはそれっきり動かなくなった。




