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「戦闘状況:南翼防衛線の戦い2」

グリーントータスを倒した迅代は、西門前線指揮所に報告した後、再び持ち場に戻る。

元居た戦闘区画に収まった迅代は、第一梯団を押し返した南翼防衛線の様子を見てほっとする。

『なんとか第一撃目は耐えられたようだな』

『即席兵器のほうも少なからず役には立ってくれたらしい』

望遠鏡をのぞき、戦闘が有った各所の状況を観察する。


所々に火炎瓶を投入したであろう跡が分かる。

使い方も、1個づつ使うような事はせず、何個かを同時に投入して、複数の魔物兵にダメージを与えた形が見える。

動かなくなったトロールが戦場に佇んでいるが、これも、胴体に対トロール矢の攻撃跡が見て取れる。

だが、とどめまでは刺せていないようだった。

討ち取られたトロールには、同時に、弩弓による大型矢や、腕の立つ者に斬られた跡も見える。


だが、第二梯団は無傷の2000体の魔物兵に、第一梯団で無傷で生き残った500体ほどが加わる事になるだろう。

第二梯団にはトロールは見えないが、逆に何か強力な決定打を持っているようにも思える。

第二梯団の軍勢が望遠鏡で観測できる位置にまで来ていた。

「いた!」

迅代はパーンに伝える。

「どうした?」

パーンは迅代が望遠鏡を向けているほうに目をやる。


「ミノタウロス・・・そしてオーガも」

迅代は呟く。

パーンも望遠鏡を向ける。

「3・・・4,5」

「5体は居るな、こいつらがトロール集団の代わりか」

パーンは数を数えながらつぶやく。


そして敗退した第一梯団が第二梯団と合流しようと退却しているのも見える。

丁度開けた平原辺りで合流する事になりそうだった。

「奴らの合流のタイミングで弩弓の爆裂弾頭を使おう」

迅代は状況を観測しながらパーンに告げた。


パーンは背のうから赤い色の狼煙を準備する。

西門の弩弓射撃指揮所に居るリォンリーネへの攻撃合図だった。


少し待って、敵が合流するタイミングを計る。

「やりましょう」

迅代が言うと、パーンは赤い狼煙にオイルマッチで火を付ける。


少しすると同じく赤い狼煙が弩弓の射撃指揮所から上がる。

了解の合図だった。


射撃指揮所で赤い狼煙を見たリォンリーネは射撃指揮官に伝える。

「弩弓の爆裂弾頭の発射準備をしてほしいですよう」

それを聞いた射撃指揮官は発令する。

「爆裂弾頭準備!」

「爆裂弾頭準備!」

門の向こう側の弩弓でも復唱する声が聞こえる。

2基の弩弓の両方で通常の弩弓の矢とは異なる、真ん中が少し膨らんだ矢を弩弓の上に載せる。


その間に、リォンリーネは了解を意味する赤い狼煙を上げる。


「装填確認をお願いしますよう」

リォンリーネの言葉に射撃指揮官が叫ぶ。

「装填確認!」

「装填よし!」

「装填よし!」

弩弓のそばの兵士が確認の声を上げる。

爆裂弾頭は矢の中央部のふくらみがいびつな為、下にする位置が決まっている。

そう言う意味での装填確認だ。


「安全装置、解除してください」

リォンリーネの言葉に射撃指揮官が叫ぶ。

「安全装置解除!確認!」

「解除よし!」

「解除よし!」

弩弓のそばの兵士が爆裂弾頭の先端に刺してある黄色いリボンを引き抜き声を上げる。


「撃ってください」

リォンリーネが言う。

「照準、敵第二梯団の敵兵集団」

射撃指揮官が叫ぶ。


各弩弓の側の兵士が赤い旗を上げる。

照準OKの合図だった。


「てーっ!」

指揮官の言葉に爆裂弾頭が放たれる。

「ガズン!!」

「ガズン!!」


通常の矢よりは重い爆裂弾頭は、十分な見越し角を付けて発射した。


それぞれの矢が敵の集団に近付く。

そして、地面にぶつかる。

「ガッ!!ドーーン!!」

「ドーーン!!」


1本目は敵集団の真ん中とはいかなかった。

しかし、派手な爆発を起こし、近くにいたオーク2体がのけぞって倒れる。

撒き散らされた金属片を食らったようだ。


2本目は、移動するゴブリンの集団の真ん中に落ちて爆発した。

こちらは上手く集団位置に着弾し、5体ほどのゴブリンが吹き上げられているのが見えた。


敵は突然の爆発に慌てているようだった。

ゴブリンやコボルド達は逃げ惑い。

ミノタウロスは鼻息を荒くして周囲を警戒していた。


そして、3本目と4本目の矢が発射される。

1射目から照準を補正し、より集団の真ん中に向かっている。

それを捉えた1体のミノタウロスが、矢を撃ち落とそうとジャンプし戦斧で飛行中の矢を一刀のもとに斬る。

2つに折れた矢は地面に落ち、そこで爆発する。

「ドーーン!!」

先端が押し込まれ、爆裂の呪符が起動すれば爆発するのだ。

これも逃げ惑う魔物兵に数体にダメージを与える。


そして4本目の矢も敵集団に真ん中に落ちで爆発する。

「ドーーン!!」

今度はコボルドやオークたちを10体近くに傷を負わせる。


最後の、5本目と6本目の矢が放たれる。

こういった爆発するものの応急対応は伏せるのが最善策だが、そこまで魔物兵たちも気づけない。

右往左往して無闇に逃げようとして、爆発時の金属片に襲われる。


こうして弩弓の爆裂弾頭によって軽傷も含めれば100体以上の魔物兵が損害を受けた。


しかし、まだまだ敵の兵力は膨大で、ミノタウロスやオーガと言う強敵が迫っていた。

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