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「戦闘状況:南翼防衛線の戦い1」

迅代が北翼のグリーントータスを討伐に向かってしばらくした頃、南翼の敵部隊の先鋒が防衛線に接近しつつあった。


水素ガス地雷の攻撃を受け、敵の第一梯団は大きな損害を受けたが、全戦力からすればごく一部の損害だった。

当初、1200mある防衛線のほぼ中央部分に敵兵が集中して進軍していたが、水素ガス地雷の損害により警戒し、左右に分かれた形で進軍していた。


リシュター側の防衛線はA~Fの6区画に分けられていた。

第一梯団としては1500体ほどに減った兵員だが、B区画とE区画に、トロール集団を先頭に押し立てて防衛線を一気に抜く構えだった。


「来るぞ!!戦闘準備!」

防衛線のB区画で、前に出て戦っていたソルティアゴルドの隊員が、そう叫びながら防衛線の後ろに後退してくる。

200mほど先にトロールの集団が見える。

ゆっくりと5体が並んで進軍してくる。


「対トロール戦用意!」

B区画の指揮官が支援攻撃担当の弓兵に声をかける。

対トロール兵器を装備した弓兵2名が、目標を分担し狙う。

今回侵攻してきているトロールは所々に防御力を強化するために、皮や金属の防具を付けていた。

防具部分を避けて弓兵は狙う。

「ひゅん!」「ひゅん!」

対トロール矢を次々と射る。


「ボン!」

2本の矢のうち1本がうまく命中したようだった。

命中した矢の付近に煙が見え、当たったトロールはぐらりと体制を崩している。

「ひゅん!」「ひゅん!」

「ひゅん!」


「ボン!」

「ボン!」

射かけた矢のうち2~3本に1本は発動しない。

やはり、正面から命中させ、上手く魔道コイルを発動させないといけないが、予期しないずれや衝撃不足で発動しない場合が有るようだった。

それでも、命中すれば、少なからずのダメージを与えているようだったが、やはり、防具の部分に当たっても威力は減少するようだった。


そして、B区画は西門に近いため、弩弓の支援射撃も効果を発揮した。

対トロール矢でダメージを与えて動きを鈍らせて、弩弓でとどめを刺す。

そういう形で次々とトロールを倒す事が出来ていた。


しかし、もう一方のE区画は、2基しかない弩弓の支援の手が回らず、とどめを刺すのは中々難しい状況だった。

こっちは高位魔獣の討伐が完了し、防衛線の内側まで戻ってきたラックランのメンバーに頼る事になりそうだった。


B区画ではおおむねトロール集団の進撃を止める事が出来たが、E区画ではいよいよトロールが防衛線まで達していた。

「うわあああああ!」

「ひぃぃぃ!!」

動員兵たちはトロールの巨体が眼前に迫り、パニック状態で逃げ出す。

「ひゅん!」

「ボン!」

対トロール矢は至近距離だと狙いが付けやすく安定した発動が出来ていた。

しかし、ダメージを与えられても、とどめまでは刺し切れていなかった。


「おらぁ!出番やでぇ!」

ラックランのグスタージが片手剣をふるい防衛線を超えてきたトロールに斬りかかる。

トロールの巨体に片手剣では少し手に余るが、脚部を狙って擱座させる。

そこにバンノーのロングロード、サンパノのランスでとどめを刺す形で連携攻撃を行う。


1つ目のトロールの集団で3体が防衛線を超えてきたが、難無く討伐された。


しかし、すぐ後ろにもう一つのトロール集団が迫ってる。

しかも、今度は、ゴブリン、コボルド、オークの兵士たちも一緒に押し寄せてくる。

兵士が援護しているとトロールの始末がやりにくい。


E区画の指揮官が叫ぶ。

「火炎瓶用意!」

その言葉に2組の火炎瓶兵が着火する。

「てー!」

その言葉を合図に、火炎瓶を投擲する。

「ガシャ!」「ボウッ!」

「ガシャ!」「ボウッ!」

鈍いが炎が上がり、数体の魔物が炎に包まれ、苦しむ。

しかしトロールはものともしない。


更に指揮官が叫ぶ。

「用意!」「てーっ!」

更に火炎瓶が投擲される。

「ガシャ!」「ボウッ!」

「ガシャ!」「ボウッ!」

一帯には炎が広がり、魔物兵士と分断され、トロールだけが前進してくる形となる。


そこをラックランや他の契約兵士たちがトロールを始末する。


そうこうしているうちに、防衛線の全面に渡って魔物兵が到達していた。

動員兵士たちは必死に槍やこん棒、シャベルを使って敵を防衛線の堀に上げないように戦う。

そして隙が出来た敵兵は、正規兵士によって打ち取られる。


もし堀に抑えきれず突破されれば、動員兵士は無理をせずに逃げ、正規兵や契約兵の力で討伐する。

敵が集まってくれば、火炎瓶を投げ込み、集結を阻止する。

これの繰り返しだった。


やがて、トロール集団は4隊とも何らかの損害を受け、魔物兵も800体ほど損害を受けた敵兵は、60%の損耗率となり、いったん防衛線から距離を取るように後退した。

恐らく第二梯団の到着を待つものと思われた。


この戦いにより、なんとか第一梯団を押し返した形だが、リシュター領軍も未だ安心できる状況ではなった。

南翼に1800名ほどいた正規兵と動員兵との混成部隊は、200名ほど損害を受けた。

そして水素ガス地雷ももう無い。


戦いはこれからが本番だった。

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