「戦闘状況:対魔獣討伐戦」
ラックランのメンバーたちは、Sクラス相当と思われる新種アースドラゴンの火炎石を撒き散らす攻撃で危機に陥った。
不意の広範囲攻撃で、オフェンス担当のバンノーとグスタージが焼けた石の直撃を受け、負傷したのだった。
しかし、迅代の介入攻撃で、なんとか、危機を脱した。
バンノーとグスタージの負傷は、ヒールが使えるサントニロによって回復できた。
また、迅代のライフル弾で負傷したアースドラゴンに対し、キュロイが矢で目を潰すという功績も上げた。
防壁の戦闘区画よりラックランのメンバーが全員無事なのを見て、迅代もほっとした。
次の相手はAクラス魔獣として目標を見定める。
迅代達が陣取っている戦闘区画からは、サーペント系の魔獣1体のみが確認できた。
南東門の観測では、6体のAクラス魔獣のうち、1体はサーペント系、5体は恐らくホーンフェンリルという事だった。
ホーンフェンリルは動きが素早く、大きさも小さいため、遮蔽物などに隠れられれば、見つけるのは困難だった。
迅代はライフル銃の弾倉を通常弾に変える。
徹甲弾は貴重なのだ。
「仕方が無い、まずは観測できているサーペントをやります」
迅代はパーンにそう言うと、くねくねと蛇行しながら侵攻するサーペントの頭を狙う。
距離は400mほど、移動速度は時速15kmほどなので、これも当てるのは難しい。
ただ、サーペントの蛇行も、ある程度規則性が有ったため、それを見越して狙う。
「ボン!キュィィィィ!!」
弾がサーペントの鼻先を撃ち抜く。
頭の直撃は出来なかったようだ。
「シィィィィィ!!」
サーペントは苦しみながらグルグルとその場で回る。
迅代は急いで弾を再装填して、射線の関係上、今度は胴体部分を狙う。
「ボン!キュィィィィ!!」
「ドシュ!」
迅代が放った弾丸は、サーペントの胴体3分の1ほどの位置で命中し、胴が大きく膨らむのが見えた。
サーペントは動きが緩慢になり、その場でうずくまる。
迅代は更に弾丸を再装填し、今度こそ、頭を撃ち抜く。
「ボン!キュィィィィ!!」
「ドォッ!!」
頭部を撃ち抜かれたサーペントはそのまま動きを止めた。
完全に息の根を止めたようだった。
残る問題はホーンフェンリルだった。
迅代が居座る場所からは姿が見えない。
そんな時、ラックランのメンバーが南側に移動し出す。
それを見たパーンはラックランのメンバーの方向を指さし言う。
「ラックランの魔法士が探索魔法で、敵を見つけたのかも知れない」
迅代もその言葉に望遠鏡を使って、ラックランのメンバーが向かった方向を観察する。
「いた!」
迅代は、物陰に移動するコメ粒ほどに見える、黒い大きな狼が横切るのを見た。
「動きが早い!しかも、この距離であの速度では命中させるのが難しい」
迅代はそう言って、ラックランのメンバーの動きを見守る。
すると、魔法士フィルスらしい人影が杖をかざしている。
魔法の詠唱のようだった。
その直後、幾筋もの電撃が周囲を包む。
広域での電撃魔法を放ったようだ。
3体の黒い影が、電撃の雨の中、所々に有るブッシュから飛び出す。
さすがにジッとはして居られないようだった。
その黒い影にラックランのメンバーが襲い掛かる。
ショートソードサイズの剣で切り刻む者。
ロングソードで斬りかかる者。
一度に数本の矢で黒い影を射抜く者。
あっという間に3体のホーンフェンリスは討伐された。
その様子を観察していた迅代は、彼らの後ろに回り込む黒い影2つを認める。
「回り込む気か!」
そう言うと、ライフルを黒い影に向けて連射する。
「ボン!キュィィィィ!!」
「ガチャッガチャ」
「ボン!キュィィィィ!!」
「ガチャッガチャ」
5発の弾倉を撃ち尽くし、弾倉を入れ替えて、再び様子を見る。
2発の銃撃は地面に命中し、約800mほど先の地面に土埃が上がる。
しかし、その牽制で、黒い影の動きが一瞬止まる。
その射撃位置に敵がいる事に気づいた大楯の戦士が、2つの影の前に立ちはだかる。
2体同時に大楯の戦士に飛び掛かるが、1体は楯で防ぎ、1体は長槍で腹部を貫き、致命傷を与える。
盾に防がれたホーンフェンリルは地面に転がる。
その間髪を入れずに弓矢を浴びせかけられ、ホーンフェンリルは足を射抜かれる。
そして男の魔法士の詠唱により、光の槍で負傷したホーンフェンリルは息の根を止められた。
これで、観測された高位魔獣の全ては討伐出来たはずだった。




