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「戦闘状況:緒戦」

南翼側の魔王軍の侵攻が開始されて1時間ほどが経過した。


敵の進行状況は、リシュターの堀と防壁を超えようとはせずに、防壁沿いにぐるっと回って、西門に向かう、そういう形だった。

そこで、敵の先頭集団がどの位置に居るのかを防壁の上から観測した結果で、防壁の上に旗を立てて表していた。

赤い旗1本が敵集団2千、青い旗1本がAランク以上の魔獣として、全軍に知らせる仕組みを作っていた。


現在の旗は、行程の三分の一ぐらいに赤い旗1本、青い旗6本が立っていた。

その後方に、赤い旗が1本づつ少し間隔を開けて2本が立っており、総戦力は当初の読み通り6千名の兵員が侵攻してきていた。


敵が動き出した直後、南東門の弩弓を使って、阻止攻撃が行われ、主にトロールを狙って発射した結果、3体を倒し、6体を負傷させた。

弩弓は長射程でそこそこの威力のある大型弓だが、連射速度が遅く、各門に2基しか無いため、大群相手には焼け石に水状態だった。

それでも、討伐出来ないより、少しでも討伐したほうが西門の防衛部隊の負担が下げられる。


阻止攻撃は可能な限り全力で実施した。

何度か、ハーピーとマンティコアの混成部隊が弩弓撃破を目指して襲撃してきたが、ロングボウの統制射撃により、凌いでいた。


そして、現在はもう、南東門の弩弓でも狙えない位置にトロールの集団が移動してしまったため、防衛戦闘に移行していた。


南東門から西門の間の空間では、ロングボウを装備した弓兵の小部隊が防壁の戦闘区画に分散配備されており、長距離で敵の兵員を狙っていた。

5~6名の単位の兵員で防御区画に陣取り、少しづつではあるが、コボルドやオークを狙ってロングボウの矢を射かける。

そして空中を飛ぶ魔物兵が来れば臨機応変で、それに対応していた。


これら兵員は正規軍部隊であるので、ある程度戦果を挙げていたが、いかんせん、数が不足している。

6千の兵員の侵攻に、南側防壁で60名ほどの弓兵しか割り当てられていない状況だった。

自分たちの分担範囲を通過する敵に向かってロングボウを射かけて200体ほどを討伐した。

割り当てられた兵員数で考えれば中々の撃破率だが、全体の数を考えると、ごく一部だった。


無論敵側も、そんな嫌がらせのような攻撃を無視して魔獣を先頭に立てて西門へ一直線で侵攻する。


そんな状況ではあるが、侵攻が始まって、東門、北東門にも敵が活動を開始しているため、持ち場を離れられない状況で、南側に増援する暇な兵が居る訳では無かった。


あえて言うならば、西門の防衛線で敵が現れるのを待っている動員兵との混成部隊が、嵐の前の静けさで暇という状況だった。


そして、リシュターの防壁の、西門南側の戦闘区画の一つに迅代は陣取って居た。

クロスボウの矢を30本ほど用意したパーンと一緒に。


防壁上の戦闘区画から、東側を見ると、土煙が上がっている、敵が進軍してきているのが分かる。

戦闘区画はある程度見晴らしが良いため、戦場を広く見渡せる。

ラックランのメンバーたちが、火炎壁の領域を超えて、迎撃のために移動しているのも見えた。


あともう1時間もすれば、敵の先頭の魔獣が視界に入って来ると考えていた。


「戦闘開始は、八刻※頃になりそうだな」

※午前8時頃

パーンは望遠鏡で敵方向を観察しつつ呟く。

「敵の魔獣の種類は分かるか?」

パーンの言葉に迅代が聞く。

「まだ少しわからんが・・・結構重量級だな先頭の2体は」

どうやらそれがSランクの魔獣のようだった。

事前の情報では大型のアースドラゴンでは無いかとの事だった。


「そう言えば嬢ちゃんはどうしているんだ?戦闘には参加していないのか?」

パーンはリォンリーネがどうしているのか聞く。


「リォンリーネさんには西門の弩弓射撃指揮所に行ってもらってます」

「弩弓の爆裂弾頭の取り扱いの説明のためにね」

「こちらが赤い狼煙を上げたら射撃を開始してくれます」

「ただ、先頭の2千名の次の集団で使おうと思っていますがね」

「水素ガス地雷は先頭集団で使い切るでしょうから」

迅代は敵先頭は遠くても、警戒する目は緩めずに言った。


そうしている内に、いよいよ魔獣の姿がハッキリとわかる距離にまで近づいて来ていた。

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