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「払暁の敵状」

「・・・さん、・・・さん!」

迅代は意識の奥で何か呼ぶ声が響く。

「ミードゥーさん!」

リォンリーネの声であることは認識した。


「う、ううん・・・」

迅代は西門の兵員のための臨時兵舎の相部屋のベットで目を覚ます。

「リォンリーネさん?」

迅代はそう言ってリォンリーネを見るが、顔にマスクをしたリォンリーネがしーっというアクションをして立っていた。

「あ、偽名を使うんだった」

思い出した迅代は口に出して行ってしまった。


あと、自分自身はマスクを外して寝てしまっていた事を思い出す。

臨時宿舎の相部屋には多くの兵士や冒険者たちが居て、何人かには顔を見られてしまった。

とは言え、迅代の顔を知っている者が居る訳でも無く、単に、黒い瞳さえ見咎められなければ、あまり気にしたくて良かった。

慌てて枕元のマスクを装着する。


錬金術師テリオシスの睡眠圧縮ポーションは威力絶大だった。

翌日の事を考えると、色々と気になって眠れないかと思っていたが、飲むとすぐに気を失った、ように眠った。

どうやら3時間ほどは眠れたようで、陽はすでに昇りつつあった。

しかし、睡眠不足のような感覚は無く、いつもより爽快な気分だった。


「起こしてくれたんですね、ありがとうございます、・・・リーネ」

迅代はまだ言い慣れないリォンリーネの偽名を言って礼を言う。

リォンリーネは指揮所横の天幕で、机に突っ伏したまま寝ていたようだった。

一応、迅代は眠る前に、リォンリーネの肩に上着をかけて、軍師デカルテに様子は見てもらうようお願いしていた。


「あの軍師さんに起こされたんですよう、ミードゥーさんも起こしてきてくれって」

リォンリーネの言葉に目が覚めて来た迅代は、ベットから降りる。

「リーネ、後で一緒に朝食に行こう」

「着替えるから兵舎の外で待っていてくれ」

そう言う迅代にリォンリーネはうんと頷いて、兵舎外に出て行った。


着替えた迅代はリォンリーネと共に、軍師デカルテが居る司令部の天幕に顔を出す。

「おはようございます、デカルテ殿」

迅代がデカルテを認め、挨拶をする。


「起きられましたか、ミードゥー殿」

「しっかりと眠れましたかな?」

デカルテの言葉に迅代は頷く。


「リセルゼ殿はどうされたんです?」

迅代は夜も明けようかと言う頃に分かれたリセルゼの様子を聞く。

「リセルゼ殿はご自身の別宅がこの近くにあるとの事で、部下の方と、一緒に向かわれました」

「後、ラックランのパーティーの方々も、睡眠圧縮ポーションでしっかりと睡眠はとられたようです」

「ただ、魔法騎士ジュブラ殿はその様な不気味なものは不要とおっしゃり、自分の住まいに戻られました」


確かに気持ちは分かるが、ポーションは使って良かったと迅代は思っていた。


「で、敵は動きそうですか?」

迅代は魔王軍の侵攻の予兆について尋ねる。


「来ますな」

軍師デカルテはリシュター全域地図の上を指さして言う。

「早朝の連絡では、東南門の魔王軍の兵士が隊列を作りつつあるとの事でした」

「その数、目測で2千名、ただ、兵士が居並ぶ場所の問題で、何次かの侵攻グループを作って攻めて来そうですな」

「その第一弾にはAクラス以上の魔獣が6体、それと、トロールの集団も4個ほど居たようです」


迅代は、思う。

『魔獣とトロールの集団で防衛線を突破して、後ろから、一般兵士の役目の魔物兵が、地域を制圧する形なのだろう』

『魔獣6体は銃で狙うか・・・』


迅代は、ふと北側も気になる。

「北東門の側はどうなんでしょう?」


迅代の言葉にデカルテが答える。

「北東門側は視界が悪く、なかなか全貌は分かり兼ねるのですが、2千ほどの兵士集団と魔獣2体が確認されています」

「やはり南側と同時に侵攻を開始する気配ですな」


迅代たちが当初想定していた、敵の最大戦力のパターンでの範囲内の戦力では有った。

そして、やはり、南側の戦力差がかなり大きなものとなりそうで、これを抑えきれるかが、西門防衛の成否を決しそうだった。

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