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「リーダーサンパノ」

2隊の敵偵察部隊を包囲殲滅した冒険者パーティーのラックランに、白銀騎士リセルゼが合流した。


「どうですかな?」

リセルゼがラックランのメンバーに聞く。

「軽く殲滅してやったで」

ラックランのグスタージが簡単に片づけたとアピールする。

そんな発言をするグスタージを尻拭いをさせられたキュロイが睨みつける。


「後の敵部隊の動向は?」

リセルゼの問いにフィルスが答える。

「この先、西南側300メルト※ほどに3隊が互いを支援しつつ前進中です」

※約180m

「3隊が支援しながらだと、隠密裏に一気に討伐とはいかないようですな」

リセルゼが答え、続ける。

「では、今回は敵は極力殲滅するにしても、押し返す事を主目標にして攻撃しよう」

「要は偵察部隊に知られたくない物が見られなければよい」

「さらに前進しようと言う気持ちを挫けば良い」


リセルゼの言葉に一同が頷く。

敵の総勢は30体、それに対し、こちら側の戦力は9名。

個々人の能力は高いが、やはり数の差は大きい。

1体も逃さず、とはいかないだろうという判断から、せん滅から、撃退に作戦目標の変更を告げた。


「中央からフィルス殿に広域攻撃魔法を食らわせてもらい、足を止めてから、両翼より攻撃、という形でよろしいかな?」

リセルゼがラックランのメンバーに問いかける。


それにリーダーのサンパノが答える。

「承知いたしました、リセルゼ殿」

「では、右翼をリセルゼ殿のグループで、左翼は、グスタージ、バンノー、サントニロ」

「中央は、フィルスを中心に、わたしとキュロイ、という形でよろしいかな?」

サンパノの言葉にリセルゼは頷く。

そしてリセルゼが口を開く。

「本番は明日なので、目的さえ果たせば無理は無用、各々(おのおの)頭の隅に置いて無理せず行動されよ」

グスタージ以外の各メンバーは頷いて応えた。


「では、目標に向かって前進!」

リセルゼの言葉に、各員、動き出す。


各グループは20mほどの間隔を開けて、右翼、中央、左翼のそれぞれのグループで協調して前進する。


そして、100mほど進んだ後、中央のグループが停止する。

ここでフィルスが攻撃魔法を打つタイミングを計るようだった。


左右のグループは間隔を50mほどに広げ、敵の迎撃態勢を取る。

5分ほど経過した後、中央グループからの広域攻撃魔法が放たれる。

「サンダーウェーブ!!」

フィルスの詠唱の後、前方30mほどの領域に、幾筋もの電撃の光が交錯する。

「ガガン!ガガン!ガガン!」

その領域は幅50m、奥行き20mほどにも及んだ。

魔法騎士ジュブラが放つ同じ魔法攻撃は10m四方ほどで有った事を考えると、魔法力の大きさレベルの高さの違いが分かる。

この一撃で、敵の偵察部隊の半数は倒された。


これを合図に、両翼からの攻撃が開始される。

突然の奇襲を食らった敵偵察部隊のゴブリンやコボルドは次々と討伐される。

ただ、オークはそう簡単には倒せなかったが、それでも、どのメンバーもオークに力負けするような実力では無かった。


しかし、フィルスの魔法攻撃を食らった中央付近に居た敵集団の中で、生き残っている者が居た。

戦士級のミノタウロスだった。


電撃攻撃を食らい、大きなダメージを食らったが、戦闘は可能な状態だった。

ミノタウロスはそっと中央グループの3名、サンパノ、フィルス、キュロイの様子をうかがう。


そこで、キュロイが違和感に気づく。

「敵、生き残り!」

キュロイはそう言うと、手持ちのショートボウをミノタウロスが潜む位置に射かける。

しかし、ミノタウロスはキュロイの行動を見ていたため、素早く回避を行い、突進を開始する。


「く!ミノタウロス!!」

サンパノは大楯を構え、前に出て迎撃態勢を取る。

ミノタウロスの突進をモロに大楯に受ける。

「ガズッ!!」

さすがのサンパノも正面からの突進によろけ、後ずさる。


そこにミノタウロスは中型剣を振りかぶってきた。

サンパノも負けじと、ランスを突き立ててミノタウロスの胴を狙う。

ミノタウロスは恐ろしい筋力で体をひねってランスの切っ先を回避する。

「ガン!」「ガン!!」

ミノタウロスはサンパノの大楯に右手で持った剣を叩きつける。

そんな事で壊れる盾では無いが、防戦となり、攻撃の手が出せない。


そんな時、ミノタウロスの左手が動く。

クナイのようなナイフをフィルスに投げつけたのだ。

「ズサッ!!」

「く・・・」

フィルスの右胸付近に深くナイフが突き刺さる。

「フィルス!!」

サンパノとキュロイは叫ぶ。


フィルスはそのまま後ろに倒れ込む。


「くそっ!!」

キュロイはサンパノに当たる危険性を考えて控えていた弓攻撃を開始する。

「ズブ!」「ズブ!」

鋭利の魔法を付与した矢はミノタウロスに深く突き刺さるが、ミノタウロスのサンパノへの攻撃が止まない。


「フィルスにポーションを!それとサントニロを!」

サンパノはキュロイに回復術が使えるサントニロを呼びに行くよう伝える。


その言葉にキュロイはすぐ反応し、フィルスにポーションを与えるため動く。

「お前はわたしが討伐します!」

サンパノはそう言うと、スキル「槍雨やりさめ」を発動する。

サンパノはランスをくるくると回し足を踏ん張ると、目にも止まらない速さでランスの連続攻撃を繰り出す。

「ザッ!」「ザッ!」「ザッ!」」

斬りかかって来ていたミノタウロスに回避の暇を与えないほどの速度でランスが突き刺さる。

「グオオオオオオオ!!!」

ミノタウロスが咆哮し、体の各所に穴を開けられながらも、力を振り絞って襲い掛かる。


そこをサンパノは冷静に見切り、必殺の一撃をミノタウロスの胸に突き刺した。

「ズブ!!!」

ミノタウロスが目を剥いて、サンパノをギンと睨む、が、その力強さは失われ、空虚な眼に代わった。

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