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「北翼側の迎撃」

南翼側の偵察部隊を、白銀騎士リセルゼ、Aクラスパーティー・ラックランが迎撃している頃、北翼側の偵察部隊は魔法戦士ジュブラが単独で迎撃していた。

北翼側は兵力が拮抗する程度の侵攻と思われているため、今回、領地軍側は罠や仕掛けのような事はしていなかった。

逆に言えば、それほど、南翼側の戦力差の大きさが深刻なのであったのだが。


必須で隠すべきものは無かったのだが、一応、北側の堀の築城は秘匿しておきたかったし、南翼だけ迎撃すれば、あからさまに南に秘密が有ると思われる。

そう言った配慮から、魔法騎士ジュブラが単身で、4部隊派遣されたという偵察部隊を迎撃することとなった。


実は後詰めとして、領地軍精鋭部隊「ソルティアゴルド」も、ジュブラの討ち漏らしに備えて堀までの間に分散配置されていた。

ただ、一人で対応可能と豪語したジュブラのプライドを尊重して、後詰とは言わず、翌日の行動のための動員演習と言っていた。

そのことに気づいていたラックランのメンバーはジュブラに対すして「無駄にプライドが高い厄介騎士様」と陰口を言っていた。


魔法騎士ジュブラはゆっくりと暗闇の平原を歩いて、敵偵察部隊を探す。


魔法騎士ジュブラの実力は間違い無いものだった。

単身で魔物の軍勢すら抑える事が出来る、戦技と魔法力を持っていた。

先日、北東門で起きたアースドラゴンとの戦いでも、単身でアースドラゴンを行動不能にまでした腕は、恐らく、白銀騎士リセルゼを超えているとの声もあった。


ただ、彼は基本的に誰とも組まない主義だった。

他の冒険者や騎士・戦士を下に見ている所が有った。

彼は「氷結騎士」という二つ名を持っていたが、それは彼の性格に由来するものだった。

他人とは組まず、組んでも自分だけ法外な報酬を要求し、仲間の危機も、仲間だから助けるではなく、仕事だから敵を倒す、という理屈だった。

何も氷系魔法が得意だからと言う訳では無く冷たい性格という意味だった。


ジュブラは暗闇の平原を進む足を止める。

ジュブラはスキル「殺気」を会得しており、一般的な兵士や冒険者なら20mほど、アサシンやシーフなどの隠密性の優れた者でも10mほどの距離に侵入されると気付く。

その「殺気」にひっかかった者が有ったようだった。

少し前にサーチの魔法をかけて見つけ、接敵しようとしていた部隊のようだった。


「さて、まずは」

ジュブラはそう言いながら魔力を込めるとうっすら青く光るロングソードを抜き構える。

ロングソードを構えた方向の15mほど先には、先鋒のゴブリンが顔を見せる。

ゴブリンは、すぐにジュブラに気づき、後方の仲間に知らせる。

後方からオークが2体、そして、コボルドやゴブリンも現れる。

「うむ、これで、全部だな」

ジュブラはそうつぶやくと、ロングソードを気合を込めて居合い抜きの要領で水平に振りかぶる。

「ふん!!」

振りかぶると同時に、青い閃光が一瞬流れた気がした。

同時に、15m先の魔物たちの胴体が2つに分かれ、ばたばた、と上半身は地面に落ちて行った。

生き残ったものは居なかった。


ジュブラはその様子を認めた後、ロングソードを鞘の納め、サーチ魔法をかけ、再び歩き出した。

次の偵察部隊に向かって。


2つ目の偵察部隊も、先ほどと同じ要領で始末した。

侵入目的が分かっており、サーチの魔法で感知できる相手では、ジュブラにとってはルーチン的な作業でしかなかった。


しかし、3部隊目、4部隊目はどうやら一度に始末するには今までの方法は使えないようだった。

魔物が3~4体に分かれて、幅広く展開し、互いのグループを援護ながら前進しているのがサーチ魔法で確認できた。


ジュブラは、どうする一瞬迷ったが、すぐに魔法を詠唱しだした。

「サンダーウェーブ!」

暗闇で何も見えていない20mほど先の平地に電撃の光が幾筋も走る。

「サンダーウェーブ!」

今度は少しずれた位置に電撃の光が走る。

「サンダーウェーブ!!」

またずれた位置に複数の電撃が走る。

ジュブラは3回同じ魔法を詠唱したのちにサーチ魔法で状況を確認する。


「動くものは無いな」

ジュブラはサーチ魔法の想定位置で魔法を放ち20体居た魔物をすべて打ち倒した。

逃げる魔物を追い回すのが嫌だったジュブラはこんな手荒い手で魔物たちを討伐したのだった。


しかし、それは、ジュブラがそれほど魔法センスが優れている証でもあった。

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