「弩弓を使った兵器」
軍師デカルテが、錬金術師テリオシスに睡眠圧縮ポーションの提供依頼を行っている間、迅代はリォンリーネに声をかける。
「どうですか?対トロール矢の製作のほうは?」
迅代の言葉にリォンリーネはしおしおな顔で言う。
「もう、あのじじいのせいで説明がやりにくいですよう」
「ようやく、なんとか、一通りの作成手順をみんなに教えた所ですよう」
テリオシスはしつこくリォンリーネに纏わり付いて、かなり邪魔をしているようだった。
「なるほど、わかりました。次しつこく来たら言ってください」
迅代もいくら貢献してくれると言っても、リォンリーネが嫌がるなら強く言うつもりだった。
「で、あと、もう一つ、即席兵器の相談がしたいのですが・・・良いですか?」
迅代の言葉にリォンリーネは言う。
「うう、ジ、いやミードゥーさんも人使いが荒いですよう」
「でも、ここに残って一緒に戦うと決めたのです」
「仕方が無いですよう」
そう言いながらも、次はどんな武器を考えるのか、楽しみでもあるようだった。
「弩弓を使った面攻撃兵器を作りたいんです」
迅代の言葉にまたリォンリーネはきょとんとする。
「めんこうげき?とは何でしょうかねえ」
迅代は説明する。
「弩弓は射程距離は長く、矢も太いですが、所詮は一本の矢です」
「狙う目標は1つという兵器です」
リォンリーネは合いの手を入れる。
「確か、その矢も、アースドラゴンや、ワイバーンには役立たずだったみたいですよう」
「矢の重さも速度も中途半端なんですかねえ」
迅代は頷いて、その問いに答える。
「そもそもがSクラスの魔獣をターゲットにしていない武器なので、仕方が無い部分は有ります」
「でも、そんな中途半端さが、今回の戦いでは役立たずという烙印を押される結果になってしまいました」
迅代は考えながら続ける。
「弩弓は貫通力は中途半端ですが、射程距離は2000メルト※ほどと中々良いと思っています」
※約1200m
「そこで、敵の集団に対して、複数にダメージが与えられる武器を考えたいんです」
「例えば、魔物の集団が移動している所に打ち込んで、爆発させ15メルト四方に破片をまき散らし、多数の魔物にダメージを与えるような」
「そんなイメージです」
それを聞いてリォンリーネは答える。
「水素ガス地雷のような仕組みですかねえ」
そこ言葉を迅代は否定する。
「即席兵器で矢に十分な水素ガスを詰め込める方法が難しいですね・・・専用の道具から作らないと」
「ここは、リォ、こほん、リーネさんの呪符頼みかなと」
そう言いながら迅代は上目遣いでリォンリーネを見る。
「ふふん、なるほど、なるほど、大爆発の呪符を作ってほしいと言う事なんですねえ」
リォンリーネの言葉に迅代は頷いて言う。
「水素地雷を検討していた時、爆発を大きくした呪符は10個ぐらいなら作れると言ってましたよね?」
「それを使って、弩弓の矢に仕込んで、敵の集団の中で爆発させる兵器を考えたいんです」
迅代の言葉にリォンリーネが訪ねる。
「イメージみたいなものは何か有るんですかねえ」
そこで迅代がぼんやりと考えている兵器の形を話す。
「まずは弩弓の矢を真ん中あたりで切断するか、削って、爆発部分を作ります」
「爆発には呪符、その周囲には鉄製の棒や板を巻きつけます」
「これらを止めるのは松脂と紐とテーピングでも良いかと」
「そして、先端に魔導コイルを使った撃発機構を設け、爆発の呪符に撃発できる感じで思っています」
「矢が地上に刺さり、呪符が爆発すれば、周囲に巻かれた棒や板が爆発で周囲に飛び散り、敵複数にダメージを与える感じですね」
「この矢を撃つときは、直線で狙うより、山なりの弾道で狙うほうが良いのですが、そこは少し課題ですね」
矢の爆発は斜めに刺さるより、山なりに飛び、垂直に刺さるほうが、破片を巻き散らす上で良いのだが、ここは曲射弾道の照準を今から習得するのは難しいとは感じていた。
リォンリーネはそれを聞いて考える。
「なるほど、仕組み的には既知の技術で出来そうですねえ」
他のメンバーが対トロール用の矢を製作している横で、リォンリーネは概念図を描き出す。
弩弓の矢の先端に穴をあけて、棒を入れて、魔導コイルを撃発させる仕組み。
中央部に爆発する呪符、そして、その周りに、3段ほどに分けての鉄棒や鉄板をぐるっと矢の軸を囲むように置き、まずは紐で縛る。
そして、その上から、ぐるぐる巻きでテーピングを行う。
迅代は描かれる絵を見ながら、撃発の機構さえ完成すればあとは何とかなりそうに考えていた。




