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「対トロール兵器」

水素ガス地雷原の設置場所については、3倍の兵力、6千で攻め込んでくると見ている西門南側防衛ラインに集中設置する事にした。

迅代の当初構想では、10カ所の地雷源とするとしていたが、南側の防衛ラインの真ん中辺りに3カ所とする事となった。

3か所全てで、凹字型の地雷原領域を作り、横幅を50メルト※ほど取った大きなものを作る事とした。

※約30m

これは、こまごまと複数個所に作って無駄が出るより、積極的に敵を誘導して地雷原にぶつけようとすること。

それと、大規模な爆発で敵の戦意を削ごうと言う意図も有った。


そして、敵を誘い込むための装置として、同時に火炎壁というものも組み合わせて作ってもらう事とした。

火炎壁とはこれも、先ほどリォンリーネの提案で考案したもので、堀を作って油を貯め、敵の接近時に火矢で火を放ち、通れない領域を作るものだった。

ある程度の広さが有ればそこを突っ切って進軍は困難だし、ある程度油を貯めておけば、一定時間燃え続けると言う目算だ。

これを、本命の地雷原に敵の集団を誘導するために使う構想だ。


この大きな地雷原と火炎壁も、設計図をリォンリーネと協力して作り、軍師デカルテに物資の調達と、実際に設置してもらう事とした。


既にこの西門防衛のための施策検討を開始して3時間ほどが経っていた。

そろそろ各員の進捗を報告し合う夕方になっていた。


実は迅代にはもう一つ解決しなければいけない課題と感じている物が有った。

大型の魔物であり、通常戦闘でよく使われているトロールに対抗出来る兵器だった。


掘の防衛線で動員兵士でも人間サイズの敵には効果的な戦闘が出来る目算は有った。

しかし、体長が5mも有るトロールが出てくれば、そんな防衛線はひとたまりも無いと考えていた。

5mの敵ではいくら槍やシャベル、棍棒では何の役にも立たないだろうと。


そして、過去の戦闘では、至近距離のロングボウの矢で無いと頭蓋骨は撃ち抜けず、多少体にダメージを与えても戦車のように突き進んでくる。

このトロールを一般兵レベルで倒せる対策は必須と思われた。


迅代は照れるのであまり呼んでいなかったのだがリォンリーネに偽名で問いかける。

「リ、リーネ、対トロールの兵器を考えたいと思うんだがいいかな?」

あまり言い慣れないせいで少し言い詰まってしまう。

「は、はい!、ミードゥーさん♪」

偽名のリーネと呼ばれた事が少し嬉しかったのか、リォンリーネは少し紅潮して返事をした。

同時にテリオシスもリォンリーネにくっついて横から顔を出す。

どうやらテリオシスはリォンリーネを気に入ってずっと付きまとっているようだった。


「じいさんは呼ばれていないんですよう」

密着してくるテリオシスに、リォンリーネは文句を言って押しのける。

「いや、ほら、わしも老練なる錬金術師、リーネちゃんの役に立ってやるかのう」

デレた顔で言われても説得力は無い。


だが、迅代としては一刻の時間も惜しいので、テリオシスは無視して話を進める。

「こほん、えー、リーネ、トロール対策の武器を考えたい」


「何かアイデアはあるんですかねえ」

テリオシスをあしらいながらリォンリーネは聞く。

迅代は答える。

「今、ライフル弾が200発ほど有る、これを使えないかなと」

迅代がリシュターの外で活動している間、リォンリーネはライフル銃の弾薬の増産と、保守部品を作っていた。

そして弾薬は通常弾で100発、徹甲弾で20発、ホローポイント弾で80発の在庫が有った。


「今のライフル用の弾薬は後ろのぷらいまー?代わりの魔道コイルを叩けば、撃発して弾は飛びますねえ」

リォンリーネの言葉に迅代は頷く。

そして迅代は言う。

「そこで、弓矢の先に取り付けて、命中時に撃発させられないかと」

その言葉にリォンリーネは図を描いてみる。

「うーんと、矢じりの代わりに弾薬?でもこれだと上手く撃発するかもわからないですねえ」

「それと、真っ直ぐ弾丸が飛ぶかもわからないですねえ」


迅代はリォンリーネが描いた矢の先に弾薬が付いた絵を指さして言う。

「例えば簡易の銃身のようなものを付けてはどうでしょう?」

迅代は絵の先端の弾薬部分に長さ5cmほどの筒のような絵を書き足す。

その絵を見てリォンリーネは呟く。

「ふむふむ、これは可能性が有るかもですね」

「でも、金属で筒状のものだとすぐに沢山は作れないような・・・」

「それと威力を付けるには薬室代わりの部分も密閉して頑丈にしないとですねえ」

迅代は少し考えて口を開く。

「そこは割り切っちゃいましょう」

「1発の発射に耐える銃身・・・薄い金属を手で巻いちゃって、針金で縛る、これで行きましょうか」

迅代の割り切り方にリォンリーネは少し驚く。

「そ、それならば、今夜中に沢山作れるかもですが、強度の確認のために試射はしないとですねえ」

その言葉に迅代は答える。

「そうですね、銃身は円筒状にまいた10リング※ほどの幅の薄い金属、これを針金で縛ったもの、その底に弾薬1発をセットして・・・」

※約6cm

「その後ろに矢じりを取った矢、この矢が、目標に当たった時に上手く弾薬のプライマーを押して撃発させると」

「銃身と矢がブレたりすると上手く撃発しないし、撃発しても弾が有らぬ方向に飛んでいくか・・・」

「やっぱり、矢と銃身部の接合部分は、金属でなくて良いけど、ブレない、外れない、強固に固定しないと・・・」

「一度試しに、松脂とテープでぐるぐる巻きで試してみるか・・・」

迅代はそう呟いて、必要な物資を描いた絵に書き込んでいった。


めちゃくちゃやっつけな作り方だが、ある程度使えるようには感じていた。

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