「地雷のような兵器」
火炎瓶の製作については、パーンが図面を示しながら城内の要員にレクチャをし、作業を進めてもらう事にした。
そして、迅代とリォンリーネは次の兵器の検討に入る。
「次は、敵の大軍を分断したり、勢いを止める兵器を考えたいです」
迅代はリォンリーネに告げる。
「例えばどんな感じでなんでしょうかねえ?」
リォンリーネは想像できないような感じで聞き直す。
「わたしが居た世界では、地雷と言うものが有って、人が踏むと爆発する殺傷兵器が有りました」
「これを一帯にばらまいて、人が侵入すると爆発するかも知れない危険地帯を作る戦術が有りました」
「確かに地雷が作れると守る側には強力な武器になるんですが、この世界では火薬が普及していないので、それは難しいですね」
迅代の言葉に、リォンリーネは問い返す。
「では、火薬、黒煙粉の代わりになる、何か爆発するようなものが有れば良いって事ですかねえ・・・」
リォンリーネはそう呟きながらも、思いつくものは無さそうだった。
迅代は言う。
「銃の弾薬の時には魔法呪符で代用しましたが、地雷の爆発はもっと大きな物を想定しています」
「銃の弾薬の何十倍もの爆発です。呪符で起こすことは出来るんでしょうか?」
迅代の問いにリォンリーネが返答する。
「そうですねえ、詰める魔力の量もレベルも大幅アップしないとですねえ」
「多分ですが、わたしが頑張れば、今夜中に10個ほどならできそうですねえ」
迅代はそれを聞いて諦めの声を出す。
「10個ではとても足りないですね、100個クラスで無いと、ちょっとした嫌がらせにしかならないですね」
「何かほかに爆発するものは思いつきませんか?」
迅代の更なる問いに考えるリォンリーネ。
「爆発では無いですが、一帯に油を敷いて、敵が入ってきたら火を付けてるのはどうでしょうかねえ」
迅代はその意見について考える。
「そうですね・・・少し広くて浅い堀を作って、油を敷いておいて、敵の侵入に合わせて火矢で着火すれば効果的かも知れません」
「油が揮発しないように何かを被せる必要は有るかもですが、それは採用ですね」
「・・・そう言う意味では、ガス爆発なんかを利用できないかな・・・」
迅代が呟いた言葉にリォンリーネは聞く。
「ガスって有毒ガスとかって意味ですかねえ」
迅代はその言葉を否定する。
「有毒ガスで敵を制圧するのには大量のガズの元と、風向きを気にしないといけません」
「空気中で拡散してしまいますからね」
「可燃性のガスだったら爆発を起こせるのではないかと・・・」
リォンリーネはその言葉に答える。
「可燃性のガスですか・・・あまり思いつくものは無いような・・・」
リォンリーネの言葉に迅代は考える。
『だいたい、可燃性のガスが有るなら、もっとこの世界の灯事情は発展しているか・・・』
『メタンガスぐらいならこの世界でも集められそうだが・・・』
黙りこくった迅代にリォンリーネは聞く。
「火を吐く魔獣から何か火の元になるものを抽出して利用できますかねえ」
「例えば、レッドサーペントの内臓をあさって見るとかですね」
その提案も迅代は否定的に感じる。
「今から、調べても使えるか分からないですから・・・」
迅代はそう言いながら、爆発しやすいガスを思い浮かべてみる。
『メタンガス、プロパンガス、水素ガス・・・』
『水素と言えば水の電気分解で作ることが出来ると学校で実験したな』
『しかも直ぐに爆発する・・・今回の用途としては良さそうだが・・・』
『だが、電気はこの世界で扱うのは難しい・・・魔法の電撃をプラスとマイナスに分けて長時間放射するするなんて出来るのか?』
ダメ元でリォンリーネに聞いてみる事にした。
「電撃魔法でプラスマイナスに分けて長時間放射し続けることは出来るんですか?」
突然の質問にリォンリーネはきょとんとする。
「ぷらすまいなす、とは、何でしょう?」
迅代は頭を抱えた。
『そりゃそうだ、電気という意識すら無いのだから、電極のプラス、マイナスなんて言葉から知らないだろう』
そんな時、もう一つの水素生成方法を思い出す。
『確か・・・酸で鉄を溶かすと水素が発生する話を聞いたな・・・』
正確には金銀銅以外の各種金属なのだが、迅代の頭の中では鉄と記憶していた。
迅代はリォンリーネに聞く。
「鉄を溶かすような、強力な酸・・・液体を知らないですか?」
この問いにも、リォンリーネはきょとんとした顔で答える。
「酸とかは道具屋の守備範囲じゃないですねえ・・・錬金術師の守備範囲ですよう」
そこで、軍師デカルテに錬金術師の当てが無いか聞いてみた。
「リシュター公お抱えの錬金術師が城内に居ると思うが・・・呼び出してもらうので、お待ちください」
デカルテはそう言うと、近くに居る兵を捕まえて錬金術師を呼びに行かせてくれた。




