「即席兵器の検討」
迅代とリォンリーネ、そしてパーンは、即席で出来て、威力が有り、一晩で数が揃う、そんな都合の良い兵器を検討していた。
「その、火炎瓶とかいうものはどう作るんだ?」
パーンは迅代に尋ねる。
「火炎瓶の原理は簡単で、例えば壺に可燃性の油を入れて、蓋をする」
「蓋には布なんかを付けておいて、油に浸しておく」
「使う時には、布に火を付け、相手に投げつける」
「火が付いた壺が割れて、油が飛び散り、火が付けば、投げつけられた相手は炎に包まれる」
「そういう感じですね」
迅代の言葉にリォンリーネは呟く。
「普通は壺とかは割れにくく作ってありますよねえ」
「でも、この火炎瓶では割れやすいほうが良いんですね」
その言葉に迅代は頷く。
「薄くて割れやすい、ガラスか陶器、もしくは樽でも良い」
「密封出来て、投げつけて割れる、そんな物だと何が適当に思いますか?」
迅代はその場に居る者たちに聞く。
「ガラスの瓶やカップは高いからなあ、町の道具屋とかでは数は揃えられないぞ」
パーンが呟くが、そこにリォンリーネも呟く。
「陶器も高いですし、均一な物も数もそんなに有るとは思えませんねえ」
そんな中、迅代がふと思う。
「リシュターの城内なら、陶器がガラスのカップが一定数揃っているんじゃないかな?」
「晩餐会とかで使いそうなもんだが」
その言葉にパーンは答える。
「そうだな、城内の食器なら有るかも知れん」
「それと道具屋や飲食店でカップ類を集めるか?木製かも知れんが」
パーンの言葉に迅代は言う。
「そうだな、木製でも投げつけた時に上手く壊れるように出来るかも知れない」
「でも、まずは、城内の食器だな」
軍師デカルテに言って城内のガラス類の食器を集めてもらった。
城内の料理係を伴って、各種のガラス類を集めてもらう。
「おお、これは良さそうですね」
迅代が声を上げて取り上げたのは、ワイングラスのようなガラス食器だった。
「これは、どのぐらいの数が有りますか?」
迅代の問いに料理係が答える。
「柄や多少の大きさの違いを気にしないなら、150個ほど有るよ」
迅代はその言葉にうんうん頷く。
そして陶器の背が高めで肉厚が薄そうなカップに目が行く。
「このカップの数は?」
料理係が答える。
「30個ほど有る、同じような感じの、こっちのカップも30個ほど」
迅代はリォンリーネと、パーンに言う。
「形的に良さそうなものが200個は集まりそうだ」
「後は、どう作って行くかだが・・・」
迅代は軍師デカルテを呼び、言う。
「手投げ式の火炎瓶と言う武器を200個ほど作れそうです」
「でも、職人が足りません」
「城の工房の職人や、町の道具屋の職人、後は、男女構わないので人手を集めてもらえますか?」
その言葉に軍師デカルテは、配下の者に人集めを命じる。
「どんな感じで作るんですかねえ」
リォンリーネは迅代に尋ねる。
迅代はワイングラスを手に取り、眺めながら話す。
「ワイングラスのようなものは、まず足の部分を切り取って、上に穴が開いた薄めの木板の蓋をして接着します」
「後は、穴から油を入れて、穴に導火線となる布を突っ込みながら木の栓をする」
「そんな感じですかね」
その言葉にリォンリーネが聞く。
「木の蓋はどう接着しますかねえ」
その言葉に逆に迅代はリォンリーネとパーンに聞く。
「なにか良い接着方法はありますか?」
リォンリーネは少し考えて、口を開く。
「こういったものをくっ付けるのは松脂ですかねえ」
しかしパーンが反論する。
「確かに松脂だと一度は付くが、中の油が中で揺れ動くと取れちまわないか?」
確かに内部の油はかなりの量を入れる。
揺れ動けば、松脂の接着力を超えて、中身が出てしまうかもしれない。
そうなれば投げようとする兵士が火だるまになってしまう。
迅代は少し考えて言う。
「ならば松脂で接着後に木の蓋を紐で十字にグラスに縛り付けましょう」
迅代の出した案にパーンも賛同する。
「おお、そうだな、それなら問題無いだろう」
リォンリーネは話が一旦まとまったので図面を起こしだす。
「まあ、この火炎瓶はカンタンですねえ」
「資材さえ揃えられれば、あまり経験なくても作れそうですよう」
そう言いながら、ワイングラス用、陶器カップ用2種類をささっと概念図面を起こしてしまう。
「問題はグラスの足とかの不要部分の切り取りですねえ」
「ガラスや陶器なので、下手に扱うと、必要な部分も割れちゃう心配が有りますよう」
「この辺りの加工は職人さんにやってもらいますかねえ」
迅代はリォンリーネの言葉に頷いた。




