「仲間との合流」
西門の築城計画を立てている中、定時の報告として軍師デカルテに敵情の報告が行われた。
その報告によれば、東門の兵力の、2千から3千ほどを北東門に移動させているという事。
そして、更に、東門の兵力の2千ほどが南東門に移動させているとの事だった。
これで、東門に5~6千、北東門に3~4千、南東門に8千という敵戦力になりそうだった。
「これは南東門から直接、西門への攻撃態勢を取っていると見て良さそうですな」
「逆に東門での力押しは一旦やらない方向かと」
デカルテは報告を聞き、迅代に話しかける。
「そうでしょうね、わたしも西門への攻撃が最も可能性が高いと見ます」
迅代は言う。
「それはどういう見立てですかな?」
デカルテは興味深そうに質問する。
「それは南東門への兵力派遣が大きいからです」
「恐らくは、北と南、両方から挟撃して、一気に押しつぶす作戦と見ました」
迅代は南東門への兵力増派をみて分析する。
「ふむ、それは小職も賛同いたします。で、どのぐらいの数で来るとお思いですかな?」
デカルテの質問に、迅代は答える。
「最大で、北側に2千、南側に6千、そう見ましたが・・・」
その答えにデカルテは目を見開く。
「6千!、では、とても、我が方の片翼2千名の防衛線では防ぎきれませんな・・・」
迅代は補足する。
「わたしは各門の封鎖に最低限必要な戦力を2千と見て、余る兵力を考えてそう言いました」
「敵の指揮官がそう考えるかは分かりません」
迅代の言葉を待たずにデカルテは言う。
「だが、負けないつもりなら、そのぐらいの数を迎え撃つ覚悟が必要と言う訳ですな・・・」
迅代は頷く。
そこにコンコンと会議室の扉がノックされる。
会議室の面々が一斉にドアのほうに向く。
「ミードゥー様のお客様を連れてまいりました」
ドアを開けた兵士が告げる。
「来ましたか、入ってもらってください」
迅代は言う。
「失礼しますよう・・・」
ドアからちょこんとエルフのような耳の女性が顔を覗かせる。
しかし、顔には迅代と同じような目の周りを隠すマスクを着けている。
そしてその後ろから、歩き方がぎこちない体格の良い男も入って来る。
この男も顔には同じマスクを付けていた。
「待っていましたよ、わたしの仲間です」
迅代は軍師デカルテに告げる。
「わたしと同様に、身元を隠すご無礼をお許しください」
迅代の言葉に、デカルテは返事する。
「わかり申した。皇女殿下のご命とあれば・・・」
「わー、ジンダ、、、っ、ミードゥーさん、心配していましたよう」
マスクをしたリォンリーネが駆け寄って来る。
そんなリォンリーネを迅代はにこやかに迎える。
「大丈夫ですよ、銃が有る限りね」
マスクをしたパーンが話しかける。
「で、ミードゥーさんよ、俺たちを呼び出して、何をさせるつもりだ?」
その言葉に、迅代の目が鋭くなる。
「即席でいくつか兵器を考案・製作してほしいと思っている」
「そうでないと、このリシュターは魔王軍に占領される」
その言葉にリォンリーネは息をのむ。
パーンは質問する。
「それほど、厳しいって事か?」
迅代は頷いて簡単に状況を説明する。
迅代の説明を聞き終わったパーンは話にならないと言う顔で言う。
「無理だろう、動員兵1500と正規兵500ぐらいの混成部隊で6千の敵とやり合うだって??」
迅代はその言葉に応える。
「しかし、これを乗り切らなければ、リシュターはどの道占領される」
「そこで、こちらが優位な部分、門の防衛力を使って敵を打ち減らす方策」
「および、即席の兵器で対抗できる可能性の検討を行いたい」
パーンは肩をすくめて言う。
「簡単に言うがそんな付け焼刃の即席武器なんか、特に動員兵に使えるのかよ」
その言葉に迅代は答える。
「火炎瓶か手榴弾という、投げるだけの簡単な武器なら、訓練も要らないからな」
「後は、弩弓だな」
「弩弓は矢を撃つだけだと、単一目標を直射する武器だが、遠距離の面攻撃が出来る装備を考えられないかと思ってね」
「それが出来れば、数の劣勢をある程度緩和できるかと思う」
それを聞いてパーンは変な顔をする。
言っていることが半分も分からない感じだ。
それに引き換えリォンリーネの目は蘭々として呟く。
「ぐふふ、異世界の技術がまた火を噴くのですよう」
異世界と言う言葉に、軍師デカルテは気になったが、この場では聞かない事にした。




