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「リシュターの状況」

リシュター公爵との会話が一区切りついたと見た軍師デカルテは迅代に提案する。


「ミードゥー殿、この後直ぐに、リシュターの防衛についてご意見をお伺いしたいと思うのですが、大丈夫ですかな?」

デカルテの言葉に迅代が答える。

「無論、大丈夫です」


「では、謁見のほうは終了といたします」

デカルテは、リシュター公爵のほうを向き、告げる。

リシュター公爵は右手を少し上げて、同意の意思を示す。


「では、別室にご案内いたしましょう」

デカルテがそう言って案内をするポーズを取る。

迅代とナナギリはリシュター公爵に礼をして、デカルテに続く。


「ナナギリさんはここで帰って構いませんが、どうされますか?」

迅代はあまり戦闘に関わらないであろうナナギリに気を使い言う。

「・・・そうなのですが、一応、あなたの上司なので、どこまで理解が出来るか分かりませんが、付いてまいります」

ナナギリの言葉に迅代は頷いて、デカルテの案内する先の会議室に入る。


この会議室には、軍務官とリシュター公爵の息子、そして白銀騎士リセルゼも付いて来ていた。


全員が席に着いたのを確認し、軍師デカルテが主導し、口を開く。

「では、まずはリシュター都市の状況と、包囲に入っている魔王軍の状況について説明いたしましょう」

そう言ってリシュター都市の住民数、食料備蓄、防衛戦力を説明し出した。


住民数は現在、3万世帯が都市に有り、約5万人の住民が都市内に留まっているとの想定だった。

食料備蓄は1人1日1食の配給で12日程度は持つとの計算だった。

なお、水については堀の水そして、近くの大河ローロット、ガトリー湖による地下水が有り、干上がらない限り問題無いとの事だった。


防衛戦力は、門専属の防衛兵力として東門に500名、南東門、北東門に各300名、西門に200名が居る。

そして、都市内の兵力として正規兵2千名、動員兵士3千名、契約兵300名との事だった。

契約兵とは冒険者や退役軍人を雇ったもので、傭兵だった。

だが、一定以上の腕を持つ者ばかりなので、正規兵2千名に匹敵する攻撃力は有るとの事だった。


「動員兵士は戦場には出せませんね」

迅代は説明を聞いて言った。

動員兵は、周囲の村の動員兵士と、都市内の若い男性を動員した兵士だった。

普段から武器など持って戦ったことは無い者たちで、普通の戦争なら攻撃を身をもって吸収するクッション的な役割に当てられているようだった。

要は肉の盾だった。


その言葉にデカルテは少し沈黙して口を開いた。

「しかし、この戦い、敵の戦力は非常に大きく、全く使わないという訳にもまいりません・・・」

この言葉に迅代が聞く。

「魔王軍の現在の戦力はどのぐらいと見積もられているのでしょう?」

軍師デカルテは答える。

「東門に約1万、南東門に約6千、北東門は約1千と見られています」

「そして、間を置かず西門にも軍勢を差し向けると見ています」


彼我の戦力比は、1万7千に対し、約6千5百名。

動員兵士を除くと、一気に3千5百名に目減りする。

各門に分散して配備されている兵士を全て合計してもだ。


「味方からの増援部隊はどういう状況ですか?」

迅代の問いに、デカルテは答える。

「4日前に魔王軍の兆候有り、として皇都に応援要請と、リシュター領内の常備兵員の2千に集まるよう命令は出しました」

「しかし、その後、魔王軍の部隊規模が判明したため、その伝令を本日、皇都に送りました」

「速くて3~4日で第一陣は来るでしょうが、規模に見合った増援は、もう数日、10日後ぐらいになるでしょう」


迅代は黙って考える。

『食料備蓄が持つ期間とでぎりぎりの所か・・・』

『確かにデカルテ殿が言う通り、動員兵士が使えないと厳しい』

『素人が使える飛び道具が有れば良いのだが・・・』

迅代は口を開く。

「状況は分かりました」

「次の作戦は何か想定されていますか?」


その問いにデカルテが続ける。

「次の焦点は西門の防衛でしょう」

「西門は唯一残った外部との補給・連絡線、できれば守り抜きたいのですが・・・」

「魔王軍が投入してくる戦力によっては、戦わずに門の橋を破壊せざるを得ないでしょう」

西門は跳ね上げ式の橋ではない。

破壊するとまともな通行は戦後でないと行えない状況となる。

「後は、東門で魔王軍がどう動くかが心配です」

「敵1万に対して門の防衛兵が500名では・・・防衛力を強化する必要が有ります」

「本格的に堀を渡る装備や、強力な空中を飛ぶ兵力が現れれば力押しで簡単に破られるでしょう」

「堀を超えられたらリシュターは終わりです」


軍師デカルテの言葉を聞き、迅代は考える。

『猶予がどれほどあるか分からない状況であるが、動員兵士の戦闘力アップが出来ないものか・・・』

『あまりに数が違い過ぎる・・・』


数の問題はどうにかしないと、強力な銃や少数の騎士や戦士が居てもどうにもならないと迅代は考えていた。

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