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「古代武装実験隊」

皇都では、皇帝、皇妃、および重臣たちが居並ぶ中、クロスフィニア皇女が提案した皇国遺跡調査室から派生する新組織の事について協議がなされていた。


「このような思い付きで皇国の力を分散させるのは善しとは思いません」

「クロスフィニアさんはこの動乱の時世故、もう少しお控えなされるべきと思います」

いつになくリューベナッハ皇妃は明確な反対意見を述べた。

リューベナッハ皇妃は、従来、皇帝にささやいて影響力を行使するほうが多かった。

何か意見を述べたいときは、派閥の重臣を使って意見を言わせることがほとんどだった。


そのような態度に、皇帝自身は少しあっけにとられた顔でリューベナッハ皇妃を見ていた。

なお、この場に居る重臣、財務大臣、国防大臣は大きく頷いて、リューベナッハ皇妃の発現を援護していた。


反対意見は出て来るものと分かっていたクロスフィニア皇女は、反論する。

「今現在、魔王軍の跳梁は激しいものとなり、未だにアイルズ領の完全なる解放は叶わず、国民に大きな負担と心配をかけています」

「その上、先日、リシュター領からも魔王軍が出現する兆候が有るとして援軍を要請する申し出が有ったとか」

「魔王軍に対抗できる力が有るのなら、積極的に使って行く情勢になっていると考えます」


アイルズ領の事はあまり深い話になると、魔王軍討伐部隊が機能していない状況がこの場で議論になる。

それは避けたいリューベナッハ皇妃は、あまり正面切ってクロスフィニア皇女の言葉に反論は出来なかった。


発言しないリューベナッハ皇妃を助けるつもりで国防大臣が口を開く。

「恐れながら皇女殿下、魔王軍に対抗する力とは、いったいどこにその様な物が有るのでしょう?」

「勇者様ほどの絶対的な力を擁する魔王軍討伐部隊を超える事は無いと思われますが・・・」


その言葉にクロスフィニア皇女が告げる。

「わたくしが設立した皇国遺跡調査室の成果として、古代の勇者武装の情報が得られたのです」

「その勇者武装を装備し、機能を解明しながらその武装で魔王軍と戦う、そういった部隊を設立する所存です」


皇帝を含め、その場に居る者たちは、想像すらできない古代の勇者武装の話にどう返してよいか分からないでいる。


「そ、そのようなものは実在するのですか?」

嘘を言って部隊設立を認めさせようとしていると考え、懐疑的な意見をリューベナッハ皇妃が述べる。


「うむ、古代の勇者武装とは・・・どういったものなのでしょうか?」

クロスフィニア派でセレーニアの父でもあるヴィジランテ公爵も寝耳に水の話に思わず質問してしまう。


「Sクラスを超える魔獣ワイバーンを一撃で屠る力を持った武装、と言えば力の大きさがお分かりになりましょうか?」

クロスフィニア皇女はパーンが至急便で報告した迅代の戦果の一端を披露した。


ザワザワザワ

その力について、この場の参加者は驚き、口々に意見を言い合う。

「そんなことはあり得ない」と言う者。

「これで皇国が救われる」と言う者。


「皆、静まれ」

皇帝が口々に話す者たちをたしなめる。

「クロスフィニアよ、その力、誠であるのか?」

皇帝がクロスフィニア皇女を見据えて、落ち着いた声で聞く。


「はい、皇帝陛下。今その古代武装を持った者が、リシュターにて魔王軍の先鋒と対峙しております」

「そして、報告にもあったと思いますが、リシュターを襲ったワイバーンを討伐したのは、正にその者なのです」

クロスフィニア皇女は続けて言う。

「そして今、リシュターはいつ魔王軍から攻撃されてもおかしくありません」

「リシュターを守るためにも、特殊部隊の設立をお願いしたいのです」


クロスフィニア皇女の言葉を聞いてリューベナッハ皇妃に焦りが出て来ていた。

3勇者を手中にしたときは、ボーズギア皇子の後継を不動のものに出来ると考えていた。

しかし、魔王軍討伐部隊の名声は聞こえなくなり、部下の士気も落ちていると聞いていた。

そんな時に、政敵クロスフィニア皇女が魔王軍に対抗できる力を得ていると言う。

非常に良くない流れと、リューベナッハ皇妃は感じていた。


「ならば、その者も魔王軍討伐部隊に組み込むほうが良いのではないですか?」

リューベナッハ皇妃はすかさず提案する。

確かにこの意見は多くの者が正当と思う提案だった。


クロスフィニア皇女はわざと困ったような顔を作り、言う。

「しかし、リューベナッハ皇妃殿下・・・」

「今の魔王軍討伐部隊は大組織故か機動的に兵力を動かしたり、力が発揮できていない様子が見受けられます」

クロスフィニア皇女の言葉にリューベナッハ皇妃はジロリと睨みつける。


「また、戦闘経験豊かな者からの助言では、古代武装を持つ部隊は遊撃的に行動できる部隊が良いだろうと」

「よって独立した遊撃行動を取る部隊が最も力を発揮できるらしいのです」

クロスフィニア皇女はしたり顔で言ってのける。


このやり取りを聞いていた皇帝は少し考え、口を開く。

「なるほど、少人数の部隊が軽快に動けると言うのは道理」

「決戦には魔王軍討伐部隊で揺るがぬとして、先遣的に動かし、魔王軍の跳梁を抑える部隊とするか」


「御意にございます、皇帝陛下」

クロスフィニア皇女が皇帝の言葉を肯定する。


皇帝は席を立って告げる

「よかろう、では、今、リシュターに居ると言う者たちを臨時の特別部隊として認めよう」

「だが、クロスフィニアの言説が誠か否かは、リシュターでの戦いを見て判断するとしよう」

「そして、急ぎ、魔王軍討伐部隊の全力をリシュターへ移動させよ」

「リシュターの危機をこの2つの部隊で振り払うのだ」


「皇帝陛下の仰せのままに」

一同が声を揃えて返事をした。

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