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「最悪の状況」

「ガズン!!」

バンノーのロングソードがアースドラゴンの脳天から突き刺さる。


しかし、押し込む前にアースドラゴンが首を左右に大きく振って、さらに深く突き刺そうとするバンノーを跳ね飛ばす。

「くわぁ!」

予想しない動きに、バンノーは剣を手放し、飛ばされてしまう。


「バンノー!」

グスタージはその動きに気を取られ、アースドラゴンの尻尾が襲って来るのに反応が遅れた。

「バシィィィ!!」

「うぉわ!」

グスタージは強力なアースドラゴンの尾の攻撃を受ける。

持ち前の反射神経で受け身は取ったが、打撃を食らい飛ばされてしまう。


「グォッ!グオォッ!!」

頭にバンノーのロングソードが刺さったままのアースドラゴンは狂ったように頭を左右に振り前進し出した。


「ライトニングボルト!」

フィリスの詠唱で、アースドラゴンに突き刺さったままのロングソードにいかづちが落ちる。


「ギャウウ!!!」

悲鳴を上げ、一瞬停止したアースドラゴンの、目、鼻、口から黒い煙がもくもくと出て来る。

そしてそのままアースドラゴンは動かなくなった。


冒険者チーム「ラックラン」がアースドラゴンの2体目を討伐した頃、アースドラゴンの隊列は北東門の200mほど前まで迫っていた。


白銀騎士リセルゼは、4頭目のアースドラゴンに立ち向かいつつ、焦りが出てきていた。

『当初の作戦では門に300メルト※までアースドラゴンが近付けば、橋を上げる事になっている』

※約180m

『そろそろ300メルトと言うのに、まだ2体しか討伐できていない』

『これは作戦としては失敗か』


そんな時、突如、アースドラゴンの後方の2体が2本足で立ち上がり、恐ろしいスピードでダッシュを始めた。

前の4体のアースドラゴンはワニのように4本脚でノシノシ歩くタイプだった。

しかし、残りの2体は体形が少しスリムで前脚が小さく、後ろ脚が大きかった。


「まずい!別種のアースドラゴンだ!」

「橋を上げろ!!」

リセルゼは叫ぶが、北東門の要員に伝わるわけもない。

2体の走るアースドラゴンは、戦っているアースドラゴンを無視して、北東門に一直線で向かっていた。

狙いは壁門の制圧によってリシュターの防御を崩壊させる意図は明白だった。


2体の走るアースドラゴンが、北東門の100m付近にまで近づいた頃、ようやく門につながる橋を上げる作業がはじめられた。

しかし、一番最初、橋を浮かせるまでが最も力が必要で、時間もかかる。

必死に馬を用いて橋を上げようとするが、なかなか持ち上がらない。


その2体のアースドラゴンの前には、魔法騎士ジュブラが歩いていた。


ジュブラは走って来るアースドラゴンを認めると不敵な笑いを浮かべた。


そして、大きなアクションで自分のロングソードを空に掲げると、魔法を詠唱した。

「エアウォール!!」

その直後、どっと厚い空気の層が押しよせ、2体のアースドラゴンの行き足を止めた。

しかし、アースドラゴンは構わず前進するように足を動かす。

スピードは落ちたが、まだ、前進を続けるアースドラゴン。


そのうちの1体に、ジュブラは魔法を詠唱する。

「サンダーウェーブ!!」

幾筋かの雷が起こり、1体のアースドラゴンの体を直撃する。

「グワォウ!!」

雷が直撃したアースドラゴンは2本足で立つ体をのけ反らせた。

そして体を戻す反動で、毒霧を吐き出した。

「シャアアアアァァァァ」


「うむう!」

ジュブラは自分の周囲に防御魔法を張り、毒霧の直撃を避ける。

そして、素早く左側に回り込むと、


魔力を込め青白く光るロングソードを突きの姿勢で構える。

「ふうん!」

そして突き出した。

「ザッ!!」

行き足の止まったアースドラゴンの、向かって左側の脚部をロングソードで貫く、そして斬り抜くように剣を抜く。

このロングソードは魔力を込める事で、たとえ金属であっても切ることが出来る力を持っていた。


深く、そして大きく切り裂かれた左側の脚は、アースドラゴン自身の体重を支えることは出来ず、倒れ込む。

「ドオオン!!」

倒れ、苦しみながら、周囲に毒霧をぶちまける走るアースドラゴン。

さすがに周囲の毒霧が漂う状況で一旦、ジュブラは数歩後退する。


しかし、もう一体の走るアースドラゴンは、そんな状況に構わず走り続けていた。

弩弓が射撃し、突進の阻止を試みたが、走る動きに追従できず、当てられなかった。


あと20m、ようやく北東門の入り口につながる橋は上がりかけていた。

なんとか橋を上げるのは間に合いそうだった。

しかし、アースドラゴンは走るのを止めない。


堀を超えて門に突撃してぶつかるつもりか?

そう思いながらも兵員たちは走るアースドラゴンを見守る。

「衝撃に備えよ!」

門の上に有る弩弓が配備された戦闘区画の兵員に指揮官が叫ぶ。


その瞬間、走るアースドラゴンが飛び上がった。


20度ほどの角度まで上がっていた橋の上に、アースドラゴンの巨体で飛びついた。

橋の引き揚げ作業をしていた馬と兵員たちが、逆方向に引っ張られ宙を舞う。


「ガガン!!!!」


ものすごい音が周囲に響く。

持ち上げられていた橋は再び水平になり、その橋の先端にはアースドラゴンが居座っていた。


そして、アースドラゴンのやって来たほうから、後続の軍勢が追い付いて来たようだ。

防御区画の弓兵を相手にしていたマンティコアの部隊も、北東門の制圧のために集まって来ていた。


北東門の反撃攻撃作戦は最悪の状況を迎えていた。

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