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「北東門での戦い」

東門と南東門に現れた魔王軍は防衛陣地付近で侵攻を停止した。

侵攻は停止はしたが、状況はどんどんリシュターに不利になっていた。

魔王軍は次々と兵力を森から吐き出していたからだ。


東門の前には、当初現れた3体のヒドラ系大型魔獣に加え、ミノタウロスやオーガを擁する魔族戦士の集団が確認できた。

東門の展望からの確認で、約3000体が集結していると思われた。


南東門も同じような感じで、当初現れたヒドラ2体と、リッチによる魔法攻撃部隊、魔族戦士やオークなどの一般的な戦闘部隊等々。

こちらは2000体ほどが現在確認されているが、まだ増えそうだった。

そして、後にアースドラゴンが4体出現し、西門に向かっているのが確認された。

東門側から北東門へ向かった部隊と同様に、包囲のための進軍であろう。


リシュターでは緊急の対策会議が行われ、以下の事が決定された。

・戦力差は大きいため基本籠城戦術を取り、すでに依頼済みの皇国軍の増援到着を待つ

・東と南東の門の跳ね上げ橋は、橋を上げて通行できないようにする

・西門の橋は跳ね上げ式では無いため、敵の接近に備え破壊の準備を進める

・北東の門はまだ敵が眼前に迫っていないため、橋を上げるのは保留する

・北東門では、包囲を企図する敵部隊の各個撃破を試みる


今、一番、戦力が少なく、突出している北東門の攻撃のために移動している部隊を叩く。

それ以外は籠城戦として損害を抑える。

そう言う方針だった。

だが、北東門に向かっているアースドラゴンもSクラスに評価される場合がある強力な魔獣だった。

それが6体も居て、上空では飛行する魔物が守っている。

この部隊を討伐する事も通常軍では困難な事だった。

ある程度引き付けて北東門にもある弩弓2門の支援射撃を受けつつ戦う。

そういう形で作戦計画が練られていた。


上空を飛ぶ魔物には壁門の防御区画と、北東の防御陣地の砦に配置したロングボウ部隊による統制対空射撃で対抗。

アースドラゴンを直接叩くのは、白銀騎士リセルゼのチーム、氷結騎士と呼ばれる魔法騎士ジュブラ、Aクラス冒険者パーティーのラックラン。

そして領地軍の最精鋭部隊「ソルテアゴルド」が壁門前で突撃する準備をしていた。


北東門の戦闘区画の指揮官が叫ぶ。

「敵影、東南東、約10クロメルト※、弩弓発射準備!」

※約6km

それと同時に、通信員が魔法道具の大型灯を点灯させて戦術信号を防御陣地の砦に発する。

〈接敵準備〉

指揮官が指示した東南東の方向にはアースドラゴンの進軍を示す土煙が上がっていた。

その上空の飛行する兵員は、アースドラゴンから突出せず、連携して進軍してきている。


指揮官からの号令に、10名ほどごとに分けられたロングボウ部隊は射撃統制官の指示を待ち、弓をつがえる準備をする。

また、2門の弩弓は最大威力の設定で東南東方向を指向する。


それから十数分の時間が過ぎた。

もうアースドラゴンの姿がハッキリとわかるまでに近づいていた。

「敵戦闘の魔獣まで1.5クロメルト※、弩弓照準合わせ!」

※約900m

「射撃開始!!」

「ガヅン!!」

指揮官の号令と共に、弩弓の1基から大型の矢が発射された。

弩弓の矢は移動している先頭のアースドラゴンの背中を飛び越える。

「次発装填急げ!!」

弩弓付きの指揮官が叫ぶ。

次の矢を発射するまでに、弓の弦を人の力で引き、矢をセットする必要が有るが、矢も軽いものでは無く一苦労だった。

弦を引くのに30秒、装填のための滑車に会うように弩弓本体を動かし、矢を載せて、再度照準するのにもう30秒ほどかかえる。

その間、もう1門の弩弓が発射の体制に入る。

目標に隙を与えないため、今回は2門が交互で射撃する形を取っていた。

「撃て!」

もう一門の弩弓の指揮官が叫ぶ。

「ガヅン!!」

発射された矢はアースドラゴンの背中に直撃する。

しかし、かすり傷は負わせたようだが、撃たれたアースドラゴンの進撃が止まる気配は無かった。


飛行する兵力に対する統制射撃は、かなり上手く行っているようだった。

射撃指揮官が1つの目標を決めて、同時に10名ほどで矢を射かける。

ロングボウなので威力も射程もなかなかある。

ハーピーなどはバタバタと撃ち落されて行った。

しかし、マンティコアはそう言う訳にはいかなかった。

10体ほど居るマンティコアはいずれも無傷で、矢を尾っぽで弾き返しもしていた。

また、背中に載せた魔族兵が弓で反撃をしてきて兵士が負傷する場合も有った。


アースドラゴンが6体とも攻撃をものともせずに北東門に接近してくる。

弩弓で1~2体は倒せるかと期待していたが、期待外れのようだった。

この不利な状況でも地上の攻撃部隊はアースドラゴンに突撃する予定だった。


彼我の戦力が拮抗と呼べる戦場はここしか無く、ここで反攻できなければ今後は望み薄と見られていた。

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