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「ワイバーン戦」

城塞都市リシュターを守る防衛陣地は、東西北南の4カ所が築城されており、東側が一番大規模なものだった。

防衛陣地は小規模な砦が縦深をもって点在する地帯で、城塞都市リシュターを狙う軍勢が攻めて来た時に、可能であれば防衛陣地で撃退する事を目的としたものだった。


東側防衛陣地は、東の壁門につながる道を中心に、左右4kmほどの土地に、点々と砦が作られている。

道を挟んだ左右には、最も大きな砦、カルボンデ砦と、パズボンデ砦が有った。


砦には攻撃に来た敵を打ち据えるロングボウ部隊と、砦に接近された場合に防御戦闘を行う槍兵部隊が配備されている。

戦術としては、点在する砦の横連携で敵の部隊を面で足止めし、リシュターの防壁部隊のロングボウ部隊とで敵を打ち減らす。

そして、弱体化した箇所に向けて騎兵や重装兵で突撃、せん滅を行うコンセプトだ。


ワイバーンは東側防衛陣地のカルボンデ砦とパズボンデ砦を重点的に攻撃していた。

ワイバーンの色はレッド、炎を吐いて砦の周囲を燃やして回っていた。

砦の構造物は石作りで崩れてなどはいないが、内部の補給物資や天幕などが盛大に燃えていた。


両砦から兵たちが必死にロングボウで矢を射かけているが、ワイバーンにあまり効果は無さそうで、炎で返り討ちに遭っている状況だった。


リシュターの白銀騎士リセルゼは、軍師デカルテの要請で、部下二人と共に、馬でワイバーン迎撃に向かっていた。

「ワイバーン、倒せますかね」

リセルゼの部下サージョンが馬上で呟く。

しかし、サージョンの弱気な発言を、リセルゼは嗜める。

「臆するな!我が大剣ダイアライアの刺突をもってすれば、あやつの鱗も貫通できるだろうよ」

「それに、本命はワイバーンの射線への誘導だ」

そうは言ったが、リセルゼ自身、ワイバーンが少し高く上がれば手も足も出ない状況になるとは考えていた。


だんだんとワイバーンに近付く、リセルゼ一団。

ワイバーンはこの3騎の馬に気づき、大きく旋回し、リセルゼ達に対する襲撃行動に移る。

「来るぞ!交差ざまに槍を撃ち込め!」

「はっ!」「わかりました!」

リセルゼの言葉に、オーパとサージョンは返事をし、左右に馬の間隔を開く。

思った通りに、一番見た目に目立つ白銀色のプレートメイルを着たリセルゼにワイバーンは向かって来る。

そしてワイバーンはリセルゼの馬を狙い、口から炎を吐き出す。

その動きを見て、リセルゼは馬を操り、回避行動を行う。

それに呼応し、左右からオーパとサージョンは馬の方向をワイバーンに向け長槍ジャベリンを投擲した。


長槍はワイバーンに見事命中し、サージョンの槍は胴体に当たり跳ね返されたが、オーパの槍は翼の一部に傷を付けることが出来た。

「ギュゥエエエエエエエ!!」

ワイバーンが怒り狂ったような声を上げ、上空に回避していく。

リセルゼも炎を見事回避し無事だった。


オーパとサージョンは馬から投擲用の分銅を取り出し、馬を逃がす。

そして、リセルゼも馬から降りて、大剣ダイアライアを抜いて、馬を逃がした。


3人はここでワイバーンと決戦に挑もうと言う訳だ。

実はこの3人の突撃には、もうひとつ秘策が有った。

各壁門の防御戦闘区画には、大型魔獣に備えた据え付け型の大型弓、弩弓が左右に各1基設置したあった。

全長2m、太さ5cmの大型の矢を有効射程1000mで撃ち出すことが出来るものだった。

ワイバーンをこの射線上におびき出し、命中させられれば、大きなダメージを与える事は出来ると考えられていた。

ただ、欠点は発射速度で、射撃後の再装填にどんなに急いでも1分ほどかかってしまう事だった。


ワイバーンは大きく旋回した後に、急降下で3人めがけて襲って来る。

オーパとサージョンは10mほど距離を取り、分銅をぶんぶんと廻し、ワイバーンに投げつける体制を取る。

真ん中に居るリセルゼは、囮役を買って出て、目立つように剣を構える。


今度は口から炎を吐きつつ、リセルゼに向かって足の爪を繰り出す。

リセルゼは炎を盾で受け防ぐが、ワイバーンの足爪は不意を突かれた。

同様に盾をかざすが、強力な力で吹き飛ばされる。

「ぐふっ!!」

大きく後ろに飛ばされるリセルゼ。


この機を逃さず、オーパとサージョンは分銅をワイバーンに投げつけた。

分銅は大き目の重りと、15mもの細いワイヤーで作られていた。

ワイヤーは魔獣ブラックワームの吐く強力で軽い糸で作られた特別品だった。

そして投げられると同時に留め金が外れ3つの重りに分かれ広がって目標に進む。

地上に降りてリセルゼに第二撃目を入れようとするワイバーンの上を2人の分銅が交差する。


3つに分かれた分銅のワイヤーは終端では結ばれており、強力なワイヤーの糸が広がってワイバーンを包み込む形となった。

ワイバーンの体に絡みつくワイヤー。

違和感を感じたワイバーンが払おうとするが、簡単には切れないワイヤーがさらに絡みつく事となる。

その場でワイヤーを払おうと暴れるワイバーン。

チャンスだった、


「ガヅン!!」「ガヅン!!」

壁門から弩弓の矢が2本発射された。

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