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「皇女の戦士」

クロスフィニア皇女は、リガルド、グリーナ、イリナを順に見ながら口を開く。

「お三方の実力はモーゼリン卿から伺っています」

「そして、リガルド殿は皇帝陛下主催の御前武闘会で優勝された実力をお持ちと存じております」

「その力を、わたくしに貸してもらいたいと考えているのです」


その言葉にリガルドは、目だけをぐるっと周囲の走らせて、言った。

「皇女殿下は今まで私兵のようなものを持っていないと聞いています」

「それに、正式な側付きの兵士なら、いくらでも近衛隊から引っ張って来れるでしょう」

「何故、貴族でも役人でも無い、我々なのですか?」


クロスフィニア皇女は、少し目を瞑り、そして開き、答えた。

「わたくしは政治向きの事は今まで関わらないようにしてまいりました」

「しかし、魔王軍が出現し、皇国の民が危機にさらされ、そして今、その魔王軍を倒すべき力」

「勇者たちを擁する魔王軍討伐部隊も機能不全に陥っている状態です」

「ですが、その機能不全すら皇国の政争のよって解消する事が出来ない状況なのです」

「そこで、わたくしは新たな魔王軍への対抗する力として、立ち上がろうと決意したのです」

「その礎として、力を貸してほしいのです」


リガルドは皇女の言葉を目を瞑って聞いていたが、一区切りと見て口を開く。

「魔王軍と戦う戦力となれ、との事なのでしょうか?」


クロスフィニア皇女派リガルドを正面から目を合わせて、頷く。


リガルドは冗談じゃ無いという感じで目をそらす。

「俺は、国や国民を救いたいとか全然考えていませんよ」

「それでも、皇女殿下に仕え、命を懸けて魔王軍と戦うような人物に見えるんですかい?」


少し荒い言葉にモーゼリンが口を挟む。

「リガルドさん、不敬ですぞ!」

しかし、そんな言葉にリガルドは動じない。


同時に、クロスフィニア皇女は右手を挙げ、問題無いとの意思をモーゼリンに示し、口を開いた。

「そう言われると思っていました、リガルド殿」

「でも、ご自身の信義や仲間との盟約を違えない、信頼の置ける人物であることも知っています」

そう言ってクロスフィニア皇女は席から立ち上がった。


「勇者ジンダイ様を助けてほしいのです」

クロスフィニア皇女はその場で頭を下げた。


モーゼリンは皇女の行動に驚き、目を見開いた。

「こ、皇女殿下!」


リガルドも、クリーナもイリナも、さすがに驚いて口をひらいたまま、クロスフィニア皇女を凝視する。

この国で皇族が頭を下げる事など滅多な事ではあり得なかった。

それも、貴族ではない平民に対してである。


モーゼリンは震えながら言葉を発する。

「お、お止めくださ!皇女殿下!このような事が他派閥に知られれば」

クロスフィニア皇女は頭を上げて言った。

「わたくしは、リガルド殿に命をかけてもらう事になるかも知れません」

「そのための信義として、態度で示すべきと考えたのです」


クロスフィニア皇女が話す姿を、じっとを見つめていたリガルドは口を開いた。

「何故、俺、いや、俺達なんですか?」


クロスフィニア皇女はリガルドに目を合わせて話す。

「7年前の御前試合で戦うリガルド殿の姿、それはとても印象的でした・・・」

「的確に相手の動きを剣で制し、相手の隙に剣を討ち込む、10歳のわたくしには芸術や演舞のように思えたのです」

「その武人と先日の遺跡の護衛の時に再会できたことを僥倖と思ったのです」


クロスフィニア皇女は視線をグリーナとイリナに移す。

「そして、調べさせると、力に奢らず、自ら科した贖罪のために地位と名誉を捨てる事を厭わない覚悟」

「育て上げたグリーナ殿、イリナ殿の実力もBクラス冒険者に匹敵するほどで、リガルド殿との連携能力は言うまでも無い事」


再び、クロスフィニア皇女はリガルドに向かう。

「わたくしの目的の達成には欠かせないと思ったのです」


「グリーナとイリナは」

リガルドの言いかけた言葉に、イリナが割って入る。

「わたしはイイいよ!」


しかしリガルドは慌てて言い返す。

「っ、待て、お前たち、これは戦争で死ぬかもしれない話だ」

「お前たちは、もう俺が居なくても何とか独立しても仕事をしていけるだろう、だから」


今度はグリーナが割って入る。

「だから、俺もリガルドと一緒に戦うほうがイイ」

「それに隊長さんを助ける仕事だろ?」

「リガルドも気にしてたじゃ無いか」


リガルドは反対の気持ちがまだ有ったが、グリーナとイリナがはっきりと自分の意思を示してくれた事が嬉しかった。


「リガルド殿、わたくしのため、戦ってくれますか?」

クロスフィニア皇女はリガルドを正視して言った。


なんだか、クロスフィニア皇女に言い負かされたようで少し癪だったが、隊長、勇者ジンダイを助ける戦いなら良いかなとも思った。

「ここまでされたら仕方が無いか・・・」

そう呟き、リガルドは座席を立ち、グリーナとイリナにも座席から立つように促す。


そしてリガルドは胸に手を当て、かしこまる姿勢で口を開いた。

慌ててグリーナとイリナもポーズを真似る。

「皇女殿下、かしこましました」

「命を賭して、殿下のご威光を支える剣となりましょう」


「感謝いたします、リガルド殿、グリーナ殿、イリナ殿」

クロスフィニア皇女は微笑んで3人を見つめた。

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