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「組織拡充」

セレーニアは、結界部屋で、クロスフィニア皇女と今後の主な予定について話し合った。

1.城塞都市リシュターに皇国遺跡調査室の分室を作り、勇者ジンダイ様の活動拠点とする。

2.先行編成の部隊を切迫度が高い城塞都市リシュターに派遣し、勇者ジンダイ様と合流させ不測の事態に備える。

3.正式に特殊実験隊の発足の裁可を皇帝陛下に仰ぎ、リシュターへ派遣する手はずを整える。

4.もしリシュターへの侵攻が現実となれば周辺領から兵力を集め対応する。


大筋の話を決めた後、クロスフィニア皇女は少し遠慮がちにセレーニアに言った。

「セレンには申し訳無いのだけれど、もう少し、アーロス領での総督業務は続けてほしい」

「リシュター領が攻められた時にアーロス領にも不安の種を放置する訳にはいかないの」

「代理の人選を急いで行うので、ごめんなさい」

申し訳無さそうに言うクロスフィニア皇女の心中を察して、セレーニアは明るい声で返す。

「大丈夫よ、フィア、ジュウを手に入れたジンダイ様はとても生き生きとしておられました」

「お側でお助けできないのは心苦しいですが・・・」


結界部屋で2時間ほど話し込んだ二人は、別れを惜しみつつ、会合を終えた。

その間、ずっと、モーゼリンは待っていてくれたようだった。

結界部屋から出てきた、「商人ガザリア」とクロスフィニア皇女を認め言った。

「存分に、お話は伺えましたかな?」


モーゼリンの言葉に、クロスフィニア皇女は柔和な表情で答える。

「ええ、大変興味深く、有意義なお話が伺えました」

「つきましては、今日得た知見をさらに深めるため、リシュターに皇国遺跡調査室の分室を作ろうと思っています」

「詳細は、後ほど伝えさせますので、手配のほう、お願いしますね」


モーゼリンは一瞬驚きの目をして、普段の表情に戻る。

「仰せのままに、皇女殿下」

モーゼリンは、クロスフィニア皇女の言葉が、組織拡充を意図するものであることを予見していた。


その後、セレーニアは、城の外に送ったもらったモーゼリンから、皇女殿下の言葉として、本日は皇都に泊まるようにと伝えられた。

セレーニアの性格を知るクロスフィニア皇女の配慮だった。


セレーニアとアレジアは、言いつけを守り、夜はゆっくりと宿屋で休んだ後に、翌日、皇都を発って行った。

その午後、モーゼリンの元に、皇女殿下からの書簡が届けられた。


公式な業務連絡書簡として、城塞都市リシュターに、皇国遺跡調査室の分室を設立せよとのものだった。

そして、分室長の人選、規模、目的などが書かれていた。


だが、その書簡には、もう1通、暗号書簡が付けられていた。

手順に従い解錠すると、以下の事が書かれていた。


【リシュターでは勇者ジンダイ様が魔王軍と戦う事になるかも知れません】

【そこで第一護衛隊に勇者ジンダイ様の助力をお願いしたいのです】

【早急にお話ができるよう手配をお願いします】

【なお、ジンダイ様の件は極秘事項ですので含み置きを】


「まおうぐんとたたかう?」

モーゼリンは暗号文を読んだ時の意味がすっと入ってこなかった。

『勇者・・・』

『勇者を、援護する戦闘部隊、を、創設するおつもりなのか?』

この事による軋轢は数多く生まれるだろう。

言うまでもなく、リューベナッハ妃派閥からの圧力がより強くなるだろう。

モーゼリンはそう考えた。


『勇者ジンダイ様は勇者の力が発揮できていない勇者と知れ渡っている』

『皇女殿下はここで拙速な行動を取れば、皇女派が潰されるのを分かっていないはずはないのに』

と皇女の暗号文の意味を図りかねていた。

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