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「魔物盗賊団」

迅代は森に潜ってすでに2日目を迎えていた。


城塞都市リシュターの壁門に通じる、東、西、北東、南東の4つのうちの、今日は南東側に広がる森に居た。

南東側の城門に続く道は、森を通って、巨大な湖ガトリー湖に通じているもので、湖周辺の村からの魚の通商ルートになっている。


しかし、途中の森に魔族の盗賊団が住み着いているのだと言う。

その魔族の確認と、場合によっては討伐を行うのが、迅代の目的だった。


パットの情報によれば、オーガが1体と、ゴブリンが4~5体が確認されており、通行する村人を襲っては食糧を奪っているのだという。

また、冒険者パーティーやリシュター領地軍の討伐隊も編成されて向かったようなのだが、オーガが強力で返り討ちに遭っているのだと言う。


なお、今回は、迅代は見られた場合の身元を隠すため、メガネの代わりにダークブルーの目元を覆うマスクを付けていた。

迅代自身はあまり乗り気ではなかったが、パットが勧めた事と、リォンリーネがノリノリでカッコイイ(自称)のマスクを作ってくれたためだ。

でも、緑髪でバレそうだからあまり意味が無いのでは?とも思っていた。


迅代は道なりのルートで見張っていれば、そのうち遭遇できるだろうと踏んでいたのだが、甘かったようだ。

すでに被害が多発しているため、村からリシュターに向かう者はおらず。

リシュターから村に向かう人もおらず、おかげで、盗賊団にも出会うことは出来ていなかった。


『いっそ、自分が村人に化けて囮になったほうが良いのか?』

迅代は、そんな風にも考えるようになっていた。


しかし、自分が囮になる場合には、銃が上手く活用できないだろうとも思っていた。

今のボルトアクションライフルでは、至近戦闘には使い勝手が悪い。

サブマシンガンやアサルトライフル、ハンドガンなど自動装填式の銃のほうが活躍できるだろうと思ったが持っていないものは仕方が無い。


そんな風に思っていた頃、ようやくリシュターから出ていく一団を見つけた。

リシュター領の現地兵で編成された、食料調達部隊だった。

20名ほどの護衛と、輸送馬車4両で編成されていて、ガトリー湖のほうに向かっているようだった。

恐らく、湖付近の村を回って、魚や木の実などの食糧を買い付ける目的なんだろうと思われた。


迅代は、魔物盗賊団の出現に備え、距離を取って追跡する。

そして、リシュターから出て、森の奥深くに差し掛かったころ、奴らは現れた。


先頭の騎馬兵の前に、オーガが姿を現す。

「て、敵襲!!」

騎馬兵が叫び、一旦後ろに後退する。

そして、護衛兵士10名ほどが、前に出て。槍や弓を構えて戦闘態勢を取る。

「撃て!」

4名の弓兵がショートボウで矢を射かける。

しかし、オーガはある程度防具で防御しており、ショートボウでは有効打にならない。


そしてオーガは大剣で武装しており、振り回して弓矢を跳ね飛ばしていく。


「突け!!」

槍で武装した兵士が5名、一斉にオーガに向けて槍を突き出す。

オーガはその動きに呼応して、一旦、受けの姿勢を取り、槍の穂先を左腕に装備したシールドでかわし、右腕に持つ大剣で槍を薙ぎ払った。


5名の兵士は槍ごと右側に吹き飛ばされる。

一部の槍はへし折られていた。


馬から降りた騎馬の兵士と、指揮官らしき戦士が剣を構えて前に出る。

この2名は剣術には覚えがあるようだった。


しかし、パワーが違う。

それぞれ斬りかかるも、シールドと大剣を上手く使い、オーガはふたりを圧倒して行った。


ある程度戦力が弱まったと見て、今度は周囲からゴブリンたちが飛び出してきた。

残りの護衛兵たちは、ゴブリンの対応に手を取られて、オーガへの攻撃が行えない。


その様子を見ていた迅代は、介入を決意した。

少し離れた森の中の射線が通る位置からオーガを狙う。

弾種は通常弾、距離にして200mほど。


木の幹を銃の支えにして、オーガの頭部をスコープ越しに狙う。

「ボン!クイィィ!!」

奇妙な発射音と共に、オーガの頭部に弾は命中した。


高位の魔獣のような硬さで無ければ、通常弾で十分な威力を発揮する。

オーガの頭部は後頭部が吹き飛ばされた形だ。


オーガさえ居なくなれば、魔物の盗賊団は、護衛兵士たちの敵では無かった。


迅代は役目を果たしたものと考えて、助けた一団とは接触せずに帰路に就いた。

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