「アレジアとリォンリーネ」
「リシュターだと何がおいしいんですか??」
ライズ武具店を出て、中央の商店通りに向かいながら、アレジアはリォンリーネに聞く。
「そうですねえ、リシュターの街の近くには大きな湖と森が有って、昔から湖のお魚と森にすむ野生動物の料理が発展してきたらしいですね」
「後は、森の中の村々では果樹園をやっている所が多くて、フルーツ関係の食べ物も種類が多いですよう」
リォンリーネの答えにアレジアは色々と想像して期待感が高まる。
「料理もだけど、フルーツ関係のお菓子も買っちゃいましょう!」
アレジアは疲れた体に甘いものが欲しくなったようだ。
「おおお、お菓子、贅沢ですよう、たまに木の実のクッキーぐらいしか買っていませんからねえ」
「ジューシーなちょっと手が出ないやつも行っちゃいますかねえ」
リォンリーネは経費でお菓子が買えるとなると遠慮が無かった。
だがそのノリにアレジアは同調するタイプだった。
「後は、折角なのでお魚とお肉ですね!」
「それからお酒!」
それを聞いてリォンリーネは問いかける。
「アレジアさんもお酒はイケるほうなんですか??」
その問いにアレジアは返答する。
「実は、そんなに強くないんだけど、でも、祝宴だしね!」
アレジアは笑顔で答える。
二人がわいわいと話しながら進んでいる後ろに、迅代が付いて歩いていた。
今回は荷物持ちのつもりで付いて来たためだ。
するとくるっと後ろを向いて、アレジアが迅代に話しかけて来た。
「セレーニア様、とても一生懸命に勇者様の事を心配していたんですよ」
「でも、アーロス領での事件のせいで、身動きできなくなっちゃって」
その言葉を聞いて迅代は微笑んで言った。
「ええ、わかってます」
「セレーニアさんはいつも精一杯良くしてくれています」
「そして、今回も」
迅代の答えを聞きアレジアはニコっとして言った。
「でも、乙女なセレーニアさんは見てちょっと驚いちゃいましたよ」
迅代も再会の時に泣かれたのには驚いてしまった。
そう言えば、以前、勇者ヴィンツとの模擬戦闘で、魔力暴走を戦術として使った時にも泣かれたっけなあ、と思い返した。
「貴族のお嬢さんに心配されるなんて色男ですよう、ジンダいはう!!」
リォンリーネは突然話しかけた事を止める。
変な顔をするアレジアに迅代は言う。
「そう言えば、俺はミードゥーさんと言う名前なので、よろしく」
そう言われたアレジアはきょとんとして言う。
「え?そうなの?」
言いかけたくせにしたり顔でリォンリーネが説明する。
「ほら、今は正体を隠している身ですからねえ、偽名ですよう」
そう言った当人が一番守っていないと思いながら、迅代は苦笑いをしておいた。
買い物する内容に期待感を高める話題で歩いてきた。
しかし、中央通りに出て、酒場や食料品屋を回ってみて、アレジアとリォンリーネの期待は裏切られた。
「た、た、高いですよう」
「うゎあ、想像していたより、厳しい・・・」
リォンリーネとアレジアは同時に声を上げる。
それは、主食のピローネが倍以上するのに、ぜいたく品は言うまでもない状況だった。
いくら経費でとは言え、今までの常識以上の値段が付いていると、簡単には思い切れないものだった。
「お酒は控えめにするとして、食べ物は少し張り込んじゃいましょう」
勢いが無くなったリォンリーネとアレジアに、迅代がアドバイスする。
「明日からまた移動でしょうから、体力は付けたほうが良い」
そう言って、夕食用のパンを買い、おつまみ用として肉類と野菜と、女性用にお菓子、そして、お酒を一樽だけ購入して帰路に就いた。




