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「次の方向性」

「魔纏兵とかいう敵は倒す事は出来たのでしょうか?」

迅代は新しく聞く敵、魔纏兵に非常に興味が有った。


迅代の問いにセレーニアが答える。

「アイルズ領での戦いに出現した時は、勇者アリーチェ様が放った光の槍を撃つ魔法「エルキュオス」と光で焼き尽くす魔法「ヘリオスフィア」で大ダメージを与えた模様です」

「しかし、倒すまでには至らず、驚くべきことに、もう1体の魔纏兵がかばって2体で撤退したのです」


迅代はセレーニアの説明を聞いて、かなり厄介な敵であると感じた。

『高度な戦闘技術に、恐るべき防御力、そして、複数体で連携した戦闘行動が出来る』

『魔纏兵の対応には、今までの魔王軍の兵士や戦士、魔獣とは異なり、一段上の戦術が要求されそうだ』


「なるほど、わかりました」

迅代はそう言って、今後の課題として対策を考えることにした。


「ジンダイ様はこの後、どういう行動をされるおつもりでしょうか?」

セレーニアは迅代の考えを聞くために質問する。

こう聞いてくれるという事は、あくまで迅代の考えを尊重しようという意思なのだろう。


「セレーニアさんに会うまでは、密かに皇都に向かい、皇帝陛下に謁見をしようと考えていました」

「アーロス領での手配がどこまで及んでいるのか分からなかったので」

迅代の言葉にセレーニアは恐縮する。

「申し訳ございません!」

「従者であるはずのわたしが密に連絡を取れる体制が出来ていれば・・・」

セレーニアの謝罪に迅代は笑って答える。

「そんな、皇都に居てほしいとお願いしたのは俺のほうなので」

「それに、皇子殿下があれほど無理な論理で俺を目の敵にするとは誰も想像できなかったでしょうから」


一息おいて、迅代は今の懸念を問いかける。

「それよりも、今、一番気になっているのは、ここリシュターです」

「恐らく、ここ最近の食糧不足は魔王軍の戦略の一環と思っています」

「強固な城塞都市リシュターを兵糧攻めで陥落させるための」


そこでパットがおいおいという顔で口をはさむ。

「確かに食糧は不足して高騰している」

「だが、リシュターは、魔王軍の策源地であるズベーレン領とは距離が有るし、飛び地のように占領地を増やしても維持が難しいんじゃ無いか?」


パットの言葉に迅代はすこし慎重に回答する。

「無論、俺は魔王軍の意図を完全に把握している訳では無い」

「常道で考えればポツポツと占領地を確保しても、維持できず、奪還されれば元の木阿弥になる」


ここで迅代はこの部屋にいる全員をぐるっと見回しながら話す。

「だが、今リシュターで起こっていることは陽動で行う作戦にしては念に入っている気がする」

「討伐した魔獣3体に加えて、まだ魔獣が徘徊しているとも聞く」

「もう、はぐれ魔獣や偶然ではないだろう」

その言葉には全員が頷く。

「高位の魔獣を多数放ち、交通を妨害し、食糧庫に破壊工作を仕掛ける」

「これらの活動は継続して続けないと、せっかく低下した食糧備蓄が回復してしまう」

「もう少し様子は見ても良いが、これが続けば、リシュター侵攻は現実になると思う」

迅代は自分の考えを告げて、セレーニアの顔を見る。


迅代の言った事を少し考えて、セレーニアは口を開いた。

「ジンダイ様のご懸念はわかりました」

「こちらも皇女殿下の部隊の整備を進めて、ある程度の戦力を投入できる体制を作ります」


セレーニアの話が一区切りすると、迅代が口を開いた。

「俺は当分、リシュターの街で魔獣の退治を行います」

「そうすれば少しは魔王軍の侵攻を遅らせられるかもしれません」


セレーニアは少し心配そうな顔をしたが、意を決して告げた。

「わかりました」

「今後はパットの店を通じて支援や連絡を行いましょう」

セレーニアはパットのほうを見る。

パットはその言葉に、はいよ、と同意した。


そしてパットは言った。

「魔獣退治は「森の守護者」の仕業という事にしましょうや」

「勇者ジンダイが居るってことは秘密なんでしょう?」

セレーニアはその言葉に応える。

「ええ、そうね、安全に城壁の外に出るルートもお願いするわ」

パットは頷く。

「ああ、そういうのは俺の専門だ」


話の方向性が概ね定まったと見て迅代は口を開く。

「あの、セレーニアさん、大変言いにくいのですが・・・」

その言葉に少しセレーニアは身構えたが、この感じはアレかなとも見当がついていた。

「なんでしょう?ジンダイ様」


迅代は緑髪を掻きながら言った。

「今までリォンリーネさんに大変お世話になっていて、色々と出費もしてもらっていて・・・」

その言葉にセレーニアはにこりと微笑んで言った。

「ええ、大丈夫ですよ」

「パットに請求用紙をもらって記入してください」

「遠慮なく、今までかかった経費と報酬を書いてもらえれば、チェックはしますがお支払いできますので」


セレーニアの言葉に迅代は礼を言う。

「いつも、本当にすみません!、大変助かります!!」


リォンリーネは今までの話をきょとんと聞いていたが、どうやらお金が貰える流れになった事で急に興味が出てきたようだった。

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