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「魔纏兵」

「ところで、あなたは何者なんだ?」

迅代は一応、警戒してライズ武具店の店主のような男パットに向かって聞く。


パットは頭を掻きながら話し出す。

「俺は、以前は近衛第四部隊で兵士をしていたんだが、足が不自由になっちまってな」

「皇女殿下に雇われて諜報活動をしているのさ」

迅代ははっとする。

「じゃあ、最初に店に来た時に、俺がジンダイと呼ばれていた事に気づいて・・・」

「まあ、そうだな」

「この商売は、耳が良くないとやっていけないからな」

パットはそう言いながらニヤリとした。


パットに案内されて店の奥に進むと、少し広いテーブルと、いくつかの椅子が置いてある部屋が有った。


セレーニアは席に着くと、迅代のほうに向いてまず口を開く。

「あの、今からする話は、この皇国の後継者争いに関する非常に機微な問題です」

「道具屋のリォンリーネさんは、この話を聞くことで否応なしに巻き込まれてしまうでしょう」

「それでも良いのでしょうか?」


迅代はセレーニアの言葉を察して、リォンリーネに聞く。

「リォンリーネさん、この場で話を聞けば皇女派の秘密を知る事になり、自由を制限する事態が起きるかも知れません」

「席を外してもらったほうが・・・」


迅代の言葉にリォンリーネは答える。

「ジンダイさん、わたしは前にも言いましたが、命を救ってもらった恩を返すつもりですよう」

「ジンダイさんの味方で居たいです」

リォンリーネは真剣な眼差しで迅代を見る。

迅代は真剣なリォンリーネの言葉に頷く。

それを見たセレーニアはすこし居心地が悪い感触を覚えた。


迅代はセレーニアに向かって言う。

「リォンリーネさんも同席させてください」

「それに、銃をリォンリーネさんに作ってもらったので、どのみち、こちら側に居てもらわないと困りますしね」

その迅代の言葉に、セレーニアは驚く。

「ジュウ!、ジンダイ様が求めていたジュウが出来たのですか!?」


その言葉に迅代は嬉しそうに説明する。

「ええ、これはリォンリーネさんの魔法力が無いと完成できませんでした」

「そして威力も十分で、ようやく勇者として貢献できるでしょう」

「この銃が有ればAクラスの魔獣を一撃で倒せます」


その迅代の言葉にパットが口を挟む。

「それって、先日のSクラスに近い魔獣3体を倒した森の守護者の噂を聞いたが、まさか??」

パットの問いに迅代は答える。

「ええ、徹甲弾という弾を使えば、ホワイトサーペントの頭を一撃で吹き飛ばせました」

パットは驚いたような感心したような顔で言う。

「はー、最初聞いた時は誰かの与太話と思っていたが、あんただったとは・・・」


「もし、ジンダイ様が勇者に伍する能力を持ったのならば、計画を早めても良いのかも知れません」

セレーニアが静かに語った。

「実は、クロスフィニア皇女殿下が主導する特別部隊の編成を水面下で画策しています」

「今の魔王軍討伐部隊では皇国の民は守れなくなってきています」


その言葉に迅代は口を挟む。

「いくら司令官が力不足でも、3勇者の力は絶大では?」

迅代は模擬戦で戦い、実際の戦闘での様子を知っている身として、聞いた。


その言葉に、セレーニア、アレジア、そしてパットまでが首をすくめて同意しなかった。

セレーニアは迅代の問いに答える。

「今の魔王軍討伐部隊はお飾りに成り下がっています」

「部隊はジンダイ様が居た頃のような勝利は得られていません」

「司令官であるボーズギア皇子殿下の後ろ向きな戦闘指揮と、兵力分散のため、力が出し切れないのです」

「その上に、アーロス子爵やアイルズ子爵を殺した暗殺者にも怯えているきらいが有り、ほとんど作戦行動が行われていないのです」


一息おいてセレーニアは続ける。

「しかし、その皇子殿下を司令官から解任させられる人物も居ません」

「このままでは決定的な場面が来た時に、切り札のはずの魔王軍討伐部隊ですが、力を発揮できない可能性が高いのです」

迅代はセレーニアの言葉に愕然とした。

それほどまでに魔王軍討伐部隊は機能していなかったとは、と。


セレーニアはその上でもう一つの問題を付け足した。

「その上、魔王軍の側に勇者並みの戦闘力を持つ兵力が現れたのです」

「その敵は黒いもやを纏った兵士「魔纏兵まてんへい」と呼ばれています」

「魔纏兵は2体居れば、勇者ヴィンツ様と互角に戦えるほどの戦闘技術を持っているのです」

「この魔纏兵が複数体出てくれば、魔王軍討伐部隊が全力で当たっても勝てるかは分かりません」


セレーニアの話は迅代が驚く事ばかりだった。

魔王軍討伐部隊を離れて3か月ほどの間だったが、状況はかなり変化しているようだった。

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