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「商談」

とりあえず2週間ほどの間、リォンリーネの店の売り上げアップに集中する事になった。

2か月ほどの間、店を営業しなくても十分な活動費と借金返済資金を確保するために。


だが、魔獣退治から帰還した直後、リシュターで突然、大規模な火災が発生した。

火の気のない倉庫群の一つから火災が発生し、瞬く間に、周囲の倉庫を焼く大火となった。

その倉庫は籠城戦に備えた食料を主に備蓄している所であった。


この大火で、都市住人全員が1か月は暮らせると言われていた食料備蓄が2週間分ほどに激減してしまった。


そして、大火から1週間ほど経過した頃には、リシュターの街は食糧価格の高騰と言う事態が起きていた。

皇国の食糧庫、アイルズ領内での戦闘による食料価格高騰と、リシュターへの食糧搬入量の低下により深刻度が増して行ったのだった。

これでは食べ物に困っている状況で、道具を売ってお金を稼ぐと言う目論見は、なかなか難しいようだった。


「ふわあ、ピローネの値段が2倍以上になっていますよう!」

リォンリーネは食料品店の店頭で驚きの声を上げた。

「嬢ちゃん、商品が入ってこないんでね」

「申し訳ないが、この価格で並べるしか無いんだよ」

店主のおじさんがリォンリーネの言葉に言い訳する。


今日は迅代も買い物に付き合って来ていた。

確かに、リシュターの街の物価高騰は異常に感じていた。

特に主食であるピローネや肉類の高騰が特に際立っていた。


とりあえず高価でも仕方なく買ったピローネをかかえるリォンリーネに迅代は話しかける。

「はぐれ魔獣のせい、という訳でも無さそうですね」


リォンリーネは半泣きで応える。

「じゃあ悪徳商人か誰かがリシュターの街の人たちを困らせるためにやっているんですかねえ」


リォンリーネの返しにツッコミを入れたくなるが、少し我慢して、軌道修正する。

「リシュターは巨大な城塞都市、攻め取るなら大きな損害を覚悟しないと難しい」

「でも、兵糧攻めなら、時間さえかければ損害を抑えて攻略できるでしょうからね」

迅代はそう言って少し考える目をする。

「魔王軍、という事なんですかねえ」

リォンリーネの半信半疑の言葉に迅代は頷く。


「恐らく。あの3体の魔獣達は自然に居た訳ではなく、送り込まれたと考えるほうが自然だし」

「どのぐらいの時期でかは分からないですが、魔王軍がリシュターを狙っているのでしょう」

「それでも、この堅固な城塞都市なら簡単には落城はしないでしょうが」

「ただ、暮らす人々が多いことを逆手に取られて兵糧攻めにされると厳しいですね」


リォンリーネの表情が次第に弱気になって行く。

「えええ、閉じ込められて餓死するなんてイヤですよう」


そんなリォンリーネを見て迅代は考えていた。

『もし、すぐに戦闘になるようなら、リォンリーネさんだけでも逃がそう』

『そして、どこまで戦えるか分からないが、出来る限り町を守ろう』

と。


そんな話をしながら二人はライズ武具店に向かっていた。

ライズ武具店の店長代理のパットが、リォンリーネの商品を皇都の商会に卸してみないか?との話をもらったのだ。

その商会の責任者が、今日、リシュターの街に来ると言う。

顔合わせと商品説明に来てほしいとの事だった。

リシュター内での商売に行き詰っていたリォンリーネには渡りに船だった。


だが、リシュターの周辺は盗賊や魔獣が出ると言う噂になっているのに商魂たくましいなと迅代は考えていた。

迅代はこの話に付き合う必要も無かったが、リォンリーネひとりより二人居るほうが交渉にも有利だろうと思って付き添う事にした。


ライズ武具店に着くと、馬が2頭、店頭に繋がれていた。

「もう相手方は来ているようですね」

迅代はリォンリーネに話しかける。

「お、おう、ですよ」

「ちょっと高い目にふっかけてやりますよう」

リォンリーネはかなり緊張しているようだった。

でもふっかけるのは止めようよ、と迅代は思った。


「バン!」


敵地に乗り込むように店のドアを勢い良く開けるリォンリーネ。

店内にいた店主のような男パットと、見慣れない二人の女性が入り口に一斉に注目する。


「道具屋リォンリーネですよう!」

勢いよく名乗ってリォンリーネは店内に入って行く。

後ろから迅代は少し恥ずかしそうに入る。


そして迅代がリォンリーネの後ろから、商会の人物と思われる2人の女性をそっと見る。

平民の女性らしい服を着た美人の女性に見覚えを感じる。


「せ、セレーニアさん」

迅代は自然と名前が口から出てしまった。

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