「森の守護者」
リセルゼは魔獣3体の全てが動きを止めた事を確認して、生き残った兵員を集めた。
リセルゼは無傷、部下のひとり、オーパはホワイトサーペントの電撃を受けて気を失っていたが、落馬時の打撲以外は無傷だった。
オーパはその後に意識を取り戻し、問題無く動ける状況だった。
もうひとりの部下、サージョンは、同じくホワイトサーペントの電撃を食らい落馬した。
こちらは無傷とはいかず、右足と左腕を骨折し、意識はしっかりしているが、満足に動くことが出来ない状況だった。
魔獣に追われながらも生き残っていた兵員6名のうち、2名はレッドサーペントの火炎により大やけどを負っていた。
しかし、応急処置の回復薬でなんとか動くことが可能だった。
A+クラスの魔獣が3体居たのだ、こんな小部隊など全滅する運命だった。
しかし、謎の音と共に加えられた攻撃で、全ての魔獣たちが撃ち倒された。
「うーむ、この状況、誰か説明できる者は居るか?」
リセルゼは集まった兵をぐるっと見回して言う。
皆はだまって、リセルゼの顔を見ているだけだった。
「そりゃあそうだろうなあ。魔獣を一撃で屠る事が出来るなど、勇者の所業だよ」
リセルゼは頭が爆発して胴体だけになったホワイトサーペントの死骸を見て言った。
「リセルゼさま、わたしの村の伝承で、森の守護者と言う者が、この森には住んでいるとの言い伝えが有ります」
骨折したほうの部下、サージョンは口を開く。
「ほう、それは、妖精さんか何かか?それとも勇者なのか?」
リセルゼは彼特有の癖、からかうような口調で、話を聞く。
真面目なサージョンは、少し戸惑いながらも、言葉を続ける。
「わたしは、この森の北側の外れの村出身なのですが、昔からの伝承なんです」
「その森の守護者は、森に害が及ぶ時に現れ、問題を解決してくれる人なんだと言われていました」
「過去に突如サンドウォームが現れて森が危機に瀕した時、一人で討伐を行ったとか」
「村近くにビッグキラービーの巣が出来た時にもキラービーたちを瞬く間に切り刻み、女王を討ち取って危機を救ってくれたなど」
「数多くの武勇伝が言い伝えられています」
リセルゼを含め、皆はサージョンの話を黙って聞いている。
「今回の出来事が、森の守護者によるものかはわかりませんが、話としては一致するんです」
サージョンが話を区切ったタイミングで、リセルゼは聞く。
「その、森の守護者って言うのの特徴とかは言い伝えられて居ないのか?」
「人間なのか、妖精なのかみたいな」
サージョンはそれに応えて口を開く。
「なんでも、種族は人間に近い男性で、髪色と瞳が緑、肌は透き通るように白く、動きはすばしっこいとの事です」
サージョンの説明にリセルゼは皆に聞く。
「そんな奴を見た事が有るか?」
当然誰もが首を振る。
「まあ、サージョンの伝説話はおとぎ話だろうが・・・」
「とにかく、俺たちは、正体不明の誰かには助けられたと言う事は間違いないか・・・」
そこは全員が一致した見解だった。
そして絶体絶命の危機を救った者は、リセルゼたちの前には結局、姿を現さなかったが。
「どう説明するかなあ・・・」
リセルゼはひとり呟いて言った。
「とにかく、救われた命だ、喜んでおこう」
「村に戻るぞ」
リセルゼがそう告げると、各員が、撤退の準備を始めた。




