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「完全な姿」

迅代は、いつもの緑髪の変装で、ライフル銃のストックを注文しているライズ武具店に向かっていた。


今日は完成したストックが届いているはずだった。

リォンリーネに後金の1万ピネ※をもらい、今日は一人で店に訪問することにした。

※約10万円


リォンリーネに少し心配されたが、町中にも慣れてもおきたいので、と今日は一人で行動することにした。

それでは、と、リォンリーネがお小遣いとして1千ピネ※を余分に渡してくれた。

※約1万円

『まるでヒモ状態だな』

と思い、少し苦笑いをしたが、ありがたく受け取っておくことにした。


リォンリーネは、ニタっとして「いかがわいいお店に行っちゃダメですよう」と言ってきた。

「行きませんよ!」とは言っておいたが、たまにリォンリーネは大人なのかオヤジなのか分からないような冗談を言ってくる。

対応にたまに困ってしまうが、ボケられたらツッコむという気持ちでいつも対応していた。


本当の気持ちとしては『このお金で、銃の完成祝いで飲めるお酒、そうだな、自分の名前の由来となったミード(蜂蜜酒)とつまみでも買うか』と考えていた。


ライズ武具店に着くと、店長のような男、パットに声をかける。

「こんにちわ、届いていますか?」

迅代の声にパットは右手を上げて答える。

「ああ、こっちに来てくれ」

迅代をパットが座る店のカウンターに手招きする。


当初、ライズ武具店なので、店長らしき男がライズなのかと思っていたが違うとの事だった。

店にいる男はパットと言い、年老いたライズ氏の代わりに店長代理で店にいるとの事だった。

ただ足が不自由らしくあまり動き回れないとの事だったが。


「なんだよ、今日はリォンリーネさんは居ないのかよ」

パットは少し残念そうに言う。


「すみませんね、で、出来てるんですか?」

迅代は早く商品を見たくてパット言葉を流して、催促する。


「ちっ、しょうがねえなあ」

パットはじらすような目で、すっと紙に包まれた60cmほどの板状のものを取り出す。


「ちょっと見させてもらったが、ほおずりしたくなるような出来だったぜ」

パットはもったいぶって話をする。


「あ、まさか、本当にほおずり、してませんよね??」

迅代はちょっと気持ち悪くなってパットに聞く。

「し、してねえよ、商売の品だからな」

実は嘘で、ほおずりして匂いをかいで悦に浸っていたが、ミードゥー(迅代)が怒りそうなので黙っていることにした。


「おおお、想像していた通りの美しい出来です!」

ストックを見た迅代は称賛の声を漏らす。

包んだ紙から取り出された濃い茶色のストックはイメージ通り、かつ、美しかった。

指定した材質、軽くて硬いクルミ材系で合いそうなものを、と言っておいたが、それも考慮してくれたようだ。


パットはすこし真顔で言った。

「で、これを何に使うんだい?」

「ジール師もクロスボウ用では無いと見ていたようだが」


銃に使うとは言えない。迅代はあらかじめ考えていた答えを言う。

「リォンリーネさんと新しい機構のクロスボウの研究をしていましてね」

「その試作品に使うんですよ」

迅代はよどみなく答える。


「へえー、試作品のストックに2万ピネ※もつぎ込むのか?」

※約20万円

パットの言葉に少しまずいかとも思ったが続けて言う。

「ジールさんに頼んだのはちょっとやりすぎだったかもです」

「でも、これには、とても満足していますよ」

迅代は適当に言い訳する。

「当たり前だ、ジール師の作った物だからな」

パットはそれ以上はツッコんでこなかった。


その後、迅代はパットに残金1万ピネも支払い、店を後にした。


帰り道、リォンリーネの店の向かいの酒場で、ミード(蜂蜜酒)とおつまみになりそうなものを1千ピネ分分けてもらった。

そして、帰宅後、すぐに銃の組み立てに入る事にした。


「完成、しました」

迅代は組みあがった銃を前に感激していた。

ストックの作りは渡した設計図通りで、すんなりと適合した。


「これが完成した姿なのですね」

リォンリーネも数々の苦労で作り上げた銃の完成に感慨深くつぶやく。


一見は現代の狩猟用に使う、ウッドストックのスコープ付きボルトアクションライフル銃といったスタイルだった。

ただ、銃の下部にバイポットと呼ばれる2脚が付いていることと、銃身基部に弾丸加速装置が付いている事が目に見えた違いだった。


迅代が欲っしてやまなかった銃がここに完成したのだった。

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