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「敵領域侵入」

白虎支隊が魔王軍の奇襲を受けて大損害を被っていた頃、陽動攻撃部隊は所期の任務を実施するべく敵領域深くに侵入しつつあった。


陽動攻撃部隊の総勢は部隊本部の指揮官アークスと護衛兵としてオーリアとヴォルカの計3名、ロングボウの弓兵6名という陣容で、全員が騎乗しての行動であった。


現在は警戒移動中なので、逆三角形状に15mほどの間隔で、前方右にヴォルカ、前方左にオーリア、そして後方中央にアークスというフォーメーションで前進中だ。

弓兵たちはその後方から2列縦隊で付いてきている。

馬の歩調は人が歩くぐらいの速度に落としていた。


もうすでに敵の領域であるので、いつ敵に遭遇するかもしれない。

全く偵察が行われていないので、何が飛び出してくるかわからない状況だった。

全員が即時に戦闘が出来るような態勢として、オーリアとヴォルカはクロスボウを、弓兵たちは弓を、それぞれいつでも撃てる準備をしている。


ちなみにヴォルカの発案で、連射クロスボウは、馬上でも装填しやすいように、威力が落ちる前提で、弓の張力を落とし、足を使わずに弦引き操作を可能としていた。

そのために、威力を期待できる距離が20mほどに落ちたが、馬上での移動しながらの戦闘する戦法に変える事で、そのほうが有利と判断した。


そんな中、さすがに陽気を自称するオーリアも、真剣に警戒しながら慎重に馬を進めている。

しかし、口はなぜか動いていた。

「あそこの木陰・・・いない」

「前方の岩陰・・・大丈夫」

「あの林・・・何か居そう、横切るのいやだなあ・・・」

どうにも口を閉じているほうが落ち着かない性格のようだった。


そして不気味に思っていた林に近づいたとき、何か動くものが林の中に居る気がした。

「おお、わわ」

オーリアはすぐにクロスボウを構えて撃つ。

「ひゅん!」

「ザッ!!」

クロスボウの矢は何もない地面に突き刺さる。

その向こうに、野ウサギが2匹、足早に駆けて行った。

「ありゃ、ウサギかあ」


「なんだ!?どうした!」

射撃したオーリアを見て、アークスがオーリアに向かって声を上げる。

オーリアとヴォルカは、アークスの馬の元に集まる。


「大声、出さないで下さいよ、周囲に敵が居たらマズいでしょ」

ヴォルカがアークスをたしなめる。

「す、すまん、で、オーリア、なぜ撃った?」

アークスは素直に謝って、オーリアに撃った理由を聞く。

「すみません、影が見えたんですがウサギだったんです」

オーリアは後ろを振り向き答える。

「ウサギかよ、人騒がせな」

そう言いながらも、アークスはほっとしていた。


恐らく敵と遭遇して戦闘になれば、部隊は無傷というわけにはいかないと考えていた。


この作戦の命令は、「所定の位置で陽動攻撃を行う」事であったが、付則事項が有った。

「ただし、敵に部隊の行動が露見した場合は、敵を引き付けたのちに後退せよ」と。

要は見つかったらその場で囮になれと言う事だった。


「所定の陽動攻撃位置」はまだまだ敵の領域奥に進まないといけない。

アークスは重い気持ちで全員に前進を指示した。


しばらく同じフォーメーションで前進を続けていたが、進行方向の魔王軍拠点の位置あたりが光った気がした。


前を進む3人は、それぞれ、何事か?と目を凝らす。


それが光の柱となって、空に伸び、巻き起こる粉塵が周囲を覆う。

少し遅れて「ズゴゴゴゴォォン・・・・」地鳴りのように重い重低音が鳴り響く。

「スレッジャーギーム・・・」

アークスは光に視線を置いたまま呟く。


『何故だ、勇者アリーチェ様の魔法??もう、戦闘開始?』

『攻撃開始までの時間は・・・まだもう少し有るはずだ』

そして似た経験を思い出す。

魔王軍の奇襲攻撃だ。


アークスは少し考えた後、全員に指示した。

「状況が変わったと思われる、部隊に帰るぞ!」


そして、陽動攻撃部隊は足早に本隊へ戻る事となった。

道中、アークスは考えていた。

『もし命令違反を言われても、前回の奇襲攻撃の状況と思い撤退し、本隊の安全を確認しに戻ったと言えばいい』

『状況が変わったんだから現場指揮官の判断だ』


騎士アークスも自分の部隊を持って、要領よく部下を守る術を考えるようになったようだった。

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