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「防衛拠点攻撃」

「勇者部隊を貸せと?そんな事は出来よう筈が無い」

ボーズギア皇子は軍議の席で声を荒げた。


「攻撃力として余力を持っているのは、現在、魔王軍討伐部隊だけなのです」

「貸し出すのが難しいのでしたら、本隊ごと出動していただけますか?」

ドルチェ軍事補佐官は落ち着いた声で反論する。

「狼旅団が出て来ればよかろう」

ぶすっとして横を向いてボーズギア皇子は言い放つ。


アイルズ領の魔王軍は、現在、まだ、一部の領土を占領した状態だった。

前回の反攻作戦で、大部分の領土を奪還はしたが、時間を置けば敵は兵力を集結させて再侵攻を行うかも知れなかった。

皇国側としては、絶えず打撃を与え、隙を見て、残りの領土も奪還したいところだった。

そんな時、魔王軍が新たな防衛拠点を構築中という情報が入った。

それを攻撃し、破壊する方法を決めるための軍議だった。


「皇子殿下、我が狼旅団なのですが、前回の反攻作戦で補給物資が底を尽いております」

「出撃したくても、あと7日ほどは難しい状況なのです」

アイルズ子爵は下手に物を言うが、ようは自軍部隊に休養を取らせたいと言う事だ。

狼旅団はアイルズ子爵領の切り札的兵力、魔王軍討伐部隊が去った後の事を考え、機動予備として温存しておきたかった。


「アイルズ殿、だからと言って我が部隊が出撃する理由もあるまい」

ボーズギア皇子は臆面もなくそう言い放った。

その態度に、この場の多くの者が、皇国を守るために魔王軍を討伐する部隊なのではないのか?と反感を持った。


しかし、アイルズ子爵は煮える腹を押さえて説得を試みる。

今回の作戦は皇帝の命では無いため、司令官に表面上であっても納得してもらわなければならない。

「皇子殿下、魔王軍討伐部隊は強力な3勇者様を擁する、決戦部隊」

「我が領民も、皇国の民たちも、魔王軍討伐部隊の活躍に注目しております」

「その魔王軍討伐部隊が居るのに、我がアイルズ領が未だ魔王軍の占領を許している事に、領民たちはどう思うでしょう?」

「逆に、領土奪還を難無くこなせば、再び、魔王軍は恐れるに足らず、と思い直すことでしょう」

アイルズ子爵は内心感じていた。

リスキス村での大損害後、ボーズギア皇子は、戦果を焦る心と、戦闘に怯える心が葛藤していることを。


ボーズギア皇子もアイルズ子爵の言葉に迷っていた。

確かに、今、魔王軍討伐部隊の評価はそれほど高いものとはなっていなかった。

リスキス村では村は解放したが、村人は救えず部隊は大損害を受けた。

アイルズ領での最初の戦闘でも、目標の敵は難無く撃破したが、包囲の動きに抵抗せずに折角奪還した土地を明け渡した。

そしてアイルズ領での反攻作戦でも、強力な敵の出現に対応が後手に回り、友軍が大損害を受けた。

今の魔王軍討伐部隊に、周囲の声からは、当初の絶対的な信頼のようなものは無くなっていた。


しかし、再び初陣のような大戦果を上げれば、自身の不安も収まり、兵たちが変な噂するような事もなくなるだろう。

そして汚点が付いた自身の名声も再び上がるだろうと。


「アイルズ殿がそこまで言うなら仕方あるまい」

「わが部隊で敵拠点攻撃の先鋒を切ろうではないか」

ボーズギア皇子は再び大勝利をつかむように慎重に作戦立案を行うつもりだった。


最近の作戦は上手く行ってるじゃないか、そう言い聞かせながら。

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