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「再構築」

試作銃の1号は1回の射撃で壊れてしまった。

しかし、強度と言う意味では不合格だったが、それ以外の目的である、銃の完成と、弾道の安定性は確認できた。

そこで、内部構造を強化するべく、接合部や、金具の強度を大きく取って試作2号の銃を製作した。

基本設計は確立しているので、製作自身は比較的容易に行えた。


その試作2号の銃は、3発の試射を行ったが、壊れる事は無く、問題無く動作させることは出来た。

ただ、3発撃って気づいたのだが、少し弾道が左に逸れているようだった。


銃身を銃本体にネジのように入れて固定しているが、真っ直ぐでは無く、気づかないほどほんの少し左に角度が付いていると思われた。

このように銃のような長距離の射撃を行う道具は、ほんの少しの精度の狂いで使い物にならないようになる。

そういう意味では、元居た現代世界の加工技術は恐ろしく洗練されたものだったと再認識する事になった。


銃制作に突き進んで来た迅代だが、完成した銃と、今まで戦って来た魔王軍の魔物、魔族を冷静に思い返し、これで良いのか?と考えるようになった。

『この銃でコボルドやオークは倒せるだろう』

『しかし、トロールは難しいかも知れない』

『頭部を撃ち抜けた場合のみ、倒すことが出来る、と言う所か』

『しかも、至近まで近づいて、だ』


『ミノタウロス級の戦士だと、1発で、という訳にもいかない』

『恐らく、何発か撃ち込んで、動きを止め、頭部か胸部を撃ち抜ければ倒せるだろう』

『しかし、それには多弾装填と連射機構が必須だ』

『ミノタウロス級の戦闘スピードでは単発銃では話にならない』


『Aクラスの魔物だとこれは数発と言うレベルでは済まないように思う』

『何十発か撃ち込んでようやく動きを止められ、倒すには弱点射撃を行うしかない』


『そしてSクラスの魔物は、この銃では太刀打ちできないだろう』

『勇者アリーチェの光攻撃魔法「ヘリオスフィア」の直撃も耐えていた』

『大口径の対物ライフルクラスが無いと・・・』

だが、単発でも、対物ライフルクラスの銃を作るとして、弾丸も、銃本体の重量も重くなりそうだった。

拠点防衛の据え付け式なら可能かもしれないが、携行して機動し、射撃するのは難しいかも知れない。


一定のレベルの銃が出来たのは喜ばしい。

製造コストや弾丸のコストを置けば、たとえ単発銃でも、薬莢式の弾薬を使える事で、優位に戦えるだろう。

しかし、勇者クラスには、相変わらず成れない。

現代式のマークスマンライフル※でも無ければ。

※射撃優秀者用ライフルで、中口径で弾道性能の優れたセミオートライフル銃


そこで、ふと、リォンリーネの「困ったときには魔法頼み」の事を思い出す。

『この銃を更に、高機能にする魔法技術が無いか聞いてみるか・・・』

弾丸の高初速化、弾丸の威力向上、連射機能の実装に関してリォンリーネに相談して見る事にした。


「うーん、そうですねえ」

迅代に質問されたリォンリーネは設計、製造の事を思い返し考える。


「ちょっと高性能化とは少し外れるのですが、弾薬の黒煙粉は魔法呪符に置き換えてみてはどうでしょう?」

リォンリーネは説明する。

「爆発を起こす魔法呪符は作り方を知っています、それを使ってみてはと」

リォンリーネのその言葉を聞いて迅代は驚く。

「え、そんな方法が有るんですか!?それなら高価で少量しかない黒煙粉を入手しなくても良かったような・・・」

実際、入手出来ている黒煙粉は弾薬10発分しか無かった。


「あはははぁ、まあ作ってみて気づく事もあるんですよう」

リォンリーネは頭を掻いて言い訳する。


だが、迅代はひとつ気になる事が有った。

「呪符を爆発させるのはどうするんでしょう?」

通常は呪符に向かって呪文を唱えると、呪符は発動するのだが。

その方式だと、弾薬全てが暴発してしまわないかと気になっていた。


「それなんですが、プライマー?って有ったじゃないですか」

「これと同じ感じで、魔道コイルを仕込んで、撃針?で叩けば動く感じに出来そうですよう」

それなら通常の弾丸と使い勝手は同じに出来そうだった。

「おお、それはぜひ試してみたいです!」

「この方式なら弾薬が作りやすく、発射時の爆発も細かく調整できるかもしれないですね」

迅代はこの提案を試してみたいと感じた。


「それから威力のほうですが、弾の威力は速度と重さによって変わるんですよね?」

「速くて重いほうが威力が有る感じで」

リォンリーネが言った言葉に迅代は肯定の意思表示をする。

「なら、速さは魔法の加速器を作れればと思いますね」

リォンリーネの言葉に今ひとつピンと来ていない迅代。

「えっと、銃弾を爆発の推進力以上に加速させるんですか?」

言っている意味を迅代なりに解釈して質問する。

「そんな感じですねえ」

「どのぐらい加速できるかは作ってみてですけど」


「おお、それなら確かに威力が上がりそうです」

迅代は期待を込めて、試作を頼むことにした。


「それと、弾丸の重さのほうは、材質次第ですよね?鉄にしたり、銀にしたり」

リォンリーネが銀を挙げた事を不思議に思い、迅代は質問する。

「銀ですか?そう言えば狼男は銀の弾でないと殺せないとか言う言い伝えが有ったような」

迅代の質問に、リォンリーネが答える。

「霊体の魔物が出てきた場合が有効と思いますね」

迅代はそんな奴が居るんだ、と思いながら答える。

「そ、そうなんですか。でも、材質を変えるのはその通り、正解です」

鋼鉄製の徹甲弾を作ると言うのは良いかも知れないと迅代は考えていた。


そして、リォンリーネは少し考えた後、口を開いた。

「連射のほうは・・・直ぐには難しいように思いますねえ」

「これ以上機構が複雑で精緻になっちゃうんですよね?」

こればっかりは魔法力では無く技術力と工作力頼みになるようだった。


連射機構には、弾丸発射時のガス圧を制御して、ボルトの後退と、排莢、次発装填を連携してかみ合うように設計する必要が有る。

1年ぐらいの期間が必要となるかも知れない。

しかし、迅代は考えていた。

オートやセミオートでは難しいかも知れないが、ボルトアクション式なら可能では無いかと。

「わかりました、これについては少し考えが有るので、概要図を作ってみます」

迅代はそう答えると、リォンリーネとのディスカッションを終えた。


これらのアイデアを基に、試作銃から実用銃へ再構築する。

それが叶えば、勇者級の力を手にすることが出来るかも知れない。

迅代は、そう期待する事にした。

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