「試射」
リォンリーネはリシュターの都市の外れに有る、食糧倉庫を1棟借りる契約を結んだ。
ここで、完成した銃の試射を行うためだ。
倉庫の内部は30mほどの長さが有り、当然何も無く、がらんとしていた。
そこに、射撃用の標的と、射撃を行うための台を持ち込んでいた。
「このぐらいの距離で問題無いですかねえ」
リォンリーネが標的を、倉庫の端に置いてみる。
標的は50cm四方ぐらいの紙に同心円が5つほど描いてあるもので、中央は赤丸で塗っていた。
それを木の板に張り付け、その板が真っ直ぐ立てられ台に打ち付けていた。
「ええ、そのぐらいでOKです」
迅代は射撃用の台を標的に真っ直ぐになるように調整していた。
射撃用の台は、胸の高さのテーブル状のものを木で組み上げ、木の銃を置く台を打ち付けていた。
今回の試射の目的は、
1.銃として機能する事
2.弾丸が真っ直ぐ飛ぶ事
3.銃が射撃に堪える強度を持っている事
を確認する事とした。
銃身を組み込み、銃を完成とさせた後、迅代が作った詳細設計図で弾薬もリォンリーネに作ってもらった。
形状は拳銃弾のようなシンプルなものとして工作のハードルが低くなるように考慮されていた。
その分、弊害も有るのだが、まずは完成を優先と考えた。
弾丸は今回5発用意して来た。
ただ、一度も撃発させた事が無い。
ここも、試験的に撃発させる道具が無いため、ぶっつけ本番で行う事にした。
正直な所、火薬の量は指標が無いため、えい、や、で決めていた。
迅代は、火薬として使っている黒煙粉は威力的には、迅代が使っていた火薬より爆発力が小さいように感じていた。
現代でよく使われている拳銃弾、9mmパラベラム弾の場合で0.5gほどの無煙火薬が装填されていると記憶していた。
そこで、単純に1gほどの量を詰め込んでみた。
「リォンリーネさん、戻ってきてください」
迅代は、銃を中折れさせ、弾を込めながら言う。
リォンリーネが射撃用の台より後ろに下がったことを確認して、皮の手袋をはめて、銃を台にセッティングする。
なにせ、発射と同時に銃の部品が飛び散る可能性も有る。
それほどの危険を想定しないといけない初めての試射だった。
「では、遮断の魔法をお願いします」
迅代はリォンリーネに倉庫内を遮断状態にしてもらう。
発射音を外に漏らさないためだ。
「遮断しましたよう」
リォンリーネが知らせてくれた。
「では、撃ちます」
「カチッ」
迅代は撃鉄を起こす。
「バン!!」
迅代が引き金を引くと同時に、盛大な煙と、大きな音が鳴り響く。
発射時に銃は大きな反動が有ったが、どうやら飛び散るような事にはならなかったようだ。
「ザッ!」
標的の中心の赤丸から3重ほど外れた円内に黒い穴が開いたようだ。
「おおおお、撃てました!」
「撃てましたよ!!」
迅代が珍しく感情を露わにして喜ぶ。
「うおお、すごいです、火炎槌とは大違いですよう」
リォンリーネも遠くの標的に深く穴をあけた威力に驚いた。
そこで、迅代は違和感に気づく。
「あ・・・」
銃のトリガーがプラプラしていた。
通常ならバネでテンションがかかった状態のはずだが。
「もしや・・・撃鉄は・・・」
撃鉄は起こしてみると、動くが、カチっと止まる事は無く、スカスカ動く。
どうやら1回の射撃で内部の構造が壊れてしまったみたいだった。
だが、拳銃レベルの威力を持つ銃がここに誕生したと言って良かった。




